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カルテ01
看護師になって初めての夏を迎える。
先輩看護師の泉先輩に、この病棟の伝説を教えてあげると言われ、断る間も無く始まった話に耳を傾けているが、本心を言えば、怖いのは苦手である──
「桃華ちゃんは、不思議に思わなかった? この病棟に同期、ひとりもいないでしょ?」
「確かに。でも病棟一か所に新人1人だと思ってました」
「やっぱり、何も知らないでここへ来たのね……」
「えっ? 何かあるんですか? あっ、やめておきます。知らない方が良いこともありますもんね」
「知ってる方がいいこともあるけどね」
そういうと、泉先輩はナースステーションにやって来た患者さんの家族のもとへ向かった。
(泉先輩、何が言いたかったんだろう?)