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第24話「九鬼流と一刀流」


「てことは、兄さんや。あたしが思うに、()()()使()()()()()()()()()()()()()()()。その元となったのが()()()ていう認識でいいのかい?」


「そうだな。そういう認識が一番分かりやすいと思う」


 実際、ここら辺の云々はあやふやである。それこそ、文献として僅かに残っているだけの情報しかない。だから、どちらが先かとかいう話では、一刀流が先にある証拠しか残っていない、と説明するしかない。

 難しい話だ。

 誰かが研究してくれてもいいだろうに。誰もしないんだから、困ったものだ。


「つまり、九鬼流が似ていたのは自然な話だし、兄さんが勝つのは当然だったてことでいい?」


「当然なわけあるか。勝負に絶対は無い」


「そうだね。確かに絶対は無いよ。でも、兄さんは負けるつもりなんかなかったでしょ?」


 それはそうだ。望を九鬼に嫁入りさせるくらいなら、こっちが不利になろうとも匿ってやる。


「別にあたしの魅力なんて大したものじゃないのにさ。兄さんはシスコンてやつ?」


 呆れながら頬杖をつきながら、望は問い掛けてくる。憂いていて、呆れていて、期待している瞳で。

 誰がシスコンなもんか。


「思いたい方に思えばいい。ただ、九鬼家にやるくらいなら四季家で婿を探すてだけだ」


「それって、あたしが決めちゃダメなの?」


「少なくとも、刀道で有名な家は決めない方がいいな」


「それはどうして? 家柄とか、政略結婚みたいだからとか?」


「いや、単純にその家が強くなりすぎる」


「あたし、結構弱いと思うんだけど。全く、刀とか振っていないし」


 刀を振っていない。厳密に言えば、()()()()()()()()()。そうしなければいけない理由も、本人は気づいていないようだし、ここら辺は追々でいいのかもしれない。

 そのうち、実技で嫌というほど分かるだろうし。理解するはずだ。


「望ちゃんは強いよ、ねぇ夢ちゃん」


「はい。一番強いのが兄様だとすれば、二番目は望ちゃんです」


「過大評価だって……」


「望は過小評価すぎるし、そのうち分かるからその時まで持ち越しておけ」


「はーい……」


 不貞腐れながら望は返す。渋々といった感じだけど、仕方ない。こればかりは、四季家の教育や俺達の指導が悪いだけだ。本人は一切悪くないし、負い目を感じることは一切ない。ただ、環境が限定的かつ閉鎖的だったせいだ。

 そこら辺をどうにかしたいと思って、本人も叶や夢と一緒に来たんだろうし、少なくとも話の流れから察するくらいには賢い子だ。そのうち、嫌という程気づく。


「……で、兄さんはどうするの? これから」


「どうするもなにも、今まで通りにするが」


「そうは言っていられないでしょう。あの九鬼家の、ご子息を打ち倒したとなれば、いつも通りなんて遠い世界の話だと思いますよ」


「まぁ、うん。うん……。どうにか、妹達に注目がいかないか?」


「無理ですね。私達はそもそも、観戦していただけですから」


 そうだよな。

 項垂れてしまう。まぁ、結果論と片付けていいのだが、それはそれで思考放棄とやつになってしまう。悔しいかな、なすがままされるがままというのは、あまり気に食わない。食わず嫌いなわけだ。提案された段階から渋い顔をするなんて目に見えている。

 それこそ、「刀道の大会に出ない?」と提案されて、苦虫を噛み潰したような顔をするなんて予想できる。

 だったら、いっそのこと。


「――参加表明するか」


「その方が賢明ですね。九鬼家のご子息も名指しで兄様を指名して、刀道の大会に出てこいて言ってますから」


「は!? どこで?」


「SNSと、さっき校内放送を無断使用していましたよ」


「前時代的すぎるだろ……」


 いつの時代の話だ。

 校内放送で呼び出す並の、暴挙じゃないか。どれだけ気に食わなかったか、いけすかなかったんだ。


「さもなければ、四季望との婚約は継続させてもらうって。ご立腹でしたよ」


「とことん、嫌われたみたいだな」


 そんな当人――こと、話題の人物はきょとんと俺を見てくる。純真無垢だな。本当に。


「兄さん、あたして婚約してたの?」


「九鬼とな。でも、今日の朝に破棄となったはずだぞ」


「え、どうして? いや、その方がいいんだけど」


「お前が朝っぱらに振った男、婚約者だったからな」


 鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。

 気づいてなかったのかよ。というか、覚えてなかったのか。――いや、覚えるつもりがなかったんだろうな。

 そう思ったけど、九鬼が可哀想なので心の中に潜めておこう。世の中には言っていいことと、悪いことがある。少なくとも、これ以上望の負担を増やすのも兄として許せない。

 まぁ、だから、その話を聞いて刀道の参加票を提出したのは、当然の流れだろう。いい機会だ。四季家の初陣にしては、充分すぎるスタートダッシュが切れたように思う。

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