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Aランク・戦慄のザフィーネ

 あれから一月……体は順調に回復しているものの、最後に食らった一撃がやばすぎて、生きてるのが奇跡レベルらしい。また服に助けられたかな。


 俺の身につけていた伝説の服は、自己修復機能を持つ。それは、服自体だけでなく、装備している人間の体も修復する。勿論、ダメージ軽減もする。


 生きてるのは、そのおかげだろう。


 俺の冒険者ランクはEランクになっていた。魔人討伐の話はクロードがしたらしいが、完全に消滅してしまって、何の証拠もない為、ランクの審査からは除外された。


 単純にCランクの遺跡を最下層までいって、戻ってきた。まあ、瀕死の状態だったことも考慮してワンランクアップという所にギルドの評価は落ち着いたらしい。


「よう、穴空き野郎」

「あっ、穴空き野郎だ!」


 腹に大きな穴開けて戻ってきたせいか、穴空き野郎とかいうあだ名がついてしまった。嫌すぎる。


「おはよう、穴空き野郎」

「……広めたの、お前だろ」


 にやけた顔で俺を見るスィーロ。


「あれ、バレちゃった?」

「当たり前だ! このゲロ女ッ!」


「誰がゲロ女よっ!」

「お、また始まったぞ! やれやれーっ!」


 現在、酒場にて食事中だ。朝っぱらから酒飲んでる男連中ばかりか、煽りやがる。


「それより、これ見て。これっ」

「ん?」


 スィーロが見せて来たのは、Eランク冒険者の証明書だった。


「いつのまに……」

「へへーん、私だってやれば出来るんだからっ!」


「どうせ、クロードのおかげだろ?」

「違いますっ!」


 いつの間にか、砕けた話し方になってきてるな。スィーロの奴。ま、一ヶ月も経てばお互い、馴れ馴れしくもなるか。


「そういえば、クロードの奴はどうした?」

「クロードなら、稽古場で自主練してたけど」


「こんな朝から、よくやるよ」

「アルドのせいで、クロードに火がついちゃったんだよ。僕は今、最高に燃えてるんだとか言ってた」


 クロードがいなかったら、俺は死んでいた。それは間違いない。命の恩人って奴だ。恩には恩で返さないと行けないな。師匠ねぇ……柄じゃねえなぁ。


 そもそも俺は、たしかにそれ相応の実力とか、経験はあるかもしれない。が、勇者による世界のエネルギーを受けているわけで……それを説明するべきなのか、どうか。した所で理解してくれるのかどうか。幻滅されるかもしれないな。もしかしたら。


 知らなくていいことは、知らないままでいいってこともある。

 真実を話すだけが、優しさじゃないってことだ。嘘も時にはつかないといけない。


「おい、あれ……」

「あぁ、間違いない……戦慄のザフィーネだ」


 戦慄のザフィーネ? なんだか、周りが騒がしくなっていた。


「嘘っ! 戦慄のザフィーネって……Aランクの!?」


 スィーロも驚いていた。俺には全くわからん。蚊帳の外だ。


 そのザフィーネとやらを見てみると、胸元が開いたエロいドレスを着ていた。真っ赤なドレスでこれ見よがしに主張している。あんな格好で戦うのか? 普段着か? いや、普段着でもアウトだろ。ああいう格好しているやつって恥ずかしくねえのかね。


 胸を見ていたら、いつの間にかザフィーネと眼が合ってしまった。やっべ、気まずい。視線をそらすと、何故かスィーロの奴も機嫌が悪そうだった。


 ああ、なるほど。胸か。お世辞にもスィーロの奴は胸が大きいとは言えない。まな板といってもいいほどだ。そりゃ、機嫌も悪くなるわなー。


 再度、俺がスィーロに視線を向けるとぷいっと顔をそらした。おや、もしかして……ヤキモチ、なわけねえよなぁ?


 子供が30の男相手にそんな感情抱くわけねえもんなぁ。クロードなら、まだしも。

 あー、胸見てた俺がはしたないとか、そういうことかな。あいついいとこのお嬢さんらしいからなー。そういうことか。


 なーんて、考えていたらつかつかとザフィーネが俺の前までやって来ていた。


「貴方がCランク遺跡の達成者かしら?」

「え? あ、ああ……まあ、一応?」


「ふぅん……冴えない男ね。あの遺跡の深部には魔の者がいたはずだけど、この様子じゃ、倒したというわけでもないのかしら、ね」


 なるほど、さすがにAランク冒険者というだけあって貫禄があるというか。魔人がいたことも知ってたというわけか。十年間誰も寄り付かなかったのは、上位の冒険者間では、情報が出回っていたから、ということだな。


 それより低い冒険者は途中で死んで会うこともそもそもないだろうし。

 何にも知らない俺が最深部までのこのこ到達してしまったわけだ。


 で、こいつは俺が本当に魔人を倒したのか、探りを入れに来たわけか。こういう駆け引きってめんどくせえんだよなぁ。倒しましたーってハッキリ言ってもいいんだが、あいつを操っていた謎の存在に、伝説の剣の在り処等、あまり表に出したくない情報も多い。


 まあ、あの剣はそもそも俺以外に扱えないはずだが……。いや、この世界にも勇者はいたか。金髪野郎……あいつならわからんな。同じ属性といえばそうだしなぁ。


 会ったこともない奴の心配もしてもな。


「あー、魔人は……」

「倒しましたよ?」


「おぃいいいいいいいいいいいいいいいいっ!」


 なんで、お前が話しちゃうの! ほんとこの嬢ちゃん、空気読めねえでやんの。


「貴方が?」

「いえ、そこの人が」


 俺に向かって指をさすスィーロ。


「へえ……」


「あー……」

「あー……」


「……倒しました」


 言っちゃった。


「おい、魔人を倒したってマジかよ! 最深部のっ!?」

「てか、魔人って何っ?」


 外野も騒がしくなってきた。マジ、めんどくせえ。


「まあ、ほら。でも、証拠とかないし? 嘘かもなー」

「戦ってみればわかるんじゃないかしら」

「へ?」


「貴方の実力がどれほどのものか、見させて貰うわ」


 おいおい、どうしてそうなる。冒険者ってアホばっかなのか? 熱血野郎なのか? 拳で語ってもわからねーよ。


「いやー、Eランクの俺が、Aランクのザフィーネに勝てるわけないからー」


 どうにかこの場を収めようとする俺。が、なぜか逆効果。

 プライドが高いのか、その発言にカチンと来ちゃったみたいで。


「随分と舐めきった態度ね。いいわ、来月開催されるシルビア魔法武術大会に出なさい。そこで、戦いましょう。待ってるわ。逃げたら、貴方はこの町で生きていけないようにしてあげるから」


 そういって、去っていった。どうしてこうなったっ! どうしていつも、相手の神経を逆なでしてしまうのかっ!


「頑張って下さいね」

「お前のせいだぞっ!」

「え、何がですか?」


「わかってないところが、マジでイラつく……わかってやってても、イラつくけどな!」


 別にでなくてもいいんじゃないか? ほっとけば……。あー、でも最後になんか言ってたな。この町で生きていけないようにとかなんとか。


「なあ、あのザフィーネって奴。ここじゃ、そんな偉いのか?」

「はい。この町の領主の親戚の娘です」

「おい。アウトだろ。その情報、先に言えよ」


「え、誰でも知ってますよ?」

「俺は知らねえんだよっ!」


「あぁ、アルドは田舎者でしたね……」

「田舎者じゃねえ!」


 くそっ! 俺は机を思いっきりぶっ叩いた。その結果、食事がスィーロの顔面に炸裂し、机も亀裂が入って折れた。弁償するハメになった。スィーロには、一時間ぐらい説教を言い続けられた。ああ、もう。何もかも最悪だっ!


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