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黒鷲と予告状

アランはどこの部屋に忍び込んだのでしょうか。

アランが忍び込んだ部屋は二週間前に押し入ったクリスティーヌ嬢の寝室だった。


 この部屋に忍び込んだのはアル目的の為だった。


 月の雫をひと目見てみたかったからだ。


 怪盗としてはやはり、一度は実物を見てみたいという欲望には逆らえなかったのだ。


 もし、月の雫があるとしたら、管理しているクリスティーヌ嬢の一番近くに隠してあると思った。


 だからこの部屋を選んだのだ。


 私は部屋を片っ端から探した。


 だが、なかなか見つからずにまいっていたところで、テラスではなく反対側の廊下の扉越しから複数の足音と人の声が聞こえた。


 私はまずいと思い、隠れようとしたが、その人物はその部屋を通りすぎたのでホッとしたのもつかの間そいつらは廊下の途中で足を止めた。


 丁度、この部屋の扉から少し離れた場所でその人物達は話あっていた。


 私は邪魔が入ったので月の雫を探すのを諦めかけていたところで聞いたことのある声に気づいた。


 男の声だった。それも先ほど聞いたばかりの声だ。


 それは先ほど睨み合ったばかりのフィリップ公の声だった。


 どうやらもう一人は付き人らしい。


 私は興味を覚えて廊下側の扉に近づき聞き耳を立てた。


 二人はヒソヒソと小声で話していた。


 周りには他に誰もいない。


 どうやら人にあまり聞かれたくない話らしい。


 私は怪しく思ったので、さらに聞き耳を立てた。


 フィリップ公は付き人に言った。


「ハリス、手はずは整ったのか?」


「はい、フィリップ様。手はずは整えております。あとは一言、言ってくださればできるかと……」


 ハリスと呼ばれた男はそう答えた。


「そうか……これでやっとあの宝石たからは私のモノになるのだな。まったく、苦労させられたぞ。あのじゃじゃ馬娘と結婚をしなくてはならなくなったのだから」


「左様でございますね。あのご令嬢は少し気が強いかと。フィリップ様には似合わないと思います」


「まあ、いいさ。月の雫が手に入れば、もうあの女には用はない。離宮にでも篭らせればいい」


 フィリップ公とハリスと呼ばれた男は二マリと笑いあった。


「それにしても公爵も馬鹿な男だな。ちょっと金儲けの情報を話したらうまく罠に自ら嵌ってくれて。まったく愉快だ。それではくれぐれも事をしくじるなよ。ハリス」


「はい、フィリップ様。全てお任せを……」


 二人は話を終えたようでなので、その場から立ち去った。


 その話を聞いていた私は憤りを感じた。


 何故か心の奥底にフィリップ公に対しての怒りを覚えた。


 なるほどフィリップ公とクリスティーヌ嬢の縁談にはこういう裏があったか…………。


 あいつフィリップ公も月の雫を目当てにリッチモンド公爵を嵌めたということだ。


 これは面白くなりそうだと思った。


 もしその月の雫を私が盗んだらどうなるか…………。


 おそらく、クリスティーヌ嬢は今の話は知らないだろう。


 父親がフィリップ公に嵌められて、援助を条件に結婚させられるということを……。


 おまけにそれが全て月の雫を手に入れる為のものだとは思いもしないだろう。


 私は彼らが部屋から遠ざかったので、月の雫を再び探しまわった。


 すると本棚にある一冊の本が棚につけられていることが分かり、さてはと思いその本を引くと本棚が横にスライドした。


 そこから出てきたのは金庫だった。


 私は金庫を開け、中にある月の雫を手に取った。


 それは素晴らしい首飾りだった。中央に燦々と輝いているのは何十カラットもあるダイヤだ。


(素晴らしい!なんて美しいんだ!こんな大粒のダイヤは初めて見たぞ!)


 私は首飾りを手にして興奮した。


 私はその場では月の雫を盗まなかった。


 流石にこのまま盗んでは面白くないと思ったのだ。


 クリスティーヌ嬢の話を一度、聞く必要があると思った。


 私はある意味コレクターだ。物を盗んで集めるだけではなく、盗む時のスリルを味わうのも好きなのだ。


 こう簡単に盗んでは面白くない。


 そこで私は一計を立てた。


 月の雫は元の金庫に戻した。


 クリスティーヌの寝室を出て、なにくわぬ顔でパーティーに戻って楽しみ、私はリッチモンド家を後にした。


 その後、その舞踏会ではちょっとした騒ぎが起こった。


 それは怪盗黒鷲イーグル・ノアが現れて予告状を残していったというものだった。


 その予告状にはこう書かれていた。


「明後日、リッチモンド公爵の大事なものを盗みにまいります。怪盗黒鷲イーグル・ノア」


 と記載されたカードが舞踏会に居たクリスティーヌ嬢のドレスの胸元にいつの間にか挟まっていたからだ。




 それから会場は大騒ぎになった。


 それはそうだろう。


 今、世間を騒がせている怪盗がリッチモンド家所有のお宝を盗みに来ると予告したのだから。


 その会場に居た全てのものが驚いていた。いつの間に黒鷲がこの屋敷に忍び込んだのかと。


 リッチモンド家の警備体制はしっかりしているのだ。


 入り口でのチェックに外では私兵が多く配備されている。


 皆、どうやってこの屋敷に入り込んだのか謎に思った。




 この時、私はまだ変装の名人だとは知られていなかった。この技術は母さんに教わったものだ。


 母さんは昔、女優をしていた関係でメイクにとても詳しく、いろんな役柄に変装して舞台を演じていた。


 そのため、私は小さい頃からメイクの手ほどきを受けていたのだ。


 だからクリスティーヌ嬢に近づいても私は気づかれなかったというわけだ。




 さて、この予告状へ一番に驚いたのはクリスティーヌ嬢ではなかった。


 父親のリッチモンド公爵だった。


 リッチモンド公爵はクリスティーヌ嬢と執事のハリソン、そして娘の婚約者のフィリップ公を連れて自分の書斎に集まらせて、話し出した。


「この予告状は何なんだ!私の大事なものとは何だ……まさか月の雫のことか!」


 リッチモンド公爵は今にも倒れそうな青い顔をしていた。


 そんな父親を心配して、クリスティーナ嬢は言った。


「お父様。お気を確かに持つのですわ。こんな脅しに屈してはいけませんわ」


 そこへ執事のハリソンが口を挟んだ。


「旦那様、警察に相談して、力を借りましょう。今日の舞踏会の会場に黒鷲が現れたということは私たちの力では奴から家宝を守りきれません。あんな厳重な警備の中を潜り抜けるなど信じがたい事ですが」


「だか……それではわが公爵家の恥が世間に筒抜けだな…………」


 そこへフィリップ公が口を挟んできた。


「ですが、このまま黒鷲にリッチモンド家の家宝を盗まれる訳にいかないでしょう。警察にはこの件は内密に警備にあたるように私の方から口添えをしましょう。腕の良い警官を派遣させて、宝石を守らせましょう」


 それを聞き、リッチモンド公爵は少し落ち着いた。


「そうだな。そうしよう。さすがフィリップ公です。これから家族になると思うと頼もしい限りだ」


「いえいえ、当然の事をさせて頂いているだけです。末永く公爵家とは付き合っていきたいですからね」


「あはは!クリスティーヌ良かったな」


「ええ……そうですわね。お父様」


 クリスティーヌ嬢は若干顔が引きつっていた。


「お父様、申し訳ありません。私は疲れましたわ。、今日はもう下がらせて頂きますわ」


 そう言って、クリスティーヌ嬢は先に書斎を出て、自分の寝室へ戻った。


「ああ……そうだな。予告状の対応は明日以降にしよう。今日はワシもう休もう。フィリップ公もお部屋を用意してあります。どうぞそちらの部屋を使って下さい。ハリソン、頼んだぞ」


「はい、旦那様。ではへフィリップ様はこちらへどうぞ。お部屋をご案内いたします」


残った3人も自分たちの部屋へ戻って行った。




クリスティーナ嬢が寝室へ戻ると部屋が暗くなっており、テラス側の扉が少し開き、カーテンがたなびいていた。



月末月初は仕事が忙しく、小説を書く時間があまりとれませんが少しづつ書いていけるように頑張ります。

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