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騎士殺し  作者: つきよ
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一章 一話 空挺竜騎士団

~太陽暦1898年 帝都~ 幼い時、いくさから帰ってきた空挺竜騎士隊の姿をよく覚えている。 頑丈に守られている帝都の門から隊列をなしてきた空挺竜騎士の鎧は、敵の攻撃による凹凸や敵の返り血なのか自分の血なのかわからないがどす黒い血で染まっていた。そんなボロボロの空挺竜騎士たちとは対照的に、笑顔を帝都の民衆に振りまいている武装貴族の空挺竜騎士の鎧は、きらびやかな装飾でいっぱいだった。


その英雄達の姿を見た俺は、帝国を守る空挺竜騎士になると心に誓った。


~太陽暦1911年 帝都~ 夢の空挺竜騎士になる為に俺は、陸軍省空挺類3試験を受け、帝都にある陸軍省空挺訓練学校へ入校した。 ここの卒業者は主に陸軍省所属の空挺竜騎士団、空挺気球部隊、整備部隊に配属される。 この空挺訓練学校卒業時の成績により、自分の希望・適性にあった部隊に配属になるのだ。


卒業式は教場で行われ、一人ひとり教官に名前を呼ばれ配属先を発表される。 俺の番が回ってきた。 「ローシ=ミハイル二等陸兵!」 「はい!」 「貴様は、本日付けで、陸軍省ナチャーロ駐屯基地第201連隊気球分隊に配属を命ずる」 教場がざわついた。 俺は配属命令を書かれた紙を教官からもらい、自分の席についた。 なぜだ。本来この紙には空挺竜騎士師団への配属が書かれているはずなのだ。俺はあの憧れの空挺竜騎士になるために、空挺竜騎士の適性検査でも高得点だった。絶対に騎士になれると思っていた。


卒業式後すぐさま、新兵たちは同期に別れを告げ、汽車に乗り配属された部隊に向かう。 俺は汽車に乗る前に、なぜ自分が気球連隊に配属されたのか理由を聞きに行った。 教官室に入った俺は、部屋の入り口で教官を呼んだ。


「初任空挺科第265期3組、ローシ=ミハイル訓練兵です! マクドニア教官、お願いします!」 カツカツと軍靴の足音をさせながら教官が俺の前に来た。

「バカか、お前はもう卒業して二等陸兵だ!」

「はっ! 失礼しました!」

「で、用件はなんだ?」

「はっ! 先週行われた空挺竜騎士の適性検査の件で・・・」

「そうか、その件か。お前の適性検査の結果は、適性範囲だったな」


教官は珍しく眉間にしわを寄せて困り顔になり、すこし考えたあと口を開いた。

「ミハイルの成績は確かによかったのだが…」 普段ストレートな物言いの教官が、言葉を濁らせていた。

「お前の魔力はゼロだ。魔力がない者は、騎士にはなれないのだ」

「魔力がゼロ…」

「残念だが魔力がない以上、空には飛べない。気球部隊も立派な仕事だ、期待しているぞ」

「あ、ありがとうございます」 俺は唇を噛み締めながら、学校を去った。


俺は、配属される陸軍省ナチャーロ駐屯基地行きの汽車に揺られながら、窓の外の風景を見ていた。


「・・・」


この国が建国された古代と比べて、人々の魔力は弱まっている。杖を使って炎を出すなどの魔法を使う人間はごく一部になっており、その他大勢は、体に微量な魔力が宿っているぐらいだ。


「気球部隊か…鬼教官の最後の配慮ってやつなのか」


気球部隊は、連続射撃が可能な対竜砲が気球に装備され、主に帝都や基地の護衛についている部隊だ。敵の空挺竜騎士隊が攻めてきた際は、護衛任務を行う。 設立当初の80年前はそれなりの戦歴をあげた部隊だが、竜騎士隊が火器を使い始めた最近では、味方の竜騎士隊がくるまでの時間稼ぎだけの存在になり、敵の新米竜騎士のいい的になっている。 死亡率が高く、乗組員が3人必要なことから「空飛ぶ共同棺桶」など皮肉たっぷりな名称がついている。整備部隊にいくよりはましか…


俺は自分の略帽を目の上に置き、眠りについた。


汽車で揺られること約2時間。どうやら目的地である基地についたようだ。 俺は、基地の守衛に着任の旨を伝えたら将校室へ通され、個室へ案内された。その部屋の中央にあるソファに三人の人物が座っており、真ん中に座っていた初老の紳士が大佐だと肩章を見て分かったので、中央の人物に敬礼をした。


「本日付けで、陸軍省東方軍第3連隊気球中隊に着任したローシ=ミハイル二等陸兵です!」

「私はこの連隊の指揮を執っているランドル大佐だ。帝都からだとここは遠かっただろう」


ゆっくり敬礼を返してくれた大佐の印象は、物腰の柔らかいおじさんだ。叩き上げ組のマクドニア教官とは比べ物にならない優しさである。これがキャリア組の余裕というやつか。

「はっ!」

「で、こちらにいるのが…」

「近衛省陸軍省監査科のニーマ近衛少佐だ。よろしく」


簡潔な自己紹介をしたのは、大佐の左側に座っている男だった。「自分は頭脳派だ」と顔に書いてあるような30代ぐらいの男だ。 無駄に着飾った真っ赤な軍服にサーベルを腰にぶら下げているのは、皇帝直属省であり、武装貴族の出身者で占めているエリート集団の近衛省様だ。

その性質上、彼は少佐だが他省と階級の扱いが異なり、二階級特進制度のもと彼は大佐扱いになる。 俺は選民思想が強い近衛省の連中が嫌いだ。


それに彼の使命は、陸軍省がクーデターをしないように監視するといういけすかない仕事だ。

「よろしくお願いいたします」

「そして、一番端にいるのが、」

「海軍省共同戦略科のニシミヤ大尉だ、よろしく」



海軍式の敬礼で挨拶してくれたのは、ネイビーカラーの軍服に白い制帽をかぶった、長い黒髪のめずらしい名前の女性だった。


「紹介は終わったな。本題の君の所属部隊についてだが」

大佐が言いながら俺に紙を持ち、咳払いをして告げる。


「貴官を陸軍省東方軍第3連隊空挺気球中隊第03守衛小隊に命ず」


形式的な辞令を受け、配給品の回転式拳銃を渡された。 将校室を出た俺は、自分の所属先の小隊がいる倉庫にニシミヤ大尉と一緒に向かった。

「ニシミヤ大尉、質問があります」

「なんだい?」

「なぜ、海軍省所属である大尉がいらっしゃるのですか? ここは軍港もなければ海もないですし」

「ああ、今は陸軍省に出向している身だ。海軍省には空挺気球隊がないので、空挺気球隊の新設を考えている上層部が技術取得のために私を寄こした」


なるほど。海軍省の空挺科といったら陸軍省と違って「海兵空挺竜騎士隊」しかないしな。

海軍省さんも人員不足ってやつか。

「ありがとうございます。そうなると私の直属の上官ではないのですね、残念です」

「なぜ残念なのだ?」

「海軍省の方と任務をできることなんてめったにないので」

本音は、目の保養になるからだが。

「ああ、なら喜べ。私が直属の上官だからな」

「へ? り、了解しました!」


この海軍省軍人との出会いが人生の分岐点となった。

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