第14話
「この辺のゴブリンて、全滅することってないのかな」
「わからん」
相も変わらず今日もゴブリン狩り。
レオンが片目から両目になって、見え方が違うらしくて練習中。
視界が広くなり、死角が狭くなったのは良かったのだけれど、感覚がかなり違うらしい。
そりゃあ、15年間慣れ親しんだ視界で、剣振り回してたんだもの違和感はあるよね。頑張れ。
「毎日かなり狩ってるのに、この安定した沸きって何だろう」
ゲームとかで定期的にポップアップしてるみたいだよ。
「魔物は闇の魔力から産まれると言われているからな。この辺りに闇の魔力の強い場所があるんだろう」
「町の人の安全のためには、そういう場所を浄化とかして撲滅させたら良いのかもだけど、生活に魔石が必要なら、適度に間引き程度に倒した方が良いってことだよね」
「そうなるのか?」
「だって、ゴブリンいなくなったら、町の人の魔道具使えなくなるんでしょ?」
「そうだな」
「町から徒歩1時間で、私程度の実力で安全に狩れる魔石って、これはもう資源だよね」
「リリ程度って、相当だけどな」
「肉が安く食べられるのも、町の近くで魔物の肉が安定して手に入るからってことだから、これも資源だと思うんだ」
「魔物が資源か」
「うん。だってレオン、アストリアよりこの辺境の町の方が物価が安いって言ったじゃない」
「そうだな。物によるが、肉や武器防具、魔道具などはこの町の方が安いし、品質も品揃えも良い」
「辺境の町って言う割には、治安も今のところ悪くないし、案外暮らしやすい感じだよね。しかも結構規模が大きい。町って言うより都市。大きなお城もあるし」
「他国や帝国の首都では、この町は変人の辺境伯が好き勝手やって治めている酷いところと言われていて、奴隷の中でもここに送られるのは死と同義語だったな」
「ガセネタじゃない?町の人たちも笑顔で暮らしてるよね?子どもも多いし、いい町だと思うけど」
「俺もそう思う。ここは、他の町から離れているので、一部の商人や冒険者くらいしか行き来しないから情報が正確に伝わらないのだろう」
そう、こんなに魔道具が発達しているのに、通信手段が手紙なのだ。
唯一、冒険者ギルドと商業ギルド、騎士団には、それぞれなんらかの通信手段を持っているとのこと。
でもきっと、魔法使いなら通信くらい出来るようになる気がするんだけどねー。
「そんなに離れてるの?」
「少なくとも、他の国って言ってもいいレベルで離れている。俺が帝国の首都からここまで来るのに2ヶ月はかかっているはずだ」
「馬車だとしてもちょっとかかり過ぎだね」
「それも、途中で魔物に襲われたり、山賊に襲われたりで、最終的には俺しかたどり着いていない」
「そういえばそうだったね」
「流通が難しいから、何でも自給自足出来るようになったのだろうな」
「色んなもの売ってるよね。あと、働いてる女の人が多い。騎士さんとか、鍛冶屋さんとか、商店の人とか」
「そうだな。他の地域はこんなに町で働く女性はいないかもしれないな」
「辺境伯さんてどんな人なんだろう」
「会ったことがないからわからないが、この町に住めば、そのうち見かけることもあるだろう」
毎日、ゴブリン狩りをしながら、とりとめのないお話をする。
近くには誰もいないので、秘密の話もしたりする。
それでも、周囲への警戒は怠らないよ。
「北方向に200mの位置に、ゴブリンが9体だ。雷魔法の射程に入ったら撃て」
「了解!」
前回は、撲滅させてしまったので、ヘイト実験が出来なかったんだけど、撲滅しない程度に撃っても、氷魔法みたいにすぐに魔物が襲って来ることはなかったので、安全に使える魔法として許可された。
ただ、大気中の影響を受けやすいのか、プラズマのコントロールが難しい。
威力を上げれば範囲が広がるんだけど、黒焦げになる恐れもあってまだまだ検証が必要。相手の強さにもよるだろうし。




