三話
「さぁ、わたくしの手を取ってください。そしてこう言ってください。御屋形様の名前の後に「真の王を目指す戦いに参戦する」、と。」
その真っ黒な澄んだ瞳を見て俺は彼女を信じたい、と心の何処かで思ってしまった。
ならば彼女を信じるという自分の気持ちに従ってみても良いだろう。
俺はマルの手を取ろうとした瞬間、マルが俺を突き飛ばすと腰に差した日本刀(脇差)を抜き俺を守るように前へと出た。
「イテッ…!ど、どうしたんだ?」
「御屋形様、敵です!わたくしから離れず下がっていて下さいませ!」
マルの視線の先には狼が三頭、煙の中から現れる瞬間だった。その時、視界に〈ミッション 低級黒狼三体を倒せ〉と表示された。
「てやぁッ!」
気合一閃、飛び込んできた一頭を斬り付けるも後続の二頭に若干押され始めるマル。
ってか、ぽかんと見ている状況じゃねえ!女の子に守られてばっかじゃカッコ悪いし、この子は俺を主人と認めてくれている。だったら主人らしくこの子を守らなければ男が廃る…!
俺は何も考えずにスーツを脱ぐと腕に巻き、マルに噛みつこうとしていた一頭の横面を殴り抜いた。それに驚いた他の二頭は殴られた一頭に駆け寄り、陣形を整え出した。こいつら戦い慣れてやがる。
「お、御屋形様!?一体何を!」
「男が守られてばっかじゃカッコ悪いしな!マル、俺も一緒に戦うぞ!」
「き、危険です!怪我をしてしまう可能性が…!」
「うるせぇ!俺は親父譲りの頑固者でな!一度こうと決めたら絶対に曲げねえ!マル、一緒に戦うぞ!」
「……はいッ!御屋形様、召喚器を起動してください。今なら召喚器も御屋形様の決意に応える筈です!その間はわたくしがこの場を死守致しますので!」
「召喚器…ガチャの事だな!分かった、直ぐに戻るから頼むぞ?」
「この程度の敵…お任せください!」
俺はガシャポン台へと駆け出す。