第16話
「Eランク冒険者になったらオークとかトロルをメインに狙うと良い、と書いてある」
冒険者ギルドの資料室の、『冒険者のススメ』という本をレオンに読んでもらった。
今は、クラスごとの適性魔物というページだ。
「私たちって本当にEランク冒険者の実力あるのかな?」
「わからんが、リリはもっと上の冒険者でもおかしくないと思う」
資料室のテーブルに二人並んで座って、同じ本を読む。
私がかぶりついて読んでいるのに対し、レオンは軽く肘をつきながら、長い足を組んで悠然としている。仕草イケメンめ。
「レオンの方が強いよ」
身体の作りが全然違う。
「たしかに俺は弱くはないが、リリはこのまま経験を積んでいけば、帝国でも有数の冒険者になるだろう」
「レオンの後ろからこっそり魔法撃つくらいしか出来ないよ」
「それは後衛という役割だからだ。お前の自己評価の低さはなんとかならんのか…いや、
たしかにそれくらいに思っていた方が良いのかもしらんな。俺らより強い奴はたくさんいるし、魔物は基本的に人間より強い。ゴブリン程度倒せるようになったくらいで調子に乗るなということだな」
「うん」
「自分が強いと勘違いした時が死ぬ時だしな」
「肝に命じようね」
「ああ…あと、他人の争いごとからは全力で回避するのも大事だな」
「実感こもってますね」
「俺の祖国ですらない国の王がやらかした争い事に、なぜ命をかけて参加しなければならなかったのか。今にして思えば、己の力を過信して、何でも出来るような気でいたのだ。若気の至りだな」
わー、やんちゃなレオン観察したかった!
「そうだね。喧嘩は自分が落とし前つけることが出来る範囲でやらないとね」
「こうしてリリと過ごしていると、初めて生きているという実感がわく」
「良かったね」
「ああ」
冒険者ギルドでまったりと過ごすのも結構楽しい。
資料室には誰も来ないし、チンピラ的な人とかが絡んで来ることもない。平和だ。
「で、次はオークとかトロルにするの?」
「倒せるとは思うのだが、その2種類とも大きめの魔物でな、さらにオークは肉が割と高値で売れる」
「あー、肉めんどくさい…」
「2人で1頭分ギリギリ持てるかってとこだな」
「私、力持ちじゃないから肉はやめとこ。肉獲ったら一旦帰るとか無理。トロルでいいよ」
「トロルは、食用ではないが、オークより強い」
「倒せそう?」
「1体なら大丈夫だろう」
「オークは群れるけど、トロルは群れないって書いてあるね?」
「よく読めたな、えらいぞ。トロルの魔石はゴブリンのものより大きくて買取価格も高いんだが、群れを瞬殺出来るゴブリンと比べると効率的に割に合わないかもしれない」
「大物倒す練習だと思えばいいよ」
「そうか。リリが良いならいい」
「いいよ!」
「それじゃあ、トロル討伐の依頼を受けてこよう」
「はーい!」
こうして私たちはトロルに挑戦することにした。




