三十二話
頼もしい仲間も増えたし、ここは一気に足を延ばして城へ向かう。
ゴロー達は少し離れた所に待機させる。ゴローは体が大きくて目立つからな…寂しがるゴロー達を一撫でして別れると歩きだす。
やがて全容が見えてきた。
蝙蝠が飛び交い、血槍が囲む城壁。
その中に真っ白な城が佇んでいる。
「主殿、警戒を。」
「分かっている。マル、偵察を頼めるか?」
「分かりました!行って参ります!」
マルが弾丸の如く飛び出すと、音もなくしなやかに城壁へと取り付いた。
襲撃はーーない。
俺はマルの制圧した道を追い掛ける。
制圧能力はマルが一番高いのかも知れない。
その後を追い掛けるだけだから簡単な物だ。
「マル、慎重に行けよ?」
「承知!わたくしはそんなヘマを犯しませんわ!」
「ムムッ!侵入者か!」
「姫を守れ!お前はヴラド様達を呼んでこい!」
とかなんとか言っていると東方向から敵の一団に遭遇した。
八人で一人減って七人か。
三人くらいは黒い外套に身を包み、口から覗く犬歯は少し長い。
残りの五人は背中から黒い羽を生やし逆ハート型の尻尾を生やした露出の激しい服(?)を着た美人さんだ。
「とりゃッ!」
鬼丸国綱を振るい距離を離そうとしたが、外套の少女達は全く避ける素振りなく受ける。
というよりも手応えが…ない?
「フハハ、我等ヴァンパイアとサキュバスの混成部隊に棒切れで挑むとはな!」
あー、やっぱりそっち系だったか。
んじゃー、物理は効かなそうだな…よし、魔力擊だ。
「痛っ!あうー…こいつ、強いぞ!」
「囲め囲め!強敵だ!」
軽くかすっただけなのに慌てだした。
ヴァンパイア達はそんなに強くないのか?
「取っ捕まえて精力を絞ってやる!」
「久々の男よ!何て美味しそうなのかしら!」
あー…サキュバスって居るんだな…
性的に食べられちゃうぅ…!
助けてぇ、マルー!カノー!
「させません!《火弾》、《風刃》」
「主様は拙者が守る!《多連蛇鞭擊》!!」
「「「うわーーー!!」」」
マルの魔法とカノのスキルがサキュバス達を薙ぎ払う。
応援が来る前にここを離れようーー
と提案しようとしたが、遅かったようだ。
二人…たった二人の増援だが、勝てるか分からないな。
抗うだけやってみよう…




