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n番煎じの異世界転生  作者: ココちゃん
29/55

第29話




「こんな感じのデザインでいいかな?」


「や、防具なんだから、肌を露出させるのはダメだよね?」


「えー」




防具のお店に来ました。


前にレオンと行った冒険者ギルド付近のお店ではなく、アビエルの知り合いの人のお店です。

なんでも、アビエルのお姉さんもここで防具を作って貰ってるとのこと。


アビエルのお姉さんも、冒険者ギルドに登録している冒険者で、強い人らしいです。


在庫商品から買うのではなく、オーダーメイド。お金足りるのかな。


そもそも防具というのは、身につける人の命を守るためのものなので、身体に合わせて作るのが常識らしい。


そんなに安いものでもないので、作り置きの商品もない。たまに、防具を更新したお客さんの、中古品を下取ったというものを置いてあることもあるが、それも割と良さげなものであれば、顧客に、こんな出物がありますよと連絡して売りさばくものなんだそうだ。


それなら私よりレオンの防具をちゃんと作ってもらわないと!


と、主張してみたら、レオンから、頼むからちゃんとした防具を身に付けて欲しいと懇願された。でも前衛はレオンなんだよ?


「一番保護すべきお腹の部分を露出させる意味ってあるの?」


アビエルが、カタログからチョイスしたデザインは、ビキニよりは肌が隠れるけれど、胸元とお腹の部分が保護されていないもので、所謂、アニメとかの戦うヒロインが着ているような、見た目が防御力的に不安のあるものだった。コスプレだよねこれ。



「錬金術で頑丈に保護出来るから大丈夫だよ。マントも羽織ってもらうし」


「それなら、普通の服に錬金術かけてくれればいいんじゃない?」


「布には強力な防御の魔術が定着出来ないんだよ。魔力強めの魔物の革とかじゃないとダメなんだ」


「なるほど」


一理あるな。


「うん。だから可愛いデザインでも大丈夫だよ」


アビエルは、なぜか執拗にアニメヒロインデザインを推してくる。


「でもお腹出す必要性感じない」


「えー」



「そんなにそのデザインが好きなら、アビー坊や用に作ってやるよ?」


「僕が着てどうするんだよ。これは女の子が着てこそ映えるデザインだよ?

あと、アビー坊やって呼ぶのやめて」


「なぁに、一人前みたいな口きいてんのさ。坊やは坊やだろ」



防具のお店の店主さんは、職人気質な姐さんだ。


生産職の割には、実用的な筋肉がピシッとついていてカッコイイのは、材料の革を自分で取りに行くからだそうです。


「で、このデザインでいいのかい?」


防具屋の姐さんは、ぐいぐいっと近づいてきて、アニメヒロイン防具のデザイン画を指差した。


「いえ、出来れば急所や、弱い場所を守ってくれるデザインが良いです」


隣に座っているアビエルが残念そうな顔をしているが無視だ。


「そうだね。アビー坊やの錬金術の腕はたしかだけど、わざわざ急所を露出するような防具を好んで着る奴なんてアンタの姉さんくらいしかいないだろ」


なるほど、アビエルのお姉さんの防具のデザインだったのか。



「姉上が着るとアレたけど、リリが着たら可愛いと思うんだ」


「この子は、アビー坊やの大事なコなんだろ?」


「もちろん」


まあ、ただの奴隷契約したご主人様ですけどね。


「だったら、ほんの僅かでも防護力を上げた方がいいんじゃないのかい?」


「それはそうだけど…うーん、仕方ないなあ」


しぶしぶ普通っぽいデザインから検討してくれる気になったようです。


「この、身体にフィットした動きやすいデザインがベースで、左腕は腕輪するから半袖で、右腕は七分袖ね。両腕ともにアームカバーも欲しい。それに長手袋もね。

丈は腰までのチュニックにして、太いベルトで留める。ベルトにはポーチ2つ付けるから。

ズボンは膝下までの丈で、膝上までのブーツ履くから」


アビエルがスラスラと注文していく。


「了解。錬金術は、裁ち縫いの前に仕込むんだろ?革は持込みかい?」


「うん、これを使って。既に錬金術は施してあるんだけど、更に術を入れるから、仕上がる前に教えて」


「うわ、これ…うーん、たしかにあのデザインでも大丈夫だわ」


アビエルが、魔法のかばんから取り出した革を見て、防具屋の姐さんが唸りながらブツブツ言っている。


「あとこれでマントも作って。フード付きの作れるかな?」


「うわ…これドラゴンの」


なんかファンタジー生き物なワードが。


「これも仕上げの前に術入れする」


「了解した。今は他の注文受けてないからすぐ取り掛かる。腕がなるわ」


「よろしく」


たぶん、すんごい装備が完成する。怖い。


狩りセーブして、ポーション職人になろうとか少しだけ考えてたけど、無理だ。

しばらくはアビエルが錬金術で使いたい素材とか優先的に採ってこないとダメなやつだ。


「これで安心して狩りに行けるな」


レオンも満足そうです。

でもとても心配なことがあります。


「怖くて聞けなかったんだけど、代金は出世払いとかにしていただけるんでしょうかね?」


絶対高いよね!値段聞いてないけど!


「え、材料持込みだし、錬金術は僕が仕込んで調整するし、そんなにかからないよ?」


「そうなの?」


それって甘えていいものなの?


「でもそれアビエルの財産だよね?」


素材も役務も。


「僕はリリの奴隷だよ?僕のものはリリのものでしょ」


心底不思議そうにアビエルが言う。


マジで?


でもレオンもうんうんと頷いてる。

そういうものなの?

奴隷の契約主ってすごくね?


「奴隷は財産は持てないし、個人で契約も出来ない。身体も含めてすべて契約主のものだよ。

そのかわり、奴隷が行ったことの全ての責任は契約主にある」


「え、私は、私の能力を口外しないでくれさえしたら良いんだけど」


「タメだよ。僕らはリリのものなんだから、ちゃんと管理しないと」


そうなのかあ。


冒険者ギルドで、さりげなく情報収集したところ、この世界の奴隷制度は、一部の犯罪奴隷を除き、人権が保障されている。


犯罪奴隷以外の人身売買は原則禁止。

だから、借金のカタに子どもを売るとかはアウト。

どういう人が奴隷になるかというと、敗戦国の難民が主らしい。

一応、敵国の人間てことで、復讐とかしないように魔法で行動を縛るのが目的で、その人たちは勝利国の労働力として、あくまでも人道的に扱われる。

下っ端の兵隊さんなんかも、それに準じた扱いなんだけど、地位や責任のある職についていた人は戦犯として、犯罪奴隷並みに扱われるらしい。レオンがこれ。


奴隷商人は、奴隷の出入りをきちんと国や領主に報告する義務があって、それを怠ると厳罰が与えられる。

ちなみに、私が、レオンとアビエルを奴隷登録したことは、売買した訳でもなく、他国に連れ去った訳でもなく、奴隷本人が色々納得しているので問題ない。


あと、奴隷商人の証のペンダントも、強奪した訳じゃないから、そのまま持っていても良いとのこと。むしろ悪い人に転売すると罪になるらしい。


とりあえず、奴隷商人の証のペンダントを入手してしまった顛末を冒険者ギルドに相談したら、商業ギルドで奴隷商人として登録されてしまった。


町に奴隷商人が存在することは、大変便利らしく、とても喜ばれた。うーん、微妙。


この町で、犯罪奴隷の罰が相当と判断されたら呼ばれるそうです。


ちなみに、殺人などの重犯罪は即死刑。

性犯罪は、男性の場合は、性器を切り落とした上に犯罪奴隷。シンプルです。




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