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n番煎じの異世界転生  作者: ココちゃん
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第52話



氷結採集が、魔物の素材集めにおいて非常に有効であると、アビエルのお墨付きを貰った後、たいして歩くまでもなくスライムが次から次へと集まってきてくれたので、全部凍らせてアビエルに貢いだ。


さすがにスライム相手では、剣を振るうことも出来ず、レオンは主に凍らせたスライムを樽の中に運んでくれていた。

前の国では騎士団長かなんかだったらしいのに、文句ひとつ言わず、農作業やら雑用やらを黙々とやってくれるレオン、ほんといいひとだ。好き。


アビエルはホクホク顔で、なぜスライムの素材が必要なのか超専門的に説明してくれている。


訳すと、冷凍保存だと素材がより新鮮に保たれるため、有効に利活用出来るんだそうだ。

こっちには冷凍保存の概念がなかったのかな?

暮らしの知恵なのに。



「案外、早く終わったね」


どうなることかと思ったけど、大変だったのは1階層の小一時間の歩きと、8階層分の縄ばしご降りくらいで、時間も家を出てからまだ3時間も経ってないと思う。

物理攻撃が効く魔物は、レオンが息をするように倒したし、スライムは、私が片っ端から瞬間氷結した。

アビエルはホクホクしながら、欲しい素材を注文していて楽しそうだった。


でも慣れないダンジョン歩きは、精神的にも疲れたので、もう帰って休みたい。




「そういえばリリ、10階層の小部屋に行きたいって言ってなかった?」


「あ」


そういえば、そんな話をアビエルにしたね。

ここにこうして来てしまったのも、それがきっかけだったね。


「行く?ここから2階層下だけど」


「どんな魔物がいるの?」


「10階層には殆ど魔物いないんだよね」


「そうなんだ?」


「少し奥に行った所に、小部屋っぽくなってる場所があるって言ったでしょ?」


「うん」


それそれ。そこを開けるとかいう依頼だったよたしか。


「そこを中心に、対魔系の魔力が滲み出てきててね。弱い魔物は近寄れないんだ」


ほほー。


「強い魔物なら大丈夫なの?」


「大丈夫かもしれないけど、わざわざ居心地の悪い場所には居たくないよね、魔物も」


そりゃそうだ。


「魔物いないなら、行ってみようかな」


好奇心は猫も殺すって言うけど、せっかくここまで来たし、行ってみたい。サクッと行けそうだしね。

あとまたここまで来るのも面倒だし?


「それじゃ縄ばしごの所に戻って降りるよー」


「はーい」


元々、そんなに奥へは行ってなかったので、縄ばしごの結界へはすぐに到着した。

そこから2階層分降りる。

帰りは10階層分登らないといけないんだなーと思いつつ。

多分、降りるより登る方が簡単だよね。多分だけど。


縄ばしごを降りるのも慣れたので、サクッと目的階に到着した。



「なんか空気が違うね」


なんとなく他の階層より、どんよりしてなくて、さらっとしてる。


「リリ、わかるの?」


「なんとなくね」


何がと言われると厳しいけど。


「他の階層よりも空気が澄んでいるな」


レオンが辺りを見回しながら呟く。


「あー、そうそう、そんな感じ」


「レオンもわかるの?さすが聖女様の息子だね」


その瞬間、レオンの纏う空気が揺れる。


へー、レオンのお母さんて聖女さんだったんだ。そういえば、光魔法使えて、精霊獣もついてたって言ってたもんなー。


やっぱりいいとこのおぼっちゃまだったのかも。レオン。



「母を知っているのか」


揺れたのは一瞬だけで、既にいつものレオンに戻ってる。


「小さい頃に一度だけお会いしたことがあるよ」


マジかー!すごいご縁だね!

レオンのお母さん、どんな人だったのかな。


「そうなのか」


「うん。まだ僕が帝都に居たときに、聖女様がソメス国の親善大使としてみえられてね。

僕は一応長男だから、父上の名代として参列させていただいたんだよ」


あれ?ひょっとしてアビエルは、かなりいいとこのおぼっちゃま?


「そうか」


「とても生き生きとして、美しくて素敵なお方だったのを覚えているよ」


「そうか」


「アストリアとの戦争では、あんな酷いことになって、…聖女様をまるで道具のように扱って、とても許せないって思ったんだ」


「…」


あれ?えっと、たしか昔、聖女さんを巡って戦争があったって言ってなかった?

レオンのお母さんを巡って戦争があって、レオンとお母さんの母国ソメスが敗れて無くなって、レオンは母国を負かした国アストリアの騎士になったってことか。マジか。


お母さんも亡くなったって聞いたから、多分、どこかの時点で不幸なことがあったんだ。

そして、ついこの間、そのアストリアも戦争に負けて無くなった。波乱の人生だよこれ。


あれ…この話題って地雷じゃないの?大丈夫なの?



「それで、治癒とかの魔道具があれば、あんなふうにはならなかったんじゃないかって思って、魔道具の研究を始めたんだよ」



「…そうか」


無表情で相槌をうっていたレオンが、一瞬、目を瞑って揺らぎを隠した。



「治癒のシステムはとても難しくて、まだ全然なんだけどね」


苦笑いをしながら研究の話をするアビエルを真摯に見つめるレオン。


おー、なんか芽生えた感じだ。いいね!



「その研究が実用ベースに持っていければ、リリの身も少しは安全になるだろうな」


え、私?突然私?



「そうだよね!頑張るからこれからも協力してね」


「ああ」


なんか、アビエルがレオンの心の地雷源ギリギリの所まで触れて、相互理解と信頼が得られたみたい。


男の友情ってやつ?いいねいいねー。

私なら怖くて踏み込めないな。


河川敷の土手で、拳で殴り合いをしながら、ゴロゴロ転がって笑い合うやつだ。


コブシの代わりにコトバで殴り合ってたけど。


青春ってやつだなー。すごいなー。




「はい着いたよー。ここが小部屋っぽい場所だよー」


そうこうしているうちに、目的地に着いたようだ。






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― 新着の感想 ―
[気になる点] 領主の庭にあるというダンジョンの裏口からこっそり入ることに疑問を持たず、断った依頼の小部屋に「興味本位」で近づくのね。 主人公は一貫して「君子危うきに近寄らず」というスタンスできたの…
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