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プロローグ

草壁君の文章が纏まらないので、コメディ物を。

ありふれた内容かもしれませんが、色々オリジナリティある作品にしていきたいです。

草壁君の登場人物と一部被るかもしれませんが、一応別世界のお話です。

 我が家には、魔王がいる。


「おいこら秋人あきひとぉぉぉ! 酒、酒を持ってこぉぉぉぉい!」


 ここは愛すべき我らがボロアパート。

 そしてこの狭い部屋の真ん中に昔なつかしちゃぶ台を置いて酒を呷るは我が姉、西条刹那さいじょうせつな

 完全に出来上がっている二十一歳無職の彼女こそが、僕の言う魔王だ。

 人遣いは荒い、金遣いも荒い、酔えば罵詈雑言の嵐、酔わなくとも罵詈雑言の嵐、挙句プロレスの技を試すなどといって僕を実験台に……。

 まさしく魔王。うーん、それより性質が悪いかもしれない。

 

「聞こえんのか、あぁ!?」

「聞こえてるよ! でも飲みすぎだろアンタ!」

「うるせー! お姉さまに口答えすんじゃねーよ、この童貞ヤロー!」


 ほらまた罵詈雑言の嵐だ。

 弟の僕から見て、姉さんのルックスは決して悪くない。むしろ良い方だろう。

 キュッと引き締まった体なのに出る所は出ていて、顔も鼻筋が通っている。

 黒い瞳は大きくて綺麗だし、腰まであろう長い黒髪も一本一本が艶やかだ。

 どこからどう見ても美女だ。……これだけ酒ばかり飲んでおいてどうしてここまでのスタイルを保てるのか知りたいけれど。

 まあそれは良いんだけど、如何せん魔王閣下だから、ね。


「酒を持ってこないならキサマの名前は今日から便所虫だああああ! 跪け便所虫!」

「誰が便所虫だって、ええ!?」

「うるせー! 近寄るんじゃないわ便所虫! きたねーんだよ!」


 もう、本当に……。

 誰かこの状況を止めてくださらないでしょうか。




我が家の魔王陛下




 僕こと――西条秋人さいじょうあきひとはバリバリ現役の高校一年生だ。

 高校一年といえば青春真っ盛りの時期。部活に勉強に恋に華を咲かせるものだろう。

 僕以外は。

 じゃあ僕はどうなんだ、というと……。


「秋人、アンタ仕事でしょ。早く行きなさいよ。でりゃあ!」

「ん……ふげっ!?」


 わき腹に非常に重たい一撃。

 掛け布団ごと吹っ飛んだ僕の正面に立ったのは我が家の魔王陛下、西条刹那。

 座右の銘は「天上天下唯我独尊」、「私の前に跪け」。

 ゲームに出てくるような魔王を絵に描いたような彼女は悲しいかな僕の姉だ。


「ま、まだ三時半じゃないか……。コンビニのバイトは七時からだろ……」

「安心なさい。新聞配達のアルバイトもあるから」


 姉さんが突き出したのは近くにある新聞販売店の雇用証明書。

 僕にはまったく覚えが無いのだが、名前が記入してある欄には間違いなく僕の名前が書いてある。


「なにこれ」

「とりあえず、変装してアンタの代わりに応募してきたの。というわけで私のために働きなさい」

「何がというわけでだよ! ついでに変装ってなんなんのさアンタぁっ!」


 変装って、そのままの意味よときょとんとした顔で言った姉さんはどこからかニット帽と耳あてを取り出し、装着した。


「『西条秋子です。よろしくお願いしますっ!』って言ったら一発合格だったわ」

「だからアンタ何やってんだよぉぉぉ! 姉さんと僕じゃ顔も全然違うしまずそれより性別が違うだろうが!」

「顔は何とかなるわ。その分厚い不細工なビン底メガネを外したらアンタは私にそっくりよ。……思わず殴りたいくらい」


 ぼそっと呟いた一言は気にしないことにしよう。


「いや、似てないでしょ。姉さんは確かに顔だけは一級品だけど――」

「ほぅ? 顔、だけ……ねぇ?」

「すいませんでした」


 ものすごく薄っぺらい笑顔で近づいてきたので思わず謝る。

 これぞ日本流処世術、と思ったら思い切り殴られました。痛い。


「微妙に信じがたいけど顔はどうにかなるとして、体はどーすんのさ」

「適当に新聞でも詰めとく?」


 怪しすぎだ!


「なんか無いのかよ他に! ってなんで僕は新聞配達する事前提で会話してんだ!」

「あ、言い忘れてたけど行かなかったらペナルティらしいわ。五千円くらい」


 ちなみに僕の貯金は百円だ。昔は二千円もあったけど、ほとんど目の前の魔王に持ってかれた。


「無理だからね!? ほとんどあなたが持っていったせいで!」

「何よあたしに責任転嫁するの? そういう男は嫌われるわよ〜?」


 人の金を奪う女が何をほざくか。


「あ、もう四時前じゃない。四時までに行かなかったらゲームオーバーよ」

「マジかよ……もう胸はどうでも良いや、姉さんの服と秋子変装グッズ貸して!」

「お、行くのね? これも私の徳が高いからね……ふふっ」


 こんな風に笑う姿は綺麗なんだけど、やっぱり性格が破滅してるからなこの人は。


「さあ行きなさい秋人! 全ては私の酒のために!」

「やっぱりそれかよ!?」






「疲れた……」


 何とか時間ギリギリに販売店に辿り着いたのだが、店長がエロ親父でホント困った。


「あれ、秋子ちゃん、痩せたのかい?」

「あ、はい、ダイエット中なんです……」

「あのおっぱいはなかなか良い物だと思ったんだけどなあ……」

「あ、そうですか」

「ふふ、それでもお尻は柔らかいね……」

「ひゃうっ!?」


 あのエロ親父……、新聞配達の女の子にいつもあんな事やってるのか? これ訴えれば勝てるような……。

 まあ、そんな事はしないけどね。裁判なんかしたら金がかかるし、魔王陛下が黙っちゃいないだろう。

 何にせよ金が無い僕らには無理です、まる。


「今は……六時半か……。このままコンビニ行こ……」


 家に帰ったらどうせ姉さんに雑用を押し付けられるだけだろうし……。


「あ、女装したまんまだ……」


 家に帰らざるを得なくなってしまった。






「ただいまー」


 鍵を開けて部屋に入るも、誰もいない。どうやら姉さんは出かけているようだった。

 これは好都合、早いところ着替えを済ませて家を出よう。


「あ、姉さんまた付けっぱなしで……。電気代高いのに……」


 箪笥から服を引っ張り出していると部屋の隅に置かれているパソコンの電源がついているのに気づいた。

 姉さんが買ってきたこのパソコン、三十六ヶ月ローンの品物だ。本当に勘弁して欲しい。まあ僕もたまに使うから良いんだけど。

 それにしてもせめて電源くらい消してから外出して欲しいもんだ。

 シャットダウンするためにディスプレイの電源を入れると、見慣れない画面が目に飛び込んできた。


「Eメール?」


 表示されていたのはEメールの受信画面。

 姉さんが受け取ったメールか? 流石に見るのは悪いかと思ったのだが、そんな気持ちも一瞬で吹き飛んだ。

 そんな気持ちにさせてくれたのはメールの送信者欄。

 送信者欄にあったのは『父』の名。僕らを残してどこかへ消えた西条智明さいじょうともあきからのメールだった。


「父さん、から……?」


 震える手でマウスを動かし、画面をスクロールさせる。


『よう! 元気か我が娘と息子!

 久しぶりだな、何年ぶりだ? うん、よくわからんがまあいいだろ。

 早速本題に入るぞ。

 お前らには妹がいるって知ってたか?』


「知らねえよ!」


 思わずディスプレイに叫んでしまった。


『まあいるんだよ。小夜さよって名前の娘だ。

 俺がお前らの前から姿を消した後に出来た娘だから知らないだろうけど』


「じゃあ知ってるかどうか聞くな!」


『で、だ。小夜はもう小学六年生なんだが、どうしても刹那と秋人に会ってみたいって言ってなあ。

 かわいい次女のためだ、俺も一肌脱いでお前らに預かってもらう事にした。

 じゃ、そういうわけで。バハハ〜イ』


 なるほど。状況を纏めよう。 

 僕らには小夜という妹がいる。

 彼女は小学六年生。そして小夜は僕らに会いたがっている。

 だから父さんは一肌脱いで僕らに小夜を任せたってわけだ。


「まったく一肌も脱いでねえだろ!」


 ま、また叫んでしまった……。

 ふぅ、落ち着け。


「妹が来るんだな、それは了解した。……で、いつなんだそれ」


 肝心の日時が書かれていない。相変わらず父さんはずぼらなんだろうな。


「わからん……まあ良いか。どうせまたメールが来るんだろ……」


 とりあえず電源を切って時計を見た。時刻は六時五十分。

 そろそろ行かないと間に合わない。


「よし、行こう」


 それにしても、妹か。

 どんな娘なんだろう。少し、楽しみだ。






「ただいま」


 仕事を終えて帰ってきた僕を迎えてくれたのは、見た事も無い小柄な女の子だった。


「お帰りなさい、お兄ちゃん!」

「お兄ちゃん……そうか、君が小夜か!」

「ですですっ! 今日からお世話になります、お兄ちゃん!」


 ああ……なんて純朴な娘なんだ。

 汚れを知らぬ透き通った瞳、幼いながらも美人の片鱗を見せつつある顔。

 肩まで届く黒髪は姉さんそっくりだけど、やはり姉さんとは違うなあ……!


「小夜、よろしくな」

「あ、おにい、ちゃん……?」


 屈んで思わず抱きしめる。

 僕は小夜を心の支えとして生きて行く事を今決めた。

 だからこれはその誓いだ……。


「……放しなさいよ、ロリコン」

「え?」


 耳元で、物凄く冷たい声が……?


「いいから放しなさい。あなたの金○、蹴るわよ?」

「ひぃぃぃっ!」


 それだけはご勘弁を! 前、姉さんに蹴られた時は異常なまでの痛さだった! 潰れるかと思った! もうそんな思いは嫌です!

 僕は急いで小夜から距離を取った。


「お兄ちゃんが素直な人で、小夜嬉しいです」

「あ、うん……そうかい、それはよかった」

「だから――ロリコンだってばらされたくなかったら、私に従いなさい?」


 ……どうやら、彼女は姉さんにそっくりなようです。




 こうして、真に遺憾ながら、我が家に第二の魔王陛下が降臨した。

如何でしたでしょうか。

草壁君の文章が纏まるまではこちらをメインで更新していく予定です。

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