カルテ05
「そろそろ見回りの時間ね」
脳裏によぎる、泉先輩の言葉──
「まぁ、気にしていたら、何も出来ないわよね。行ってきます」
「はい。お願いします」
深夜の見回りは交代ですることになっており、病室に患者様がいるかどうか、病棟を徘徊していたり、あるいは倒れている方がいないかなど、実は確認することが多い業務なのである。
「怖いと思うから、全てがそう思えてきちゃうのよ」
私だって、恐怖心が無い訳ではない。
だからこそ、あえて口に出すことで、自分に言い聞かせているのだ。
順調に見回りも進み、残すは例の鍵の掛かった扉のチェックだけとなった。
「鍵が外れてないかを確認するだけ。簡単なことよ。そしたらナースステーションに戻って、カフェラテでも飲もう」
誰も聞いていない今後の予定を呟きながら、私は扉の前へとやって来た。
ガチャガチャ──
取っ手を鎖でぐるぐる巻きにして、南京錠で施錠してある。
私は指差し確認をして、確かに閉まっているのを目にした。
「ふぅ……よしっ、鍵はちゃんと掛かってる。戻ろう、戻ろう」
怖さのピークは越え、あとは戻るだけ……のはずだったのだが。
ガチャ──
私の背後で、鍵の外れる音が聞こえた──