君が世界を壊すなら。
「もしもの話だ。人間一人一人が別の世界に生きていて、互いに干渉し合うことによって、同じ世界にだと勘違いしていたら、どうなる?」
彼女のその問いかけに、俺は答えることが出来なかった。
なぜなら、彼女の言葉を否定する材料がなかったから。
彼女の不敵な笑いも、今まで何度見てきたことか。
「君には、やはり難しい問いだったかな」
ほら、彼女はそう言って僕をバカにする。
彼女の思考に追いつけない。これまでも、これからも。
彼女の作る世界が、僕には分からない。彼女は作るのと同時に壊しているのだというが、それすらも僕には理解が出来なかった。
作って壊しての繰り返しに意味があるとも思えないし、世界が存在する意味も分からない。僕には分からないことだらけだ。
なのに、彼女は僕のことを理解している。彼女は僕が普通なのだというが、しかし僕には彼女が正しい気がしてならない。
それが人間の世界だと、彼女はまた今日も、笑った。