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十九話


俺は部屋を飛び出して、ジョンのいる平屋に向かった。


この海賊はよっぽどラム酒が好きなのか、葉巻を吸いながら手持ちの中折れ式銃を月夜に照らして磨いていた。


無駄に絵になるな、このおっさん。


ジョンは四十過ぎの美中年でスラッと背が高く伸ばした髭も手入れしてしているのか、とても海賊には見えなかった。


「おや、大将?どうしたんだ、こんな遅くに?」


「いや、まぁ…その…そうだ、一緒に酒を飲みたいと思ってな!寝酒に一杯付き合ってくれないか?」


コスプレして貰って楽しもうとしたら突然布団が敷いてあって夜伽とか言い出したから逃げてきたとはとても言えない。


適当に言い訳をした。


「なんだなんだ?ははーん、奥方達と上手く行ってないのか?」


「んなッ?!そんな訳あるかッ!付き合ってくれるのかくれないのかどっちだよ!!」


「ははは、良いだろう。付き合ってやるさ」


なんだ、このおっさん?!

勘が鋭すぎるだろッ!


「ほれッ、大将の分だ。イケる口なんだろ?」


「おう。ありがとう」


ラカムから手渡された酒瓶を見つめる。

コルクを外し豪快に口を付け煽る。

ラム酒特有の甘さと酒精の高さが喉を焼き、食道を流れる。旨いッ!


「ーーーカァーッ!うめぇ!」


「ハッハッハ、そうだろうそうだろう。こいつぁ上物だぜぇ!たんと飲みなッ!」


「おう!」



それから他愛のない話をしながら二時間ほど経っただろうか。

ジョンはかなりのペースで飲んでいたから結構酔っていた。

部屋に来た当初の格好良い美中年と言った雰囲気は既にない。

場末の居酒屋にいる普通の中年みたいな感じになっていた。


俺は酒は好きなんだが全く酔えないのであまり飲まない。


雰囲気を楽しむために一時期バーに通ってたりしたんだが一杯一杯が高い。

だったら旨いものをたらふく食った方が財布にも健康にもよっぽど有益だろう。

そう考えるようになって酒はあまり飲まなくなった。


だが、今はどうだろう。

ジョンと飲む酒は悪くない。

お互いの愚痴を言い合って馬鹿みたいに笑って、今までにこんなに楽しい酒はあっただろうか?


やはり酒は一緒に飲む相手が大事なんだろう。


そんな事をジョンに伝えると激しく同意された。


「うおぉぉおん!さすが大将ッ!知り合ったばかりの俺にそんな言葉を言ってくれるなんて感激だぜぇ!俺も!大将と!飲む酒が一番楽しいぜ!」


「へへッありがとよ!ジョン!一緒に頑張ろうな!」


「おうよ!俺ぁ海賊なんてやってたけどよ、あんたの為ならこの命捨てても惜しくねえ!」


「バカヤロー!」


「グヘッ…いきなり何しやがんだ!」


「違うだろ!俺は今何て言った?一緒に頑張ろうって言ったよな?自分を犠牲にしてまで俺が喜ぶと思ってんのか?!」


「大将…!」


「俺から言えんのはそれだけだ。そろそろ部屋に戻るよ。ジョン、また飲もう!」


「あぁ、また飲もう!さて…酔いが回ってきたな…メアリー達んとこにでも行くかなー!でもあまり飲みすぎたら相手してくれないしーー」


俺がジョンの部屋から自室に辿り着く頃、ジョンの悲鳴のようなものが聞こえたが、兎に角眠かったのでそのまま足を急がせた。


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