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三十一話



杖は置いてきて鬼丸を持ってきている。

戦闘時はこっちのが良いだろう。


王が動かざるして民は動かん…みたいなのをどっかで聞いたことがある。


まさにその通り何だが…俺もその言葉に習い動くつもりである。


まぁ、タマとゴロウ(スパーリングベア 特殊進化)が付いてるし、何とかなるだろ。


あ、無人偵察機忘れてたな…まぁいいや。


「よし、行くか。」


にゃーご、ぐるるるぅと返事を返した二匹を共に俺は密かに拠点を飛び出したーー


つもりだった。


「御屋形様ッ!」


「えッ、マル?どうしてここに?むぎょッ!」


「御屋形様の考えている事などわたくしにはお見通しですッ!わたくしの為に力を示そうとしておられるのでしょう?じゃんぬ殿には屈しない、という意思を示すことで下がっていた士気を上げようと。その様な無茶はお止めくださいーーとは、いいません。ですが、わたくし達従者をもっと頼って下さいませ。」


マルが両手で頬を挟み諭すように伝えてくる。一番分かってないのは俺だった。


塞ぎ込んでいたマルに悟られるなんてな…ハハ、彼女達の主として失格だ…此方から歩み寄ろう。


「それにわたくしだけではありませんよ?ジョン殿やメアリー、ハルだって皆が御屋形様を心配しております。どうか御命じ下さいませ…!敵を倒せ!と…」


「ああ、すまなかった。皆で行こう!……全軍、突撃だと伝えてくれ!」


「承知!ジョン殿、頼めますか?」


「へへッ、分かったぜ嬢ちゃん!大将、行ってくるぜ!」


「あぁ、頼む!マル行こうか?」


「はい、御屋形様!」


ジョンが駆け出す。ソウウンの元へ行ったのだろうか。


ジョンを見送ってから俺とマルは歩き出す。


ゴロウとタマも着いて来る。


ジャングルの入口に足を踏み入れると何かぎ飛んでくる。パシッ、とマルが掴むと紫色に濡れていた。


「毒矢にございます。警戒を。」


「あぁ。ゴロウ、頼む!ーーア、アマゾネス?!」


グオオォオアァーー


ゴロウの咆哮が響く。

隠れていた数名の半裸の部族らしき者達が慌てて飛び出す。


全員女性…しかも中には上裸の人も居た。


思わず叫んでしまったが、飛び出した瞬間を見逃さなかったマルが鞘付きの刀で一人一人意識を刈り取った。


ゴロウのスキル〈猛き咆哮〉は自分より能力値が劣る者を硬直の後逃亡させる。


「良いぞ、ゴロウ!その調子で頼む!」


ぐるるぅ、と可愛い声で鳴くゴロウの頭を撫で先に進む。


タマがうにゃ~とゴロウの背に乗ると治癒を施した。

ゴロウは短く鳴くとそのままタマを背に乗せ歩き出す。


この二匹は相性が良いのか、いつも一緒に居る。ゴロウが同種のブラックベア達に馴染めなかったからか、お調子者のタマが寄り添う様にいつの間にか居たのだ。


俺が名付けをしてゴロウを贔屓して居たのも孤立してしまった原因なのかもしれない。


タマは人や召喚獣達のそう言った機微を感じ取るのが上手くて異種ながらもこの二匹の間には友情みたいなものが芽生えているんだろうなぁ…と、勝手に思っている。


そんな事を考えながらジャングルの道なき道を当てもなく彷徨っていると遠目に大きな河、この先に城が見えた。


河の手前では誰かが戦闘をしているのか、鉄と鉄のぶつかる甲高い音が聞こえる。


俺とマルは目を合わせるとその方向へと駆け出した。



「あっ、主殿!」


やがて顔が見える位置まで辿り着くと、大盾と縄を構えた者の姿が見える。


カノのようだ。


その傍らには亀甲縛りされたアマゾネス達が転がっている。


「お疲れさん。アンとクフは?」


「別の部隊が強襲してきたので返り討ちにし、其方を追い掛けて居りまする。この程度拙者一人で十分でしたので!」


「そ、そうか…よし、一緒に進もうか!」


「お供させて頂きまする!」


「良かったですね、カノ!」


この程度って、二十人くらい居るんだが…まぁ、頼り甲斐のある武将だということで納得しよう。


頼もしい仲間も増えたし、ここは一気に足を延ばして城へ向かう。


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