第19話
「リペアとピュリファイって便利な魔法だよね」
「貴重な光属性の聖なる魔法であって、生活魔法ではないはずなんだがな」
値切って買ったマジックマントに、状態異常回復と浄化の魔法かけたら新品みたいになった。
埃っぽくて燻んてだ黒っぽい布は、少し光沢が入って滑らかになった。
錆びついてたような留め金も、ピカピカになった。
「やっぱりレオンに似合うー」
元々、ふとした動作とか、立ち姿とかが、シュッとしてて、只者じゃないオーラを醸し出していたレオンは、黒いマント効果で、さらに偉い人みたいになった。とても奴隷には見えない。
ちなみに、レオンが奴隷だという印は、腕の翼の形のイレズミみたいな奴隷紋だけで、服を着ていれば隠れるので、レオンが私の奴隷という事実は、冒険者ギルドの人くらいにしか知られていない。
別に隠しているわけでもないが、言いふらすほどのことでもないからだ。
あと、この国では、たとえ奴隷だったとしてもどうということはないらしい。
酷い差別があるわけでもなくて、せいぜい、家督を継げないとか、冒険者登録が出来ない程度の、区別しかないんだそうだ。
性別も身分も年齢も、区別はあるけど差別がない。ふつうに実力主義で、男社会に無害さをアピールしなくても良いのだ。精神的に楽で、とても暮らしやすい。
特に辺境の町では、常に人手不足なので、奴隷のような、制約付きの労働者はむしろ大歓迎ということらしい。
「お前、最初から俺に装備させるつもりだったな?」
「だってそれ、私には大きいし、重いもの」
「結局、お前の防御力は上がらないままなのだがな」
「いいじゃない。レオンが前衛で戦士なんだし、元々私は攻撃食らったことないし」
「今までの相手ならな」
「別に食うに困ってるわけでもないし、無理して強い相手を敵にしなくてもいいよ」
「それはそうだが」
「それに、装備が重かったり身体に合わなかったりしたら、集中出来なくなって、探索が上手く出来なかったら本末転倒じゃない?」
「たしかにな」
「納得していただけたのなら、武器屋の店主さんと約束した素材を集める算段でもしよ?」
「わかった」
定宿にしている『森のこりす亭』から、冒険者ギルドへ向かう。
今日は調べ物の日にするので、のんびりとおしゃべりしながら歩く。
「『森のこりす亭』は、ごはんもそこそこ美味しいし、良いんだけど、毎日銀貨8枚かかるのが微妙だよね」
「そうだな。悪くない宿だが、やはり夜に側に付けないのが問題だな」
「かと言って、同じくらいのお値段のとこは、ごはんが美味しくなかったり、二部屋とるのが難しいよね」
「そうだな。俺は一部屋の方がいいがな」
「え、イヤだよ。イビキとかかいてるかもしれないし。あと寝言とか言ってるかもしれないし」
「それは気にすることなのか?」
「するよ!」
「もっと他に気にした方が良いことがあると思うがな」
レオンがくつくつと笑いながら呟く。
出会った頃より、レオンはよく笑うようになった。なんか平和な感じがして、こういうのがずっと続けばいいと思う。
知ってる人もいなくて、魔物とか魔法とかがいる訳の分からない世界に突然来てしまったけれど、身近に疑う必要のない人が存在するから精神の安定が得られてる気がする。
「この町に暫く腰を落ち着けるなら、家を借りても良いのではないか」
「家っていくらくらいで借りれるの?」
「わからないが、宿よりは安いだろう」
「そだよね。でもごはん自分で作らないといけないよね」
「俺は野営で作るくらいは出来るぞ。味は保証しないがな」
「そこは保証しようよ」
「お望みなら努力しよう」
「期待してます」
家を借りるとか、ここでの生活が、だんだんと通常みたいになってくる。




