私には…。俺には…。“絶対!!!!” vol.006 「全然だめじゃん。どうすんのよ。もう~~。」
クッションの上に胡坐を掻いて、
テーブルの上のリクルートの雑誌を見ながら…。
そしてノートにズラリと書き記した企業の名前。
半分以上が赤線で潰されている。それを見て、いきなり瞼が熱くなり、
思わず体育座りになり、膝にオデコを落とす瞳美。
鼻水を啜りながら。
「全然だめじゃん。どうすんのよ。もう~~。」
そして、
「あ~~だめだ、泣いてらんない。次々…。」
翌日も、そしてその翌日も、アポイントを取った企業に出向いてはみるが…。
「なんで…、こんだけやって…。おかしいでしょ。」
ベンチに座って…、それでもリクルートの雑誌を見ながら、
スマホを取り出して…、けれども、そのスマホの画面にポツリと…、
瞳から落ちる涙。
「あ~、んもう…。悲しくなっ…。」
着電。
「…ん…。春香~~。」
「あ~瞳美~。どう…調子は…。」
「あ…、うん。グスッ。…ん…。まっ…ねぇ…。何とか…やってるわ。うん。」
「バ~カ。泣いてんじゃないよ~。…まっ、そんなとこだと思った。今日、飲むよ~。しっかたない、失業者に、奢ったるわ。付き合え。たまには息抜き、息抜き。」
「うん。分かった。ありがと。サンキュ。」
「ふ~ん。こういうところもあるんだわ。知らなかった。」
瞳美。
「私も最近、友達から教えられてね……。」
春香。
「え~~~!!!そんなに回っても、どこも…ないの…???」
「うん。全く撃沈状態。参ったよ。…現実問題、これほどとは…。」
「しっかし…、女を見る目…ないんじゃないの~~、世の中。」
そしてビールを飲みながらの瞳美。
近くのテーブルから聞こえてくる男性の声。
「まっ、行けるんじゃねぇか~。結構手応えあったから、楽勝かも…。」
将史。
「へぇ~~。会社辞めちまってから、たったの2週間で…。幸先いいんじゃないの…。」
翔太。
「5件回って、かなりの好印象だったからな~~。就職難、就職難っつぅても…。だから言ったろ、俺を欲しいとこなんざ、探せばあるってな。」