表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
選択肢の見える世界で俺は今日も無難な答えを探している  作者: 筑前 煮太朗
第2章 知れば知るほど、愛おしくなるモノ
39/54

10-4. 雨の日 一言


 雨は降り続ける。俺が外にいるから降り続けるのだと思ったが、そんなことはなかった。俺が学校に入っても、雨は降り続ける。


 校門の柵をよじ登った俺はびしょ濡れになった。しかも怒られた。


 なぜ濡れたことを罰として、遅刻を良しとしてくれないのだろう。校則というのは自分勝手だ。全く。



 俺は既に1時間目が始まっている教室にそうっと入る。


 遅刻しても常識は分かってる。褒めてくれていい。


 「遅いぞー」

 世界史の先生は俺を注意して、笑い者にしようとする。褒めてくれていいとは言ったが、そんなことは求めていない。


 だが残念、クラスメイトは1人を除いてチラリと見やるだけで誰も気にしていない。1人を除いて。


 かわいい顔をした友人とも呼びたくない友人、七宮千春だ。


 彼は席に着いた俺に向かって、両手を頭に乗せ、お得意のうさぎポーズ。口パクでなにかを伝えてくる。見なくてもわかる。


 お・は・ぴょ・ん、だ。


 もうそれはいい。あいつは遅刻しないが常識がない。


 夏が近づくと思い出す。あいつは1度プールの水を海水に変えたいと言い始め、危うく実行しそうになった。海まで行ったが無理だと思ったと後日語っていた。


 そういえばこんなこともあった。文化祭で1本10円の細長いパンを1本100円で他校の生徒に売っていたのだ。個人で。停学になったし売上も全て没収されたが、スカート履いてたら絶対もっと売れたよ!となぜか悔しそうだった。


 ……なんであいつ退学になってないんだろう。


 こっちを見てプククと笑う七宮を見ながら、俺はそんなことを思う。偏頭痛酷くなってきた。



 チャイムが鳴り、1時間目が終わる。


 「おはぴょん!」

 七宮はわざわざ俺の席までやってくると、飽きずに毎朝のお決まりをやってくる。


 それさっき見た。


 「はいはいおはよう」

 俺はもうあっち行けと手を振る。


 「今日は特に元気がないなあ。そう言えば朝、こころん告白されてたよ?」

 七宮は俺の反応を興味深そうに観察する。


 「へえ……」


 まあそんなこともあるだろう。俺は驚かない。浅葱心はそれなりにモテているのを、俺は知っている。


 それこそ中学生の頃はよく告白されていた。下駄箱にラブレターが入っていたりもしていた。悪戯もあったみたいだけど。


 「むむ、こころん心配じゃないの?取られちゃうよ?」

 七宮はいいのかなー?いいのかなー?と楽しそうだ。腹立つ。


 「別に付き合ってないから」

 俺はそう言いながら鞄に仕舞った頭痛薬を探す。朝の分じゃ少し足りなかったみたいだ。


 「君ねえ、付き合ってないから取られちゃうんだよ?分かってるのかなあ」

 この坊やは分かってないねえ。と腕を組むと、やれやれと首を振り、ようやく七宮は俺の下を去った。

 

 なに言ってんだ……と思いながらも、俺はそれを否定出来なかった。


 俺の頭には、ふと彼女の姿が浮かんでいた。


 「なに言ってんだ」

 馬鹿馬鹿しい。そう心の中で呟く。



 「付き合ってないから取られちゃうんだよ」


 しかしその言葉は頭の中をグルグルと回り、なかなか消えてくれないのだった。







 雨の日 一言

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ