三十八話
その後やってきたのは最近仲の良いハル、アン、メアリーの三人だ。
「よぉ、シゴウ。お前の作ったテマキズシだっけか?あれ、めちゃくちゃ美味しいぞ!」
「それは良かった。メアリー達も遠慮しないでどんどん食べてくれて良いからな?」
「は、はひっ!王様の優しさでメアリーは感激していますっ!」
「ははっ、大げさだな!」
メアリーのオーバーリアクションは見ていて楽しいんだが、どうしても俺がいじめてる感が残るんだよな。
今度話す時間を設けるか。
「王様よぉ、アタシはもっと強ぇーやつと戦いてえ。そんで誰よりも強くなってアンタの子種を貰ってその子供を最強にしてやりてえんだ!」
「おい、アン?い、いきなりどうした?もしかして酔ってるのか?」
アンが俺の肩に腕を回しそんなことを宣う。
距離が近いせいか良い匂いがするんだが…
筋肉質な中にも女性特有の柔らかさがあり、ついつい身体が反応しそうだ。これはいかんな…
「すすす、すみません!なにやってるのよ、アンのバカぁ!」
「いってぇ!いきなり手刀はないだろう、メアリー!」
「あっはっは!ほんと、君たちは見ていて飽きないや!あ、そうだ。ねぇシゴウ。後で余興やってよ!」
「はぁ…余興?どういうことだ?」
「新しい姉妹を迎えるってこと!召喚してよ!毎回勝ったらやってるんでしょ?」
確かにハルの言う通り召喚は毎回勝ったらしていたな。
それに今の俺はレベルが上がって召喚器を何処でも呼び出して使うことが出来る。
やっても良いのかも知れない。
「よし、んじゃやるか!」
「さっすがシゴウ!話が分かる!」
俺は部屋の真ん中まで歩いていく。
皆がなにか始まるのを感じ取ったのか、俺に着いて来る。
歩く先にはジャンヌが居た。ついでだから見ていて貰うか。
「ジャンヌ、楽しんでいるか?」
「ええ、楽しいわ。このドーナツというのが中々に美味しくて…何かあったの?」
「あぁ、これからちょっと新しい仲間を召喚しようと思ってな。折角だから見ていくか?」
「そうね、じゃあ見ていくわ。」
ジャンヌの許可を得たので召喚器をその場に出す。
GPは沢山あるからな…!
よし…!ここは10連ガチャ…行ってみるか!
「主殿?何をしようとしているのです?」
んげぇッ…!?ソウウン…!
最強の刺客が俺の前に立ちはだかった。
「あ、いや。その…余興をだな…ハルにせがまれて…」
「おー、あれおいしそう」
ハルの棒読みと共に駆けていく足音が聞こえる。
あの女郎、逃げやがった!
「はぁ…戦力増強は確かに必要よ。でも少し過剰過ぎない?クーデリア組も合流したばかりなんだから。」
「はい、ごもっともです。」
「拙僧も別に怒ってる訳じゃないの。節度を持って使うのならばお咎めはしないわ。でも主殿は無駄遣いし過ぎよ。」
「はい…はい…おっしゃる通りで…」
そっから説教タイムになるかと思いきや、マルとジャンヌの援護により渋々許可された。
「いよっしゃあ!お前らぁ!今から10連ガチャ引くぞ!」
「「「うおぉおおー!」」」
「マスター、待って。」
「どした、ジャンヌ?」
ガチャレバーに触れようとした時、ジャンヌによって腕を掴まれインターセプトされた。
ジャンヌは突然聖句を唱え始める。
耳に心地よい鈴の音のような声はずっと聞いていたい気持ちにさせる。
「ふぅ…誰かに呪を掛けられてたみたい。これで本来の能力を取り戻す筈だよ。」
「うお…まじか…ありがとな、ジャンヌーー痛ッ…!」
『保護機能に支障を来しました 修復を行います・・・error プロテクトの破損を確認しました 修復中・・error 制限を撤廃し本来の機能を起動します ・・・・・clear』
突然頭の中で声が響く。
スマホも熱くなり持っていられず後ろに投げてしまった。
頭痛は直ぐに収まりマルが拾ってくれたスマホは熱くなくなっていた。
「マスター、これで掛けられていた呪は解けた。それに私のお祈りを注いだからきっと良い結果が出る筈。…じゃあ私は行く。まだご飯、全部コンプリートしてないから。」
「分かった、楽しんでおいで!」
心なしかウキウキ気分のジャンヌを見送り、俺は気持ちを切り替えた。




