プロローグ
学校に着くのが早すぎたためか、教室に入ってみると俺意外誰もいなかった。
「あれ?誰もいねえの?」
誰もいないせいか、この広い正方形の教室に俺の声がよく響く。
案の定答えが返ってくることもなく、俺の発した言葉は独り言となる。
ふと、不安になったのでとスマホで時刻を確認してみた。
うん。8時10分。俺がいつも登校してくる時間だ。というかむしろ少し遅いぐらい。
うちの高校は8時30分から朝礼が始まるため、今ぐらいの時間に登校してくる生徒が多い。
いつも通りなら、既にクラスメイトの三分の二ぐらいは埋まっている。
もしや表彰式?
そんなことも考えては見たが、前日に教師からそんな連絡を受けた覚えはない。
仮に表彰式があったとしてもこんな早くから移動することはまずないだろう。
とにかく、何かが起きたことは間違いない。
俺は現状を理解するたに席に着いた。
教科書や文庫本を取り出して引き出しにしまい終えた。
いつもならこの後は読書に入れるのだが、今日はどうにもそんなことはしていられない。
一体何があったんだ?今日はもしや休校なのか?
いや、そんなはずはない。
なぜなら、隣のクラスから明らかに人の声がする。
男子の騒ぐ声に加えて、廊下でだべる女子たちもいる。
ってことは少なからず今日学校はある。
いよいよ何もかもわからくなってきた。
何が起きたのかわからず、とりあえずいろいろなケースを想像しては、「それはない」と否定する。
そんなことをしながら現実逃避をしていた時、事は起きた。
ガララララ。
「あの!望月くん!」
扉の開閉音に遅れて、女子?らしき綺麗な声が俺を呼んできた。
普段は女子、どころか男子ともまともに会話をしていないため、自分を呼ばれたことを認識するには多少の時間がかかった。
初めは、読書中とかにちらほら聞こえてくる女子たちのくだらない話みたいに軽く聞き流していた。
が、途中で彼女が発した単語を理解していくうちに、え?何事だ!と自分で理解した。
何かと思ってそちらを見てみると
「望月ですけど……。君、誰?」
全く知らない、身に覚えのない女子生徒がこちらに視線を向けていた。
多分彼女が、あの綺麗な声の持ち主なのだろう。
誰?という表現は少々失礼ではあったがそれは致し方ない。
なぜなら、俺は数年前の中学生時代の時、諸事情により女子から嫌悪の目を向けられる事件が起きた。
そのため中学一年生の春以降、俺は女子とは距離を置くようにしていた。
そんな女子から逃げ続けてきた俺を女子が呼んでいるのだ。
頭の中も真っ白になる。
当の彼女は、俺の問いかけに多少の驚きを見せた後、「えっと」と前置きをしてから
「望月くん!私と、私と付き合ってください!」
いきなり俺に告白をしてきた。
ここで俺もようやく理解した。
彼女は俺に思いを伝えに来たのだ。
しかし、なんでまたこんな俺に告白してきたのだろうか。
いや、心当たりはある。間違いなくある。
おそらくあれが関係してるのだろう。
ここ最近で俺に向けられる目がガラッと変わったことだろうな。
なぜこんな事になったのか。なぜこんなことが起きてしまったのか。
説明すると長くなってしまうので、順を追って説明していこう。
次の話は望月くんの過去の話と、今の現状の説明になってしまいますので、興味がない方は0話を飛ばして1話からどうぞ。