第38話
今朝もわりと早起きをして、庭の精霊樹にポーションやりをする。
アビエルは、ここまで大きくなったら、もうポーションあげなくても大丈夫って言うけど、なんとなくこの精霊樹は、欲しがっている気がするのだ。
もちろん、木がしゃべるわけじゃないから、そう言ってたのを聞いた訳じゃないけれど、精霊樹の周りに漂っている精霊さん達は、木にポーションをかけると、エフェクトみたいにキラキラして、喜んでいるように見えるんだよね。
キラキラはとてもキレイだし、喜ばれていると思うと、自己満足に浸れるから、これからも毎日続けようと思う。
こんな風に、精霊樹にポーションあげながら、まったりと考え事するのが好きだ。
それはいつもとりとめのないもので、例えば、夕食の献立であったりとか、もっと美味しいものが食べたいな、とか、お掃除しなきゃな、とか、狩りのこととか、魔法のこととか色々。
精霊樹の泉は、マイナスイオンぽいのが出てるので、考え込んでも、それほどマイナス思考に陥らないようなのだ。
いやーほんと、一家に一本だよね精霊樹。
急にこんなに大きくなっちゃったけど、色々と無理してないかな?
そんなに急がなくていいからね?
ゆっくり大きくなろうね。
いやほんと、この場所は居心地がいいよね。
起きたばかりだけど、ここで二度寝してもいいよね。
精霊樹にもたれかかりながら、 ウトウトと目を閉じる。
眠りと目覚めの間で、少し肌寒く感じる。
毛布とか欲しいかも。フワフワっとしたやつ。
とか、夢うつつで思ったかもしれない。
寝ぼけながら気付いてみたら、モフモフでした。
「ねえ、リリ、その子どこから連れてきたの?」
精霊樹の木陰で、二度寝をしていた私を、アビエルが起こしに来てくれた。
「んー、わかんない」
精霊樹の木の下で、アビエルが見たものは、白い大きな獣に、包まるようにして寝ていた私でした。
もうね、モフモフなんだよ。
異世界と言えばモフモフでしょう。
「その子、精霊獣でしょ?リリが使役してたんじゃないの?」
「いあ、初めて見る子だよ」
こんな大きい動物、連れてたらわかると思うんだけど。
見た目は、長毛種のホワイトタイガーのタビーが無くて、真っ白な子。
出会い頭に襲ってくる魔物とは、雰囲気が全然違って、どこか神々しい。
あと、慈愛に満ちた気持ちが伝わってくる。
この子は、私のことがすごく好きみたい。
昔、猫飼ってたからわかる。
飼い主に向ける100パーセントの信頼。
そして、アビエルに対して警戒している。
「どう見てもリリの精霊獣だね。その子に、僕はリリを決して傷つけないって教えてあげて?」
「どうやって?」
「普通に話せば通じるんじゃないかな。僕も、精霊獣は、本からの知識しかないんだ」
「しろもふさん、アビエルは身内だから怖くないよ」
理解してくれたようだ。
威嚇の気持ちが収まった。
「しろもふ?それがこの子の名前なの?」
「え?」
そんな適当な名前、気の毒じゃないですか。
「名付けの行為は、精霊たちとの契約儀式とも言われてるから…いま契約成立したのかな」
えー!
しろもふさんでいいの?!
ワサワサと長くてフサフサな尻尾を揺らして、ご機嫌な気持ちを伝えてくる。
どうせならもっとカッコいい感じの…。
ほら白虎とか…。あと3頭集めて四方に配置する感じの。
「リリってホント面白いよね。リリといると長い時間変化のなかったものが、次々と動きだすよ。大好き」
アビエルは、キラキラとした視線を、精霊獣のしろもふさんに向けている。
しろもふさんを、実験材料にしたらダメだからね?




