私には…。俺には…。“絶対!!!!” vol.009 部屋の中を行ったり来たり。
ベッドにスマホを放って、腕組みして、
顔を左右上下斜めに向けて…、考えてみる。
けれども、結局はさっきの電話の相手の声。
「大変申し訳ありませんが、今回はご期待に沿えない結果となりました事、ご連絡のためにお電話させて頂きました。」
その声が頭の中で…、
「何か俺…あん時、変な事、言ったか…???」
部屋の中を行ったり来たり。
「何でだよ。何もまずい事…、言ってねぇはず…。」
唇を捻じ曲げ、唇に人差し指を当て、
「うそだろ…???不採用…。マジで…。」
頭を掻きながら…。
「いや…、だって…、あんだけ…にこにこした笑顔で…。握手までしてくれたんだぜ。」
それから数分後、また着電。
「あっ、はい、もしもし。桐生です。……はい、先日は、ありがとうご…。はい。えっ…???…あっ、はい…、いいえ…。はい、どうも…わざわざ…ありがとう…ござ…。」
最後の言葉も終わらないままで電話は切れる。
「おい。人の…、最後まで聞けよ。」
スマホを握り締めたままで、
「ここもかよ!!!」
そしてまた着電。急いで気持ちを切り替え、
「はい、桐生です。先日は…。」
電話の向こう…、
「…先日は、ご足労ありがとうございました。面接の結果なんですが…。」
相手の声を聞きながら、
「…そ…う…ですか…。はい。」
電話の相手…、
「大変申し訳ございません。失礼します。」
立ったままで、スマホを絨毯の上に落とし。
「おいおいおいおい。冗談…よしてくれ。あとふたつだぞ。冗談じゃねぇぞ。もし…だめだったら…。どうすんだよ、マジで!!!」
一気に、今までののほほん状態から鼓動が高鳴りはじめる。
背中に薄らと感じる冷や汗。
それほどページを繰った訳でもなかったリクルートの雑誌に一気に集中し始める。
「勘弁してくれ、勘弁してくれ。まさか、俺が…。この俺が…、仕事に…あぶれるなんてこと。」
夕方6時、将史のスマホに着電。それにドキッ。
心を鎮めて電話に出る…。
「はい。桐生です。はい。先日は…ありが…。」
数秒後、瞼が潤む。