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四十九話


バイクを走らせ続け、気付けば半分まで上がって来ていた。


道中接敵が全くと言ってなかったのが不思議だったのだが、半分まで来て漸く分かった。


目の前には朱色に染まった大きな鉄門。


城壁には弓兵が居り此方に弓を構えている。


その後ろには立派な鎧を身に付けた武将っぽいのが偉そうにふんぞり返っていた。


「我こそは劉備玄徳なりッ!卑劣な襲撃者に一矢報いるぞ!!やれいッ!」


「「「うおぉぉおあーー!」」」


何、劉備だと?


やっぱりいたんだな長兄さん。


次兄と末弟は崖から突き落とされたけど、ここを守ってたんだな。


「よし、皆戦闘準備。カノ、弓兵を引き付けてくれ!ハル、皆に能力上昇を。」


「要らぬ」


凛とした声が俺の胸元から響く。


先程まで俺の胸に頭を当てて寝ていた張本人が声の主だった。「ノブタダ?」


俺の問いかけににやりと笑むと少女はいつの間にか飛び上がり、一回転しながら着地する。


「必要ないと言うた、妾に任せよ。木っ端めが、精々潔く散れ。舞え、〈蒼炎乱舞〉」



ノブタダの回りに数多の蒼い炎の蝶々が舞う。

小さいそれは息を吹き掛ければ消えてしまいそうな程、弱くか細い存在だ。


ヒラヒラと幻想的な蒼炎が集まると城門目掛けて飛び上がり着地、城門は瞬時に消し炭となった。


残ったのは劉備のみだった。


「くぅーッ…て、撤退だ!」

などと、言いながら坂を駆け上がっていった。


唖然としたカノや他の従者を見て自分も同じ状態だと分かり、気を取り直してノブタダに声を掛けた。


「悪いな、ノブタダ。気を遣ってくれたんだろ?」


多分俺が指示にもたつき言葉を詰まらせたのを見て彼女なりにフォローをしてくれたんだと俺は解釈した。


「ふんッ。そう思うなら後で褒美を寄越せ。妾はぷりんを所望する。」


素直じゃないな、と照れ隠しに横顔になる彼女を見て俺は了承を伝える。


まだまだ俺は彼女達の主として半人前だ。


もっと頑張らねば。


「そういえばマル。ジャンヌとヴラドの方はどんな感じだ?」


ジャンヌ、ヴラド、コタロウ、ソウザン、マンショの五人は別動隊として敵地の裏側へと潜入している。


コタローは学校でも成績が優秀だし、どうしても昇王戦に出たいと言うので条件付きで出て貰うことにした。


「はい、御屋形様。じゃんぬ班は現在裏門近くにて交戦中の様です。しかし、このれぇだぁなるものは便利ですね!」


マルの手にはミニパソコンのようなものがあり、それで敵味方のおおよそな位置が判別することが出来る。


これによって別動隊が現在どの位置に居て敵はどのくらい…などを把握する事が可能だった。


これもエマの店で購入したもので登録した魔力とそれ以外の魔力を判別出来て簡易的な通信も可能な代物なのだが、攻城、防衛、両方で使えるので十台程購入した。

一台4000GPなり。


「そうだな。向こうの戦闘が終わったタイミングで通信を入れてみようか。」


「承知しました。」


マルはこういった機械類への順応が早くて助かる。不思議に思うがこうして問題なく使いこなしているのだから有難い話だ。


逆にソウウン、ノブタダなどといった面子は機械音痴で全く使いこなせない。


ソウウンの場合はメカメイド ナナオの助力で何とかなるがノブタダはあちこち弄りすぎて煙が出たり…などといった状況も多々見受けられる。


「御屋形様、繋がりました。此方主攻部隊。別動隊取れますか?」


『此方別動隊ソウザンです。』


「ソウザン殿、御屋形様が状況を確認したいとの事です。如何でしょうか?」


『概ね順調です。というのも聖女(ジャンヌ)殿と公主(ヴラド)殿が散発的に出てくる敵を文字通り一蹴するのでとても楽をしています。』


「そうか。警戒は怠らないでくれ。何が有るか分からないからな。」


『畏まり申した。捕獲した捕虜は如何なさいますか?』


「そうだな…ソウウンに連絡して応援を頼むからその辺に転がしといてくれ。」


『主様聞こえてるわよ。今アンティオペーとアマゾネス兵が車両で其方に向かっているわ。後二三分で着くから先に進んで結構よ』


「と言うことらしい。ソウザン、頼んだぞ?」


『承知しました!』


通信を終え少し休息を入れてから進むことにする。

劉備まで出てきたんだ、曹操とか呂布が出てくるかもしれない。孔明も有り得るかもな…


しっかりと休息を取ろう。

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