12-3. 噓か実か
扉の先になにかいる。背中越しニなにかいる。暗闇ノ中にナにかイる。見エないトこロにナニカイル……
2人はブルブルと震えながら、1つ、また1つと部屋を回っていく。
触っていないクローゼットの扉が開いたり、室内の小さな明かりが点滅したと思ったら目の前にオバケが現れたらしながらも、残る部屋と家宝は共に最後の1つのみとなった。
「やっと終わるな……」
髪は乱れ、青ざめる顔はもうどちらがオバケなのかわからない。
「……」
文字通り右腕にぶら下がった風花は、言葉を発する気力もなくなり、いつもシャンとかけられているメガネも、懐中電灯の光をチラッと反射させながら、鼻の頭に辛うじて引っかかっているだけだ。
俺は意を決し、ドアノブに手をかける。ガチャリ……と無機質な音が館内に響き、最後の扉は開かれた。
ああ、もういる……白い服を着た女性が部屋の奥隅に立ち、壁に向かってボソボソと呟いている。
俺たちはそうっと部屋にお邪魔し、無駄なのは分かっているが、気づかれないよう静かに行動する。
入った左側にクローゼット、部屋の真ん中には何も乗っていないテーブル、向かい合った椅子2脚。家具はこれだけしかない。どうやら家宝はクローゼットの中のようだ。
俺はそうっとクローゼットを開けようとするが、扉はびくともせず開くことはない。
「どうすんの……これ」
風花が俺の右腕をパシパシと叩き始めた。復活したのかなと彼女を見ると、例の白い幽霊を指差しながら、首を横にぶんぶんと振っている。それはそれで怖いです山藍さん。
そして白い女性の方を見ると、壁から目線をこちらに移し、まだブツブツ呟きながら、ペタ……ペタ……と一歩ずつ近づいて来る。
俺は風花を背中に隠し、あと1歩の所で止まった幽霊と対峙する。その幽霊がゆっくりと肩の高さまで左腕を上げると、そこにはネックレスがぶら下がっていた。
俺は恐る恐る手を伸ばしそれを取ると、幽霊は扉を指差す。
「お邪魔しました……」
律儀な幽霊だな……と思いながら俺と風花はその部屋を後にした。
「家宝は集まったな。大丈夫か?」
全ての部屋を探索し、残るは階段を上るだけとなった。風花は右隣に移動し、暗闇に慣れないのかまた腕を掴んでいる。
「……問題ない」
血の気のない顔色はどう見ても問題なさそうには見えないが、もう少しだ頑張れとエールを送りつつ、階段を上る。
2階に着くと、丁字路のようになっており、右と左分かれている。
どっちに行こうか迷っていると、右の通路の奥からなにか足音がし、俺と風花はゴクリと生唾を飲み込んだ。
懐中電灯の明かりを向けると、そこには特殊メイクしたゾンビがこちらに向かって歩いてくる。3体。
「……多い」
風花がそう呟くと同時に、ゾンビはこっちに走り始めた。
「ひうっ!」
「来たっ!?」
変な声を出した風花を引っ張り、ゾンビが来る反対方向に走って逃げ、奥の部屋に急いで入ると、そこには1人の女性が立っていた。
「お疲れ様でしたー!」
ニコッと笑い、集めた家宝を回収されるとキーホルダーが渡された。その部屋の奥にある扉を指差し、「あちらから出られますので、足元気をつけてどうぞ!」と案内される。
扉を出て階段を下りると、なんとそこはお土産コーナー。
いや美術館とかこんなんだけど……なんだ、この見合ってないあっけらかんとした終わり方は。
「……」
右腕に掴まった風花も、唐突すぎる終わりにポカンとしている。
「酷いな」
そう呟くと、風花は小さく頷くのだった。
お土産コーナーを抜け、外に出ると1つの立て札。
〔当館には、白い衣装を来た幽霊はおりません。〕
そこは本物の幽霊に出会えるお化け屋敷。
信じるか信じないかは、来園者次第です。
噓か実か。




