十七話
フロイド戦の二日後、城門の前に見慣れぬ女が現れたという話を勝手に門番をしていたカノからされる。
どうやら彼女は商人で俺に商談があるとの事だ。
まぁ…会ってみるか。
商人を応接間に通し、俺も着替えて準備を済ませる。
ソウウンを呼び、一緒に応接間へ。
商人は銀髪の十代後半くらいの少女だった。
「お初に御目に掛かります。私、銀河商隊のエマと申します。お見知りおきを!」
「拙僧はソウウンよ。」
「あぁ、俺は獅剛だ。宜しくな。それで商談ってのは?此方から売れるものは何も無いんだが…そちらの要望を聞きたい。」
素直に此方の現状を伝えると、エマは笑顔を見せながらこう言った。
「大丈夫ですよ。其方様の事情も存じております。私どもが欲するのはSPでございまして…まずは初戦突破おめでとうございます。これは御近づきの印として受け取って下さい!」
と、言いながらエマは俺に封筒を差し出した。
封筒を開けると、二枚の紙が入っていた。
【UR以上確定従者ガチャチケット】
【UR以上確定武器チケット】
「え?」
「どうした、主殿…ーー!?」
思わず呆けた声が出る。
これは何かの罠なのか…?
そんな風に疑ってしまう自分がいる。
「将来有望そうなナグモ様への特別な贈り物でございます。どうぞ、お納め下さい。」
「だけど…」
「私どもは何も望みません。ナグモ様を私どもが勝手に応援させていただいているだけですので!」
「主殿、貰えるものは貰っておけば良い。エマと言ったか?此方を誑かそう等とは考えておらんよのう?」
こくり…と頷くエマ。
嘘では無いようだ。
「実は私どもは別の昇王戦…商人の商王戦とでも言いましょうか。私ども銀河商会の商人一人一人がナグモ様と同等存在と思ってください。一番多く富を築き最後まで立っていた者が銀河商会の時期頭領となれるのです。私は是非ナグモ様をパートナーとしたいのです。ですからこれは御近づきの印…私の手をとって頂けないでしょうか?」
貰っておけ、というソウウンの視線に軽く頷き俺はチケットをポケットに収めた。
「そう…か。まぁ、これは預かっておこう。だが信用はまだしない。それは商人として分かっているよな?」
「勿論でございます。あ、私どもの商品の品書きをご確認しますか?ナグモ様ならきっと気に入って下さると思うのですが…」
そう言ってエマは一枚の巻物を取り出す。
組み紐を解くと巻物はボンと音を立て消えた。
その直ぐ後にスマホが鳴り確認すると、一度見終わり、再度俺は二度見してしまう。
【特定従者専用装備 水着 スクール水着】
【特定従者専用装備 体操服 ブルマ】
【特定従者専用装備 メイド服 ゴシック】
エトセトラエトセトラ…
こ、これは…コスプレだぁっ!!
「ちょっと待て。この商品は一度しか購入出来ないのか?」
「うわぁ…」
ソウウンはドン引きしている。
「いえ、在庫はございますので幾らでもご購入頂いて構いませんよ。」
「そうか…」
俺の視線があるところで止まる。
水着もメイド服も好きだが、俺にはもっと好きなコスがある。
それが確認できたのだ。
【特定従者専用装備 ナース服 薄ピンク】
その文字を確認した瞬間、俺は迷わずスマホを操作して、色違いを四着購入してしまっていた。
「まいどあり~です!」
「ーーーハッ…!」
無我夢中…いや、無意識の内だった。
気付けば俺が大事に溜め込んだSPは雀の涙となっていた。
こいつぁ…やべぇ!
俺の好みを確実に知ってやがる…!
だが後悔はない。
これをマル達に来て貰わなければ!
「定期的に目録を確認したいのだがどうすれば良い?」
「防衛コマンドから【御用商人】の欄に銀河商隊長エマ・ヘンドリクセン とご記入下さい。さすれば、私どもの出張商館をご利用出来ます!建築費は勿論此方持ちですので!」
「わかった、早速責任者に伝えておこう。おっととなりに居るんだった…!ソウウン頼む!今日は良い取引だった。また利用したい。」
ソウウンは不承不承と言った様子だが頷いた。
「有り難うございます!今後ともご贔屓に!」
こうしてエマの商隊との商談を俺は終えた。