4/10
カルテ04
病棟にまつわる伝説を、泉先輩に聞いてから数日──
今日は私の初夜勤の日。
申し送りも終わり、日勤の看護師達が更衣室へと向かう中、泉先輩が私のもとへと駆け寄ってきた。
「桃華ちゃん。あの話、忘れてないわよね? いい? 絶対守ってね?」
「はい。わたし霊感ないし」
「……はじめはね? みんなそんなこと言うのよ」
「もう、泉先輩!」
そんな私の返しにも、泉先輩の目は笑っていなかった。
周りの先輩看護師たちの表情もいつも通りの柔らかいものだし、急変がないと良いなぁ。くらいにしか思っていなかった。
「答えない。目を合わせない。ですよね? 分かりましたから、帰ってゆっくり休んでください」
「はいはい。何かあったら連絡して。じゃあね」
「お疲れ様でした」
泉先輩なんであんなに念を押していったんだろう?
そんなことを考えていたが、ナースコールで呼ばれて患者様の対応に追われてすっかり頭から抜け落ちていた。