カルテ02
(泉先輩は、何が言いたかったんだろう?)
そんなことを思ってはいたが、受け持ちの患者様の急変で緊急オペになり、オペ室へ送り出した後、酸素や生命維持装置などの器具を準備しておくのが忙しくて、泉先輩の言葉を忘れていた──
「桃華ちゃん、お疲れぇ。準備ありがとう。助かったわ。お昼いくけど、一緒にどう?」
「はい。オペも2時間予定と言われてますから、今のうちにお昼にしておいた方が良いですよね。泉先輩も今からなんですね。これだけ看護記録に書いてしまいますね」
珍しく、急変患者様が多くなかったので、泉先輩とお昼休憩を取るために、病棟を出て社員食堂へ向かった。
食堂には、他の病棟勤務の看護師達もやって来るので、タイミングが合えば、同期の子達と話が出来るのだが、今日は生憎、ひとりもいなかった。
「そうそう。桃華ちゃん。朝の話の続きなんだけどね」
「病棟の伝説……でしたっけ?」
向かい合って座っていた泉先輩は、私の隣に腰を下ろすと……。
「桃華ちゃんも、今の病棟で勤務を続けるなら、夜勤もあるんだから、聞いておいた方がいいと思うけど。どうする?」
(うわぁ。泉先輩、話したくてうずうずしてるのが伝わってくるなぁ。選択肢は一つしかないかぁ……)
「……それじゃあ、続きを聞かせてもらえますか?」