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n番煎じの異世界転生  作者: ココちゃん
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第22話





オーガは強そうだったけど、1体ならなんとかなるって思った。


レオンが、攻めあぐねているので、弱めのカミナリ魔法で動きを止める。

間違ってレオンに当たっても、ヤケドで済む程度のやつ。

私のカミナリ魔法は、相手の頭上で発生させるので、ヘイトをとらないという長所がある。


これ地味に使い勝手がいいのだ。

何より、ヘイトをとらないのでレオンが余計な心配せずに戦える。


すかさず、レオンが大剣で切り込む。

オーガの身長が高く、首をチョッキン出来ないので、足の腱を切り、膝をついた所で、首を刎ねる。お見事。


なんとかなったね。


助けを求めていた人を見下ろすと、両手がもげていて、足も片方ちぎれそうになっていた。これは戦えないね。血が出過ぎ。

私なら心が折れてる。


とりあえず、ただのヒールを使って血止めなどの応急処置を行う。

もちろん、ただのヒールでは、ぷらぷらした足はくっついたりしない。


「…治癒師か。助かった」


この世界の人って、メンタル強い。

血をたくさん流して両手がもげていても、正気を保って、ちゃんとお礼が言えるんだね。




「一応、腕を拾ってきた」


レオンが、腕もげさんの散らばっていた両腕を、どこからともなく探して持ってきてくれた。


「僕の腕…もう、何も出来ないのか…」


オーガと戦っていた腕もげさんは、呆然とした顔をしてレオンが持っている二本の腕を眺めている。


命が助かると現実に目がいくよね。


見たところ、レオンと同じくらいかもう少し若いくらいの年齢。

白髪?プラチナブロンド?の髪を無造作に後ろで一纏めにしている。


オーガと戦っていたにしては、体格はひょろくて、たぶん魔法使いなんだろうけど、一人で二体の魔物を相手にするとか無茶というより無鉄砲だ。

自分の実力を的確に測れないで、無謀な戦いを挑む人とは、正直関わり合いたくないな。

最悪、巻き込まれ死するからね。


でもこの人は、悪い人には見えない。勘だけど。


さてどうしよう。

腕、たぶん魔法でくっつく気がするけど、きっとそれやったら奇跡になる気がする。それは避けたい。


かと言って、このまま置いていけば、他の魔物に殺されるの確実だから、助けた意味がなくなる。


いい人そうなんだよね。

出来れば、助けてあげたい気がする。


どうしようかな。


よし、ササっと治療して、パッと去ればいいか。通りすがりの良い人的な感じで。


エクスポーションぶっかけコースだな。



「リリ、待て」


「ん?」


こっそりと最高級の治療薬を大量にぶっかけようとしたら、レオンから待ったがかかる。


通りすがりの良い人計画が、バレた。



「それ以上の治療をするなら、こいつと奴隷契約をしろ」


なるほど、奴隷契約か。その発想は、なかった。


扶養家族増えるのは大変かもだけど、このまま放っておくのも後味悪いし、なんとなく助けたいなって思うし、そうしよう。


さすがレオン。できる男。



「それ以上の治療って…?」


腕もげさんの、レオンの言葉を復唱する声に、少しの希望が見え隠れする。


そのまま良い子でいてね。


「私はリリ。貴方の名前は?」


「アビエルだよ。…リリは、聖女なの?」


聖女の定義がわからないので、質問にはスルーして、要件だけを伝える。


「私の奴隷になりたいですか?」


なんか凄いセリフになってるけど、それ以上でもそれ以下でもないから。


「…リリは、奴隷商人なの?」


質問を質問で返すのは嫌い。

答えないなら、会話を進めるまでだ。


「一応、血は止まってるし、今すぐは死なないと思うけど」


私に、この人を助ける義務はない。


見殺しにすれば、良心の呵責はあるけれど、たまたま同じ時間に同じ場所にいただけの人だ。


普通に他人なのだ。


冒険者ギルドでは、一応、冒険者同士、みんなで助け合いましょうってなってるけど、私たちを助けてくれた冒険者はいない。

だけど、誰だって自分の命が一番大事なんだからそれでいい。

余裕がないような人が助けようとしても共倒れになるだけだしね。



「…奴隷にならないと何も教えてくれないってこと?」


肯定も否定もせず、じっと顔を見つめる。


これ以上、話すことはないよ?


「奴隷契約するの怖いけど、このままの状態だと確実に死ぬし、リリはそんなに嫌な感じもしないし、奴隷になるって言うのが正解なんだろうね…でも姉上達に何と言われるか…」


アビエルと名乗った腕もげさんは、何かブツブツ言いながら考えこんでいる。


死体目当てに他の魔物来るかもしれないから、悩んでる時間はないよ?


「私の奴隷になりますか?」


最終通告です。


判断が遅さは、死に直結するよ?

いま、少しだけ、黒いオーラ出たかも。

私、待たされるの嫌いなんだ。



「…リリの奴隷になるよ。だから僕を助けて」


泣きそうな顔をして私の顔を見上げる腕もげさん、もといアビエル。


「わかった」


首に下げている奴隷商人の首飾りを服の中からジャラリと取り出す。


「奴隷商人の首飾り…ほんとに奴隷商人なんだ…」


アビエルは、驚いたように首飾りを見ている。


レオンがナイフを持って、アビエルに近づき、健康な方の足を切り裂く。


「うっ」


奴隷登録のやり方を知っていたのか、アビエルは文句も言わず、足から血を垂らしている。

奴隷商人の首飾りに、アビエルの血を注いでから、ヒールをかけて治療する。


アビエルはほっとしたように息を吐く。



「この者の全てを、私が支配する」


私の厨二っぽい固定の宣言の後、アビエルの首に首輪のような奴隷紋が現れる。


私がレオンに左手を差し出すと、そっとその手をとり、ナイフを入れる。

痛いんだよこれ、登録の度にリスカとかほんとイヤなんだけど!出来れば奴隷商人辞めたい。


心の中でひとしきり文句を言ってから、奴隷商人の首飾りに、自分の血を注ぎ、アビエルの口に持っていく。


アビエルは大人しく口を開き、私の血を飲む。


「血、飲んだの初めて。なんかゾクゾクするね」


アビエルは少し嬉しそうにしている。あれ…?まさか、変態さんか。


アビエルの首から、首輪のような奴隷紋が消えて、腕に二枚の羽のような模様が浮かび上がる。


これで奴隷契約終了。


「これがリリの紋かぁ。羽とか珍しいね」


珍しいも何も、私は他の模様は見たことがないので、これもスルー。

ていうか、アビエルはショックだったりしないのかな。奴隷だよ?


みんなどんだけ奴隷堕ちする気だよ。

はしゃぎ過ぎだよ。



…まあいいや。


「レオン、手伝って。まず右脚くっつけるように支えて」


奴隷契約終了後、直ちに治療作業に入る。


「痛くてもじっとしてて」


今回はヒールの魔法で治してみようと思う。

レオンで、ポーションの有効性は検証されたしね。


よし!まずは骨から。

そして血管、神経、筋、肉、最後に皮膚を、全て繋いで貼り合わせる。

人体模型をイメージしてみた。

魔法はイメージだって、レオンが言ってたしね!


同じようにして、右腕も左腕も。


医療行為というよりは、作業。工作?


全部くっつけ終わって最後にピュリファイする。感染症とか怖いからね。

ついでに自分とレオンにも。




「これは凄いね。奴隷登録しなければならないのも納得するよ」


終始呆けたような顔をしていたアビエルが、ピュリファイ後の清潔な姿で、感動するように呟く。


「あんな大魔法を詠唱もしないで何度も使って、魔力枯渇はしてないの?」


そして子どものような、好奇心いっぱいに顔を輝かせて私を見上げる。


きっとこの人は、とても純粋な人だ。

それ故に、危険なところもある人だ。



「ああ、でも本当にありがとう。手足が元に戻るなんて信じられないよ。義手作るにしても、両手がないと無理だからね。…もしもの時のために自分用の義手とか義足、作っておかないとダメだね!あ、リリのも作ってあげるからね?」


アビエルは、にっこり笑って言う。

うん。私の人物鑑定、間違ってなさそう。


「義手、作れるんだ?」


この世界の、技術水準がどの程度なのかも知りたい。



「うん。僕は錬金術師だからね」


ファンタジー職きた。



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