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女性が奮闘する物語

《アンソロジーによるコミックス化》婚約破棄された瞬間に、何かがプチッと切れました!

作者: 悠木 源基

馬鹿という言葉は正直好きではありません。しかしお話の構成上使わざるを得ないなので多用しています。馬鹿という言葉が嫌いな方は読むのをお避け下さい!

 それは最終学年の始業式の日だった。午前中で授業が終了したので レイナが帰ろうと腰を上げようとした時、開いてた扉から婚約者のロダンが教室の中に入ってきた。しかも今噂になっている一つ下の学年の子爵令嬢と共に。

 レイナはピンときた。やるのか? 今から? やっぱり後一年は待てなかったか。堪え性のない奴だな。まぁ予想はしていたけれど。

 

「レイナ=ウィルソン、悪いがお前とは婚約を破棄する! そして俺はこの運命の相手、ノラ=アンダーソン子爵令嬢と婚約する。だから二度と俺にまとわりつくな、分かったな!」

 

 教室中がシーンとした。そしてみんな呆気とられた。みんなは思った。レイナって、いつロダンにまとわりついていたっけ?と。

 

「レイナ、俺、昨日宿題やるの忘れてた、ノート見せて!」

 

「レイナ、今日指されるけどこの問題教えて!」

 

「レイナ、忘れ物しちゃった、それ貸して!」

 

「ねぇねぇ、レイナ!」

 

 入学以来絶えずレイナにまとわりついていたのはロダンで、彼女の方からロダンに近づく事は全くなかったよな。

 

 レイナはロダンにまとわりつかれるのにうんざりしていたので、正直彼の申し出はありがたかった。物心ついた頃から親に何度婚約解消を願い出ても、仕えているガードナー侯爵家からの婚約を断る事などありえないと一刀両断されてきた。

 そりゃそうだと成長していくうちレイナも思ったが、それでも心の中では婚約解消の望みはあると信じて、ずっとこれまで対処法を考え準備してたのだ。

 

 半年前にロダンがノラ=アンダーソン子爵令嬢と付き合い始めた時、いつ婚約解消を言い渡されても困らぬようにレイナは心構えをしていた。しかしそれは、彼の卒業がある程度見通しがついた頃だろうと思っていたし、そうであればいいと願ってもいた。それは自分の為ではなく彼の為に。もう長い間婚約をしていたのだから、それくらいの情は持ち合わせてはいたのだが・・・・・

 この衆人環視の中で、しかも自分にとってとても大切な日に、この自分勝手な思いやりのない婚約破棄宣言を聞いた時、レイナの頭の中で何かがプチッと切れる音がした!

 

「ロダン様、突然何をおっしゃるのですか。冗談はおやめください」

 

「婚約破棄なんて、何故そんな酷い事をおっしゃるのですか? こんなにお慕いして今まで尽くしてまいりましたのに」

 

「私のどこがいけなかったのでしょうか。教えて下さい。悪い所は直しますからおっしゃって。私を捨てないで下さい」

 

 レイナが発した台詞に、ロダンとノラ嬢のみならず、その場にいたクラスメイト全員がぽかんとした。

 レイナの口調があまりにも棒読みで、下手すぎる芝居のようだったからである。

 

「お前、俺を馬鹿にしてるのか!」

 

 ロダンがかっとなって、怒りで顔を真っ赤にしながら叫んだ。

 

「馬鹿を馬鹿にして何が悪いんですか? どうせ素直に分かりましたと答えても、『強がりを言うな、本当は俺の事を好きなんだろう、しかし諦めろ!』とかめんどくさい事言うつもりだったんでしょう? だから先にあなたの望む事を言ってやったのに、何の文句があるんですか?」

 

 レイナの言葉に周りの者達は皆こう思った。彼女の言いたい事は理解出来るが、それならもっと上手く芝居をすればいいのに、余計にめんどくさくしてどうする!と。学園創立以来の才女と呼ばれているレイナにも苦手な事があったんだなぁ、と。

 そういや、美人でスタイル抜群なのに、彼女は学園祭の芝居はいつも脚本担当だったな。あれって、話作りが上手いからじゃなくて、演技が大根だったからなのか・・・今頃になってクラスメイトはその真実を知った。

 

「も、文句はあるさ。人前で馬鹿呼ばわりしやがって」

 

「あなたが自分で馬鹿な真似をしたからでしょう? 

 私はあなたがノラ嬢とお付き合いをしていたって一つも文句を言わなかったのだから、何も問題はなかったでしょう。それなのにあと一年何故待てなかったのですか? かわいい彼女に、日陰の身は辛いからちゃんと自分と婚約して欲しいと、お涙頂戴の芝居でもされましたか? 私とは違い名演技だったんでしょうね。ころっと騙されるなんて、あなたは本当に馬鹿なんですか?」

 

 ノラ嬢はロダン同様に真っ赤になってブルブルと震えた。

 

「俺の婚約者に対してなんて無礼な事を言うんだ。お前なんて俺に婚約破棄されたら、ただの俺の下僕に過ぎないくせに」

 

 ロダンのこの言葉は教室に居たクラス全員の顰蹙を買った。

 学園の中では皆平等。身分の上下は一切無し。これを破る者は恥を知れ! これがこの国一番の名門校トートアテナイ学園のモットーだ。

 ここでは王族も貴族も平民も、(あるじ)だろうが使用人だろうが関係ない。そんな基本中の基本さえ理解出来無い程馬鹿なのか! まあ以前から、馬鹿だと皆は思ってはいたのだが。

 

「では、その下僕がいなくなったら、あなたはどうやってこの学園を卒業なさるおつもりなんですか?」

 

「はぁ?」

 

 突然何を言われているのかわからず、ロダンの頭の中に疑問符が浮かんでいる様子が見て取れた。やはりいちいち説明してやらなけりゃわからないのかこいつは・・・

 レイナは深いため息をついた後、やる気のなさそうな、つまらない顔付きで、さっきの小芝居と同じ様な口調のまま解説をしてやった。いつもの様に噛んで含めるように、ことさらわかり易く。

 

「あなたがこの学園で最終学年まで進級してこれたのは、あなたの予習復習宿題を私が手伝ってきたからでしょう。そして試験の時は私が過去問を徹底的に研究してデータをとり、出題傾向を調べ上げた上で模擬テストを作り、何度もあなたに反復させた結果、ようやく及第点をとれてきたのでしょう? 私の手を借りずに今年は一体どうするおつもりなんですか? 転校なさるおつもり? それとも、一つ下の学年のノラ様に私の代わりを務めてもらうおつもりなのですか? 凄いですわね、ご自分より上の学年のお勉強まで同時に習得出来るとは、ノラ様は才女ですわね」

 

 レイナの言葉に皆が苦笑いを浮かべた。ノラはAからFまであるクラスのF組に在席しているが、クラスは成績順で決められているのだ。そう、ABCDEFと。

 

 ロダンとノラは更に顔を赤くした。そしてロダンは彼女を庇うように肩を抱きながら、怒鳴った。

 

「ノラにそんな事が出来る訳がないじゃないか! 彼女は普通の一般的な女の子で、お前のような頭でっかちで勉強しか能のない奴とは違うんだから。俺は彼女には心の安らぎを求めているのだから、勉強なんて関係ない」

 

「そうですか。まあそれはどうでもいいのですが、肝心の試験はどうなさるおつもりなんですか?」

 

「どうするもこうするもない。今まで通りだ。婚約者ではなくなってもお前が俺の下僕である事には変わりはないんだからな」

 

 ロダンのこの駄目出しに、みんなはもう終わりだとばかりに乾いたため息をこぼした。ああ、これで俺達私達の有意義で革新的で斬新なわくわくした学園生活も終了で、また面白くないアカデミック(正統的、伝統的)な生活になるんだろう。最終学年のA組メンバーは皆がっくりした。

 

「残念ながら、私は今日であなたの下僕は終了しましたので、もうお手伝いは出来ません」

 

 レイナは淡々と言った。


「はぁ? 婚約者じゃなくなったって、お前が俺の下僕である事は変わりないじゃないか! お前の父親はうちの執事なんだから」

 

「親と子は別人格です。お忘れだとは思いますが、私は今日で十八となり成人いたしました。ですから私は今日独立いたしますので、もう、あなたの下僕ではございません。故に、あなたのお手伝いなどしている暇はありませんし、また、する必要もありません」

 

「誕生日・・・・」

 

 ロダンが小さく呟いた。子供の頃はきちんとお互いの誕生日にはプレゼントをし合っていた。しかしいつからだろう、自分がレイナにプレゼントを渡さなくなったのは・・・ロダンは回想した。

 彼女の誕生日は新学年の始まる忙しい頃なので、ロダンはついうっかりして、後でプレゼントを買おう、買おうと思っているうちにいつも忘れてしまった。そしてそれを繰り返すうちに、いつの間にかレイナの誕生日自体を思い出さなくなっていった。どうせプレゼントは親がロダン名義で彼女に贈ってくれてるのだろうから、それでいいやと。

 

「女の癖に独立ってどうするつもりだ。女なんか一人暮らしをしようにも部屋なんて借りられないし、仕事だってたやすく見つけられないぞ。第一、学園へはどうやって通うつもりなんだ」

 

 ロダンは動揺をしていたが、それを隠そうと余計に偉そうに言った。しかし、レイナは相変わらず表情一つ変えやしない。

 

「私、実は官吏採用試験に合格しておりまして、いつからでも勤務しても良い事になっております。この足で役所へ出向いて手続きを済ませてこようと思います。城内には女子寮もありますので、そこに入寮するつもりです。ですからロダン様にはもうお会いする機会もそうそうありませんでしょう。私にまとわりつかれる心配をなさらなくて大丈夫だと思いますよ。

 ああ学園の事ですか? そちらもご心配ありがとうございます。でも一年前に全ての単位をとってしまっているので問題はありません。ロダン様のお手伝いをするためだけに学園に残っていただけですから」

 

 ロダンはただただ驚いて目を大きく見開き、口をパクパクさせていた。しかし、鞄を持ち上げて歩き出そうとするレイナに、慌ててこう尋ねた。

 

「何故今までそれを隠していたんだ?」

 

「隠す?」

 

 レイナは眉間に眉を寄せ、初めて表情を変えた。

 

「隠してなんておりません。その都度きちんとお話ししておりましたよ。あなたが私に興味が無かったから、頭に入っていなかっただけでしょう」

 

 ロダンが自分の事なんて全く関心が無い事など分かってはいた。しかし、自分の誕生日、それも成人を迎えた大切な記念日にこんな辱めを受けた事に、流石にレイナは腹を立てた。そこまで人を蔑ろにするのか、それほど自分を嫌いなのかと。あれ程一生懸命に尽くしてきたのに。

 だから情けで言わないでおこうと思っていた事まで、皆の前で話そうとレイナは心に決めたのだ。そう。さっきの婚約破棄を宣言された時、何度でも言うが、彼女の心の中で何かがプチッと切れたのだ。

 

「ああ、最後に先程からあなたの事を散々馬鹿呼ばわりした事をお詫びいたしますわ。そして訂正いたしますわ。あなたは馬鹿なんかではありませんよね。だって、あなたはご自分の力でちゃんとご自分の伴侶を見つけ、きちんと将来の道筋も立てられたのですから。ガードナー侯爵様もさぞお喜びになる事でしょう」

 

「父上が喜ぶ? まさか。父上はお前と上手くやれ、仲良くしろ、それしかお前の生き残る道はないと、ふざけた事ばかり言っていたのにか?」

 

 ロダンはレイナの意外な言葉に疑わしそうな顔をした。

 

「あなたは二男で侯爵家を継ぐ事は出来ません。ですからどこかの養子に入るか、爵位無しで独立するしか道がありません。しかしあなたの能力では養子に欲しがる家は無いだろうと侯爵様は心配されていました。ですからあなたが独立した時困らないように、私にサポートして欲しいと望まれ、私が婚約者となりました。

 侯爵様は本当にあなたを愛して心配なさっていたんですよ。そうでなければ、侯爵家が自分の執事、男爵の娘なんかをわざわざ婚約者になんかにしません。あの方は家の体面よりも息子への情をとっていたんです。まあ、あなたは自分で婿入り先を見つけられたのですから、その親心は結果として杞憂となった訳ですが。

 まあ、この学園は我が国一番の学校ですから、あなたがこのままここを卒業出来るとは思えませんが、転校するなり、騎士養成学校へ入り直すなり、他にも道があるでしょうから是非とも頑張って下さい」

 

「何故この学園を卒業出来ないんですか? ロダン様は今までは武術にだけ力を注いでいたから勉強を疎かにしてきたけれど、本気を出せばすぐにでも上位の成績をとれるとおっしゃっていましたわ」

 

 ここで初めてノラが口を開いた。ノラはアンダーソン子爵の跡取り娘である。

 

「確かにロダン様は座学よりも実技の方がお好きですわね。ただし、勉強する暇がない程体を鍛えていた訳ではないと思いますが。

 いかに少ない労力で勝てるか対策を立てろと命じられて、対抗試合がある場合は、私がいつも対戦相手をリサーチして攻撃パターンや弱点を調べ上げ、それに合わせてトレーニングを組みました。

 ロダン様はこれまでの武術大会では好成績を残しておりますが、予備知識がない相手に勝てるかといえば、それは難しいと思います。でもまあ、それも努力次第でしょうから、ノラ様が補助なさって下さい。それと勉強の方も。是非お二人で頑張って下さいませ。

 よっぽど精進なさらなければ、ロダン様はノラ様のお父様と同等の地位は望めないでしょうから。余計なお世話ですが」

 

 アンダーソン子爵は近衛第三師団長をしている。その方の事は存じあげないが、とても優秀な人物である事は容易に想像が出来た。

 彼は子爵で爵位は高くないが、近衛隊は実力主義で身分は関係がない。しかも師団長クラスなら頭脳明晰でなければ任命されるわけがないのだ。作戦を練る事も状況判断も出来無いような人間では務まらないからだ。

 と言う事は、つまりロダンでは到底無理な地位だ。そんな男を婿に選ぶとは、アンダーソン子爵の優秀な遺伝子は娘には伝承されなかったようで、非常にお気の毒だ。多分、アンダーソン子爵はこの縁談を断りたいと思うだろう。しかし、こんな大勢の人の前で婚約宣言をしてしまったのだから無理だろう。もし断られたら侯爵家が面目丸つぶれになるので絶対にそんな事は許さないだろう。そもそも、ノラの方が積極的に婚約者がいるロダンに迫った事は、調べればすぐに分かる事なのだから。

  

 まずった! 失敗した! 

 ノラ嬢の顔には後悔の色が誰にもわかるようにあらわれていた。しかしもう遅い、と周りの者全員が思った。

 

 レイナはロダンとノラの目の前まで行くと一旦立ち止まり、教室の中を見渡して、お別れの素晴らしいお辞儀をした。すると、次々とみんなの声が上がった。

 

「レイナ、我がA組の期待の星! 役所へ行っても伝統なんかぶち壊してくれよ!」

 

「レイナ、行政改革してくれ!」

 

「斬新なアイディアを出して国と国民のために頑張ってね!」

 

「卒業式は参加してね、待っているから!」

 

「来年は俺も役所勤めをするつもりだからよろしくな!」

 

 レイナはニッコリとその美しい顔にようやく微笑みを浮かべて、

 

「ありがとうございます。皆様もこの最終学年を旧態依然とした先生達に屈せず、頑張って下さいね。お困りの事があったら、今まで通りいつでもご相談に乗りますから。卒業式を楽しみにしています。それでは、皆様、ごきげんよう」

 

 と言うと、またくるりと出口の方に体を向けると、ロダンとノラには一切目をやらずに廊下へ出て、そのまま校舎を後にすると、城の隣にある役所へと向かったのであった。

 ロダンとノラは暫くその場に立ち尽くしていたが、帰宅するA組の生徒達に邪魔だと廊下の反対側へと追いやられたのだった。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 その後役所に入庁したレイナは、革新派の第二王子ウィクリフの肝入りで作られた構造改革・意識改革チームのメンバーに抜擢された。そして諸外国と比べて無駄が多い国の行政体制の見直しと、男女の格差の改革に熱心に取り組んだ。

 そして二年後、国の内外にウィクリフ王子殿下とウィルソン男爵令嬢レイナの婚約が大々的に発表された。

 

 二人は元々同じ学園の先輩後輩で、一緒に生徒会活動をしていた仲だった。

 ウィクリフ王子は学生時代から、美人で頭脳明晰、真面目で、生徒会や友人達のためにいつも一生懸命に頑張っているレイナを見ていて、彼女に好意を抱いていた。しかし、彼女に婚約者がいる事は知っていたので、その思いは胸の奥にしまっていた。

 それなのに卒業してすぐ、まだ最終学年である筈のレイナと城内でばったりと会った。何故ここに居るのかを尋ねると、卒業の単位はもう全てとっているので役所の仕事に就いたという。そして、その日は上司に命じられた仕事でたまたま城に上がったところだった。

 

「婚約者はよく君が仕事をする事を許可したね。君がいなくても彼は大丈夫なの?」

 

「さあ、どうでしょうか。あの方は運命の女性と新たに婚約をなさったので、その彼女にでも助けてもらっているのではないでしょうか? 私は婚約破棄をされてもう関係がないので、その後の事はよくわからないのですが」

 

 レイナのこの答えに王子は驚きを隠せなかった。彼女のような素晴らしい女性を手放すとはなんと馬鹿な男なんだろう。

 しかし、その馬鹿な男のおかげで自分は幸運を手に入れられるかも。ウィクリフ王子は馬鹿な男の顔を思い浮かべて、心の中で彼に感謝したのだった。

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 婚約発表から一年後、ウィクリフ第二王子殿下とウィルソン男爵令嬢レイナの結婚式が行われた。国民に寄り添った改革を次々と実行している両殿下は国民に大人気だ。

 成婚パレードには、国中の人々が祝福するために大勢集まっていた。その群衆を整理する為にやはり国中から騎士隊が寄せ集められていたが、その中には王子妃となったレイナ妃の元婚約者、ロダン=アンダーソンがいた。

 レイナが学園を去った後、すぐにロダンはノラと婚約した。ノラには既に拒否権は無かったのだ。しかし、アンダーソン子爵は娘の勝手な振る舞いに怒り、ガードナー侯爵にどんなに睨まれようと、結婚は認めても爵位は絶対に譲らないと宣言した。

 

 ロダンは結局最終学年の定期テストで二回連続して赤点をとり、再テストをしても似たような結果だったので、とうとう学園を退学になった。ただ運動や武道の成績が良かったので騎士学校へ編入する事が出来た。

 しかし、当然ながら彼の騎士としての成績はぱっとしなかった。そして卒業後は、地方の駐屯地に新妻と共に赴任した。

 ロダンは結婚と同時に実の両親から援助を打ち切られ、婿入り先にも見放された。そして妻は何の役にも立たないどころか文句ばかりで、彼が一番望んでいた安らぎさえ与えてくれなかった。

 

 第二王子の結婚パレードの群衆を整理しながら、馬車に背を向けて主役の二人を見ずに済んだ事が、ロダンにとっての唯一の救いであった。

 

 初めて話を短編にまとめられました。

読んで頂いてありがとうございます!


 子爵令嬢の名前がノラだったり、ノアだったりしてすみませんでした。全てノラに直しました。

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