9/10
カルテ09
体を這う髪の毛は、私の首に絡み付くと、ゆっくりと締め付け始めた。
「……く……苦しい」
(なに? なんで? 誰か助けて……)
私の記憶は、糸を切ったかのように、プツリと途切れた──
◇◆◇◆◇◆◇
私が次に目を覚ましたのは、次の日の朝だった──
周囲を見渡し、ここが病院であることに、すぐ気が付いた。
(あれ? なんで? どうしてここにいるんだろう?)
傍らには、泉先輩がベッドサイドに、顔を伏せて寝ているようだった。
(そっか。私、あのまま倒れて……朝になって泉先輩が見つけてくれたのかな?)
寝ていると思っていた泉先輩の肩が、小刻みに震えているのが分かった。
(泉先輩? あれ? 私……声が出ない……ん? 朝じゃない? 窓の外がまだ暗い気がする)
ここが病院なのは分かったが、見たことの無い病室に、少し不安な気持ちを抱き始めた時だった──
ギィィ──
ギィィ──
ギィィ──
開けっ放しの病室の扉の前に、車椅子が押されてきた。
(誰が押して来たんだろう……)