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選択肢の見える世界で俺は今日も無難な答えを探している  作者: 筑前 煮太朗
エンドロールは流れ始める
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13-3. ファッションとは、我慢

 「ふふふ、元気でいいわね」

 風韻を漂わせたご老人夫妻は、そんなことを言って降りて行った。ゆとりある生活はゆとりある精神を作り、ゆとりある精神はゆとりある人間を作る。是非とも、長生きしてほしいと思う。



 「さあ!あんたの審美眼を見せて頂こうじゃない!」

 そして来たるはデパート。その前で仁王立ちする彼女に、先程のご高齢方を見習いなさいと、俺は言いたい!しかし、もっと言いたいことがある。


 「……俺が選ぶの?」

 「当たり前でしょ!なんの為に来たの?」


 付き添いですが?1人でお店入るの怖いのかなあと思ってたらこれだよ!


 「あ、でもエッチなのは駄目だから!」

 まだその前段階で納得いっていない俺に浅葱心はジトっとした目を向ける。

 人が沢山いるところでエッチとか言うんじゃない!ハレンチ娘が!


 「まあなに着てもエッチにはならねえから安心しろ」

 「そう?ならまあ……ってそれどういうことよ!」

 「さあ?どういうことかいってえ!蹴るな!」


 フンッと鼻を鳴らし、彼女は涼しい風が漏れるデパートの自動ドアを潜る。俺はお尻を摩りながら後に続いた。


 ややこちら損の痛み分けってことで許してやろうじゃないか……しかし、夏休みはどこに行っても人がいるなあ。来てる俺が言うのもおかしいが。


 「エレベーターも混んでるな……」

 3台あるエレベーターの前で団体さん、というわけでもないのだろうが、多くの人が待っている。


 「階段のが早いんじゃない?」

 「ああ……疲れるから嫌だ」

 「ふうん。あっそ……膝なら大丈夫よ?」

 「疲れるから嫌なの!」


 人の話を聞け!いや、確かに?2%、いや、0.02%ぐらいはあったよ膝のこと!でももし思ってても言うなよ!気遣い台無しにすんなよ!恥ずかしいだろうが!恥ずかしいだろうが!!思ってなかったから全然恥ずかしくないけどね!ないけどね!!


 「ありがと」

 「疲れるから嫌なの……」

 「ふふ、はいはい」


 ちゃんとわかってますよと和やかな微笑み1つ。なぜこうも人の羞恥を蹂躙するのか。やな奴やな奴やな奴!……嬉しそうな顔すんな。なんなんだよ。



 5分ぐらい待ち、エレベーターに乗り込む。「3階お願いします」「7階……あ、」「9階を、すみません」と様々な人の要望を聞き、「はーい」となんなく叶えてしまえる俺は実は凄い奴なんじゃない?とか呑気なことを考えていたい人生だった。


 人で詰まった狭い場所は苦手だ。得意な人がいるのかは知らないが、独特の気まずさも息苦しさも好きではない。ということであんまりくっつかないで下さい心さん。


 レディースの服売り場がある7階に到着し、漸く小さな箱から飛び出ることが出来た。生まれた気分。いや大袈裟。


 「かわいい……」

 なんでかわからないが、場のキュート感に若干引いているのはジャージのお方。

 「奥の方見よう」

 多分じゃなくてもここは子供服。心が着れる物はないが、場に呑まれた彼女はそんなことにも気が付いていない。スカートとかどこで買ってるんだろう。



 「かわいいー!」

 先程とは打って変わり、年相応の売り場に着くと、心は洋服に一目散。なんやかんや興味があったらしい彼女は自分で服を選び始めた。なんでずっとジャージだったんだ。


 「どう!?」

 「似合う」

 「これとか良さそうじゃない!?」

 「良いねー」

 「こっちとこっちどっちがいい!?」

 「うーん、こっち」

 「えー!絶対にこっちよ!」

 「なんで聞いた?」


 「よし!」

 「決まった?」

 「うん!」

 「……なんにも持ってなくない?」

 「またにする!」

 「なんでだよ!」


 一通りお買い物あるあるを済ませた俺たちは、違うお店も見ることに決めた。


 「普通に似合ってたけど?」

 「うーん……」

 どうやら気に入らなかったらしい。色とか素材とか、意外とそれぞれ拘りあるし仕方のないことだ。今日は最後まで付き合おう。


 「なんていうか、動きにくそう」


 それを聞いて、こいつがなんでジャージばっかりなのか、理解した俺だった。


 「はいレッツゴー次の店」

 「ちょっと!押さないで!」








 ファッションとは、我慢。

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