十八話
その夜、マル達を呼び出しナース服を手渡した。
ソウウンだけは変な顔をしていたが他の三者は喜んでいた。
「わたくしへの御屋形様がくれた贈り物…!これは部屋に飾らなければいけません…!」
「いや…着てほしいんだが!?」
変な風に感動してしまったマルに思わず突っ込む。
マルに手渡したのは薄ピンク生地の奴だ。
「あたしにこんないい服似合わないよ…折角だから返すよ…」
「ハルの事を思って選んだんだが…きっと似合うから着てほしいな…?」
「…どうしてもか?」
「あぁ、どうしてもだ…!頼む!」
「ま、まぁ…そこまで言うのなら着てやらんこともない…よ?」
「ありがとう!早速頼めるか?」
ハルには白地を渡した。
最初は遠慮していたのか、俺が素直な気持ちを伝えるとハルは渋々と言った表情をしていたが俺は見ていた。
ハルの口角が少し上がった所を。
「主様!拙者にもこれを選んで頂けたのですか!拙者…!感無量の至りで…!」
「な、泣くなよ、カノ。折角の衣装が汚れちゃうと良くないぞ?」
カノには薄水色のものを渡した。
普段ボンテージめいた服を着ているのだが肌色成分が減ると改めて美女だと見居ってしまう。
「拙僧は…遠慮ーー」
「ーーソウウン、頼む!一度だけでいいから着てみてくれないか?絶対似合うと思うんだ。」
「むむ…しかし…」
「ソウウンは背は少し低めだけど手足が長いからきっとこのセパレートタイプの群青が似合うんだよ…!頼む、後生だ!」
「うわぁ…主の熱意を向ける方向性が気持ち悪い…はぁ…一回だけよ?」
ヨッシ!
マルとハルがその場で脱ぎ出したので慌てて俺は部屋を出た。
「主様!着替え終わりましたよ!」
カノの元気な声が襖越しに聞こえ、畳に正座した四人が並んでいる。
その後ろにはーーえっ?布団…?
まさか何か勘違いをーー?
「不束者ですが、我等四人で夜伽の相手をーー」
「ーーうわぁ~!!」
俺は逃げ出した。ヘタレと言うなかれ。
俺だって男だ、そういう下心はある。
だけど、そういうのって段階を踏んですることだろう?
一番長いマルでもまだ十日足らずだ。
早すぎないか…?
だから決して俺は悪くない!
そういう夢見がちな所を学生時代からからかわれてたけど、別に良いじゃないか!
俺は安心したかったのか、ジョンの元へ向かった。
▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
「御屋形様、行ってしまわれましたね。今宵こそ可愛がって戴けるのかと期待して居たのですが…」
「逃げましたな。ですが、主様のそういう優しい所もまた魅力の一つですね。」
「逃げた…やっぱりあたしの事なんて興味無いのかな…」
「それはないよ、ウジハル。主はきちんと拙僧達一人一人を見てくれている。まぁ拙僧は時期尚早だと思っていたけど。」
御屋形様はいずこへ行かれたのでしょうか。
少し心配ですが、ジョン殿かフロイド殿の元でしょう。
「突然の事で気が動転したのですよ。さぁ主様の事は置いておきまして今後の事についてお話しましょう。」
カノが纏めるとわたくし達は相談を始める。
夜伽の順番について、御屋形様をどの様にその気にさせるか、そもそもわたくし達は御子を宿せるのか…等々。
順番は召喚された順で、カノとソウウンの持つ知識を教わり床術も伝授された。
御子についてはソウウンが知っていた。
「拙僧達は謂わば主様の御子を産むための後宮要因なのよ。主様が真なる王となった暁にはその御子を産み育てる権利が与えられる。拙僧に植え付けられた知識がそう伝えているの。」
「しかしフロイド殿はジョン殿を召喚しています。と、…そんな事よりも、で…ではわたくしも御屋形様のつ、つ、つ、妻に?」
「フロイドはもしかしたら衆道の心得もあるのかも知れないわね…勿論よ。これから人数が増えるとしても貴方が正妻…一番最初に御子を身籠る権利がある。妊娠の兆候があれば次はウジハル、カノ、そして拙僧…と順々にね。」
「はわ…はわわわわ…!わたくしが…正…妻…?!」
「ええ。皆で全力で支援するわ。ランマル、主様をその気にさせるには貴方に掛かっているの。だから皆の分も頑張りなさい!そして拙僧達に襷を渡すの…。良い?」
「ふへ…ふへへへへ…わたくしが正妻…御屋形様の正妻…!」
「これは駄目ね…暫く戻ってこなさそう…はぁ…ウジハル、ランマルが終わったら貴方の番よ。しっかり心に刻んで置きなさい。」
「あ…あたしは…別に…」
「駄目よ。まずはそのひん曲がった根性を叩き直す必要が有りそうね。シカノスケ、ウジハルを抑えなさい!」
「承知!」
「ん"に"ゃ"ぁ"ぁ"あ"ーーー!!」
わたくしが御屋形様の正妻…!
なんて素敵な響きなのでしょう。
あぁ…御屋形様…
いえ、旦那様とお呼びしましょう。
でもそれは初夜を終えてから…
ふふ、楽しみです。