三十五話
城に足を踏み入れる。先頭はジャンヌ、ジョンの二人だ。
サナーは俺の後ろを隠れるように歩き、ソウウンとハルが中盤に、殿としてニトクリスとミイラ軍団が後に続いた。
散発的な襲撃があるも、ジャンヌやジョンによって文字通り一蹴され進むペースは途切れず一定だ。
一階の部屋を半分ほど虱潰しに確認するも敵の王らしき人物は見当たらない。
「大将、ここは分散してきましょうや。一塊に動いてても埒が明かねえ。俺と大将。ジャンヌとサナー、ニトクリスとミイラ軍団でどうでしょう?」
「そうだな…いや、俺がジャンヌと行こう。サナーにはジョンが着いてくれるか?そうだな、ソウウンもサナーを頼む。ハルはニトクリスと行動してくれ。戦力をなるべく均等に分けてリスクを減らすんだ。皆、良いか?」
俺が確認すると各々が頷き了承を得られた。
少し考えてジャンヌと行動する方が、ジャンヌへ俺の力を誇示するという目的に沿っている。
サナーやソウウンが心配ではあるが、頼り甲斐のあるジョンが付いてるんだ、大丈夫だろう。
一階二階地下一階と分かれることになった。
俺とジャンヌは二階担当だ。
一階がソウウン達、地下は本命のハル達に任せる。
一番数が多いし、ハルはバッファーだからな。
味方と認めた者に効果を及ぼすのでミイラでもその恩恵を受けられる、粘魔とかと同じ魔物扱いだし。
「ハル、ニトクリスも油断するなよ?」
「シゴウは心配しすぎだ。…ニトをアタシが面倒見るから。」
「んなッ?!貴様、我を足手まといと言うのかッ!それと我を勝手に略称で呼ぶでないわッ!」
「アハハー!怒ったー!さてニト行こう。シゴウ、行ってくるー。」
最近、ハルは笑顔が増えたな。
性格も段々明るくなってきたし。
ニトクリス達が加入してからだ。
これは非常に良い傾向だ。
後はスウェットを脱いで普通の服を着てくれれば問題はないのだが、それは高望みし過ぎだろう。
俺の悩みなんて知らんぷりでご機嫌なハルはニトクリスを連れ地下階段の方へ去っていった。
「俺達も行こう」
「分かったよ、マスター。後ろは任せて。」
俺が声を掛けるとジャンヌは後ろを着いてくる。
まるでそこが自分の定位置だと主張せんばかりに前へ行こうという意思を感じない。
最近、背後から視線を感じるんだがまさかジャンヌじゃないよな?
こう…手慣れてるというか…そんな感じがするんだが…
階段を上がり一部屋ずつ扉を開けていく。
特に変わった様子はなく西側から東側に進んでいき残るは二部屋。
右手側の部屋を開ける、こっちは空振りだ。
ってことは左手側か?
不測の事態が起きないならそれに越したことはないんだが…
「開けるぞ…?」
「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。私が開ける。」
そう言ってジャンヌの右手が俺の左手に重なって、二人で開ける羽目になる。
ええい、ままよ!俺はなりふり構わず扉を開いた。




