三十七話
翌日、目が覚める。
一晩、考えてみれば今回の戦いは俺が無策に突っ込んで、マルやジャンヌに尻拭いをさせた恥ずかしい内容であった。
そのマルとジャンヌだが…
マルはカノに付き添われながら医務室で寝ている。
どうやら激戦を潜り抜け、気を失っているようだ。
ジャンヌは気が付いたヒッポリュテーは敗けを認めると俺に忠誠を誓いそれを見届けると、試合の続きだと嬉々として訓練場へと向かった。
数人欠けているが今日はやることがあり全員集まっている。
俺の目の前にはうちの従者が俺から見て左に、お相手の王と従者が右に並んで立っていた。
これからやることというのは〈降伏の儀〉を行い、お相手さん…
クーデリア達を俺の国に組み込む為の儀礼的なものを行う。
クーデリアの従者は六人。ブラド、ヒッポリュテー、ペンテシレイア、アンティオペーの三姉妹、それと他の王候補との戦いで仲間になったフランス皇帝のナポレオン、オランダ人画家のゴッホがいる。
ナポレオン、ゴッホ、ペンテシレイアは隈本城攻城組だったので初対面である。
他にも居たらしいが昇王戦の途中で亡くなってしまったという。別れか…辛いよな。
「王候補クーデリア、前へ。」
「はい。」
ソウウンの厳かな声音が表情の間に響く。
元王…クーデリアが前に出ると綺麗な正座をしていた。
和室と洋室の二パターンあるのだが、交互に使用する事になっている。
前回サナー達の時はは謁見の間だったので今回は評定の間と言った感じだ。
「汝は敗けを認めナグモ王国に忠誠を誓うか?」
「認めましょう。私達は敗北しました。しかし命だけはお救い下さったナグモ様に最大の敬意と忠誠心を約束します。」
スラスラと述べたクーデリアの目を見ると嘘を吐いている様には見えない。
「主様、宜しいですね?」
「おう、クーデリア並びにその従者達は我がナグモ王国の庇護下に入った。これからは仲間であり、家族であり、共に戦う戦友だ。決して虐げない事を王の名の下宣言しよう!」
「「「うぉおおおおーー!!陛下万歳ー!」」」
なんて固い言葉で威厳を示してみたがソウウンとフロイドの仕込みだ。
フロイドの企画で始めた降伏の儀ではあるが、彼はこう言った儀礼的なものに造詣が深く、彼自身イギリスでは貴族家の末裔だという。
はてさて、〈降伏の儀〉を終え一息吐くと今日は後回しにしていたジャンヌの歓迎会である。
ついでにナナオやらクーデリア一行やらもまとめて歓迎会をしよう。
そう思い付くと俺はGPを浪費して様々な食材を買う。
サナーから元王候補達で現代の料理を作り従者達に振る舞おうという提案があり、俺はそれを許可した。
従者と俺に近しい者達だけの宴会だ。
従魔達は数が多すぎるので無し。
まぁ、仕方ないよな。
ジャンヌの歓迎会の意味合いもあるのでフランス料理の本やクーデリアの部下(元王候補)にフランス出身の女性が居たのでそっちはまかせた。
俺は日本料理担当だ。
カレーにラーメン、寿司、肉じゃがなど手の込んだ料理は出来ないがその辺は王特権でレトルトなどをGP購入し温めて出すつもりだ。
後は手軽に手巻き寿司とかかな?
本格的な日本料理を期待していたフロイドからはブーイングを受けたが俺が一番偉いから良いのだ。
俺は料理なんて出来ないからな。
酢飯を作って具材を皿に持って思い思いの具を包むだけのお手軽手巻き寿司はかなりありがたい。
「王様、オリーブオイルとトマト、ナスを出してくれるかしら?」
「あ、私も…トマト、お願いします…!」
「ほいほい。あー、そうだ。今日から十日置きに小遣いのGPやるからそれは個人で好きに使ってくれ。ほい、一人二千GPな。今日の分は俺が出すから使うなよ?」
ぶっちゃけ、クーデリアが溜め込んでたGPで儲けさせて貰ったのでかんげんするだけなのだが…まぁいいか。
「うおぉー!お頭ぁ、太っ腹だぜぇ!」
みたいなやり取りもありながらも料理の準備を終えた。
小遣い制だが、GPでエマの店で買い物をすることが出来るし、給料代わりだ。
三番目に広い部屋、宴会場(洋風)に皆が集まった。
商店を営むエマもナナオに呼んできて貰い、楽しんで貰う事にした。
ソファに掛ける俺の元に今考えていたエマが挨拶に来る。
「ナグモ様、本日はこのような素晴らしい場に御呼びいただきありがとうございます!」
「今日は無礼講だ。エマも忙しいだろうが今夜は楽しんでいってくれ。」
「ご配慮感謝します。」
軽く雑談をした後エマは食事に向かった。
そのあとにも人は並んでいる。これは暫く挨拶の時間が掛かりそうだ…




