二十話
翌日。
今日は二度目の昇王戦が開催される日。
前回はマルの部隊のみで勝敗が着いてしまったのでマルは防御部隊に回した。
なるべく皆に活躍の場を設けてやりたいからな。
新たに仲間となったアンとメアリーに今回はハルとカノの補助について貰い様子を見るつもりだ。
アンは銃を、メアリーはカトラスを使うのが得意な様だ。
バフデバフ使いのハルには近接タイプのメアリーを、防御型のカノには援護できるアンを補助に回した。
ジョンはなぜか俺の護衛隊長だ。
他の海賊達を指揮してあらゆる方面から守ってくれるらしい、心強い。
召喚獣達は各部隊に振り分けられており、アオ以外のコピースライムとタマ以外のケットシーヒーラーを二体代わりに送られた。
コピースライム二体は俺の影武者、ケットシーヒーラーはいざという時の備えになる。
フロイドについては…まだ、あまり話せてないので少し様子見だ。
きちんと仕事をこなせるのか後五日は見たい。
さて、試合の準備は整った。
時間まではリラックスしておこう。
ピピピ…ピピピ…ピピピ…
「時間か。」
「大将、休めたかい?」
「あぁ、ジョンは大丈夫なのか?見張ってもらって何だが、ジョンは休んでないだろ?」
ジョンは俺が仮眠を取ると言ったら襖の前で腕を後ろに組みずっと見張りをしてくれていたらしい。
本人が望んだ事なんだが、精神衛生上あまり良くない。
だがジョンはフッと笑うと、俺の肩に手を乗せた。
「大将、そいつぁ野暮ってもんだ。これでも身体は鍛えてんだ!それに主の大事な仮眠時間を守るくらい苦でもないさ、奥方達からは大分睨まれちまったがな…フフッ」
「ジョン、ありがとな!なんてお礼言ったらいいかな…言葉が出てこないけど、ジョンにはきちんと報いてやりたいと思ってる。あと奥さんじゃないからね?俺の世界だと大人の男と十代の女…子供と言っても差し支えない年齢の子が付き合うのは違法なんだよ。」
「はぁ…大将んとこは息苦しそうだな。恋愛なんて自由にすりゃ良いじゃないか!まぁ大将の国にはそれなりの考えがあるんだろうよ。俺ぁ大将の力になりてえから報いるなんて考えなくて良いんだぜ?」
「いーや、きちんと報いる。俺が上司でジョンは俺の部下に当たるんだ。部下を守るのが上司の使命だろう?まぁ、もうちょっと待っててくれよ。ーーおっと、時間だな」
二度目のアラームがなる。
試合開始から十分が経過し、鳴るように設定したそれはソウウンが仕込んだ第二段階開始の合図だった。
俺は窓から相手の本拠地が有るであろう方向を眺める。そこにはエジプトのピラミッドがあった。
すげえ!
マジか…こんな圧巻だとは思わなかった。
だが、此方も負けていない。
此方の隈本城はソウウンが魔改造した特別製だ。
天守閣には防衛本部が置かれ、ソウウンはそこから指揮を行う。
防衛設備も幾つかあり、砦には十台ほどの砲門が置かれ、堀には水が流れ電流も流れている。
櫓には一般海賊を配置し、近付いてくる敵を瞬時に知らせる体制も整えた。
「ハル、頑張れよ!」
「メアリーが付いてんだ。何も心配はないさ!信じることも王の勤めだぜ、大将!」
「信じる…か。そうだな、ジョン!ありがう!」
「良いってことよ、大将。んじゃちょっくら飲むかい?」
「ん?飲む?酒をか?」
「おうよ!大将んとこの第二夫人にメアリー、大将の召喚獣が居りゃまず負けるこたぁねえ。だったら前祝いだ!」
「ハハッ。ジョン、俺の護衛って自覚あるのか?ってもう飲んでやがるし…はぁ、一杯だけだぞ?」
「それでこそ大将だ!我等の勝利を願って!」
「勝利を願って…か。良い言葉だ。」
ジョンがいつの間にか出したグラスに並々注がれたラム酒を口に含む。
うめぇ…
たまにはこんなのも悪くないかもな。




