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五十三話


「ういー☆楽勝だね、ヤッちゃん!西から三十人、いの(いち)から六で対応!」


「ハンベエさん、油断は禁物ですわよ?あとヤッちゃんは止めてくださいまし。」


「いーじゃん☆減るもんじゃないし!」


「ふぅ…性格はアレですが、これが天下人を支えた名軍師の采配なのですね…非の打ち所がありませんわ。それに比べてウジハルお姉さまったら…」


「んにゃむ…Zzz」


ワタクシは頭を抱えたい衝動をこらえ手舵(ハンドル)を握り込む。


前には自由奔放に振る舞うハンベエさん、後ろにはワタクシの背に寄りかかり寝息を立てるウジハルお姉さま…


非戦闘員が二人…そして熊さんと鳥さん、動物軍団のみ。


…ワタクシもそこまで戦闘に特化しているわけでは有りませんわね。


この紫葵(しあおい)号がなければ、の話ですが。


ワタクシは召喚されたあの日、ランマルお姉さまとカノスケお姉さまから自分の未熟さを教えられた。


そして悟った。


ワタクシは井の中の蛙だったと言うことを。完膚なきまでに自尊心を砕かれ、躾をされた。


今となってはあの頃の天狗になっていた自分を叩きのめしたい。


そしてあわよくばもう一度ランマルお姉さま達に…


あ、戦いに貢献し甘やかされるのも言いかもしれませんわ…!


そうと決まればさっさと蹴散らしてランマルお姉さま達の元へ…


ぐふふーー


はっ!ワタクシは何を考えてますの?今は交戦中、集中しなければ!


「ほげっ…!ノブヤスー、運転が乱れてるぞー?」


「も、申し訳ございませんわ!少し考え事をしておりました。」


「まぁ、思考するのが人間だから良いんだけどさー。あれ、こっちに来てない?」


「ういー☆大軍接近なうだよー☆」


「ふぅ…もう大丈夫ですわ!ウジハルお姉さま、ハンベエさん、しっかり掴まり下さいませ。奥義を使いますわ!」


「おっ!いいねー!支援するよー!〈原初乃焔〉〈虚偽乃焔〉」


「じゃあハンベエちゃんも!〈闘歌序章(とうかじょしょう)夢舞ゆめまい〉ッ!!」


有難い支援を受けワタクシの愛馬が唸りをあげる。


加速器アクセルを捻り上げ最大速度に達すると鍵言(かぎごと)を呟く。


「紫葵号…〈限界突破(リミットブレイク)〉…!!」


ワタクシとお二人の身を包み込んだ紫葵号の部品(パーツ)、それぞれが重なりあい繋がって形を紡いでいく。


ーーそれは叡知の結晶…


ーーそれは秩序の安寧…


そして…




ーーそれは暴虐の化身なり。


轟音と共に雑兵が吹き飛ぶ、聳え立つは黒き鉄人。


「ほう…そう来ましたか」


何処からか響く声。


声量は小さい筈なのに鉄の鎧を纏うワタクシの耳にもそれは届いた。


声の元を辿るように視線をずらすと…いましたわ。


白い衣に身を包み手には羽扇をもっている顎髭を長く伸ばした偉丈夫。


恐らくは敵軍の軍師…

それも歴史に名を遺す様な偉人となれば…


「あはっ☆ハンベエちゃん、あの人のこと多分だけど分かっちゃったぁ☆」


「ワタクシも同じ答えだと思いますわ。」


「うーん、歴史は分かんないや」


暢気な声を上げるハルお姉さまは兎も角としてワタクシはハンベエさんへ視線を向ける。


ニコッと笑みを返したハンベエさんは頷くと声を上げた。


『あーあー、おじさんこんにちわー!もしかして諸葛亮さんですかー?』


突拍子もない問い掛け。


しかし、諸葛亮か?

と尋ねられた殿方は肯定するように頷き口を開いた。


「如何にも。私は諸葛亮です。」


『じゃあじゃあ…?孔明対今孔明の戦いなんだー!わふー☆テンアゲぇー!どっちが強いのか勝負だよぉ☆』


「なるほど…後の世でこの孔明の名を冠した…ということですね?ではその勝負、謹んで承けましょう。」


拡声器(スピーカー)越しにハンベエさんの喜ぶ声が響き渡る。


そういえば彼女の異名は今孔明でしたわね…世紀を越えた軍師同士の戦いが始まろうとしています。



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