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黒鷲の思惑

黒鷲は何を思いついたのでしょうか?

クリスティーヌ嬢の結婚式の日取りが早められてから2日後のこと。


 アランは自分の屋敷の書斎で仕事をしていた。


 そこへ執事のレイモンドがアランの書斎へ入ってきた。


「アラン坊ちゃま。本日、私書箱を確認致しましたら、一通の手紙が入っておりました」


 レイモンドが書斎の机に近づきながら言った。


「そうか。机の上に置いておいてくれ。今、手が離せないんだ」


 アランは顔を上げずに机で書類を広げながら、何かを書き込んでいた。


「畏まりました。では机の上に置いて置きます。ではこれで御用が無ければ失礼致します」


「ああ……何かあったら呼ぶ」


「畏まりました。失礼致します」


 レイモンドは書斎から出て行った。


 アランは仕事に区切りをつけて、机の上に置いてあった手紙を開いた。


 内容は結婚式の日取りが早まったので計画を早めに進めてほしいとクリスティーヌ嬢からの手紙だった。


「そうきたか…………。よほど急いで結婚したいらしいな。さて……どうしたものかな」


 アランは暫く手紙を見ながら思案した。


「そういえば……クリスティーヌ嬢の居場所と一緒に何か別の情報が載っていたな……」


 アランは机の引き出しにしまっておいた数枚の紙を取り出した。


 その紙はクリスティーヌ嬢を救出する際に腹黒な友人が置いて行った資料だった。


「お!これは使えそうだな…………。警部補にも協力してもらえば一鳥二石だな」


 アランはにんまりしながら不気味な笑いをした。




 それから2日後、リッチモンド家ではクリスティーヌ嬢のウエディングドレスの試着をしていた。


「はあ……面倒ですわ。何故、私があの男の為にこんな忙しくしなければいけないんですの」


 もうため息しか出ませんわ。


「お嬢様そう言わずに!このドレスなんかも素敵ですわ。さあ!さあ!着替えて下さいまし!」


 私は人形のように次から次へとメイドにウエディングドレスの着せ替えをさせられたわ。


 その中の一着に皆、ため息が出るくらいに素敵なドレスがあったの。


 胸元はV字形のレースで足元まであるふわりとしたスカートにはダイヤが全体で50万個も使用されており、体のラインがとても綺麗な純白のドレスだったわ。


 トレーンは6メールもあり、すごく歩きづらそうな感じだけど確かにすごく素敵なドレスでしたわ。


 でも今は何をどう考えても気が重くなるような事しか考えられない。


 本来なら世の花嫁は皆、幸せをかみ締める時なのに。


 そこへコンコンと扉を叩く音か聞こえた。


「お嬢様、失礼致します。本日、私書箱に行きましたらこんな手紙が入っておりました。」


 執事のハリソンが手紙を持って入ってきた。


「ハリソン、入っても大丈夫よ。手紙を見せてちょうだい」


 ハリソンは広い試着室に入り、私に1枚の手紙を渡した。


「何の手紙かしら?」


 私は急いで手紙を開けて見ると、黒鷲イーグル・ノアからのものだった。


 内容は……一行しか書かれていなかったの。


「な!なんなんですのこれは!これだけしか書かれてないってどういうことですの?」


 結婚式は続行し、計画は結婚式当日に決行としか書かれていなかったの。


(どういうことですのこれは?私、どうやって盗み出すのかを聞きたかったのに…………決行の日しか記載がないのはどういうことですの!)と怒りと困惑の感情が思わず、行動に出てしまい部屋の中の調度品が軒並み倒れてすごい惨状になった。


 急いで黒鷲へ問い詰めたい衝動にかられましたが、我慢しましたの。


「お、お嬢様!どうされたのです。急に!何があったのでございますか。お気を確かに!」


「いいえ、ハリソンなんでもないですわ。ちょっとマリッジブルーになっただけですわ」


「それなら…………よろしいのですが……。メイド達にすぐに部屋を整えさせます」


「ええ……お願いするわ。私は着替えて部屋で少し休みますわ」


「畏まりました。では他のメイド達を呼んでまいります。暫しお待ちを……」


 ハリソンはそう言うとそそくさと部屋を出て行った。


 私は結婚式当日に黒鷲がどう月の雫を盗むのか分からないけれど、結婚を破談にしてくれる事だけを祈るしかありませんでしたわ。




 その様子を窓の外からロナウ警部補は見ていた。


「あのお嬢様はウエディングドレスを着て何を暴れているんだ…………」


 ロナウ警部補はここ最近のクリスティーヌ嬢の行動を振り返っていた。


 前々からクリスティーヌ嬢と黒鷲には何かあると思い、黒鷲が押し入った夜から部下にリッチモンド家を見張らせていた。そしたら数日後には黒鷲の予告状が届き、世間を騒がせたと思いきやその日のうちにクリスティーヌ嬢の誘拐と事件を立て続けに起こした。


 私は見張っていたとは悟られないようにリッチモンド家の警備ならびにお嬢様の誘拐事件の担当者になった。最初は私もお嬢様と黒鷲が手を組んで自作自演の誘拐事件を起こしたかに思われた。


 だが調べをしているうちに、どうもおかしい事に気がついた。どうも話がうまく行き過ぎている気がしていた。いくら黒鷲がすごかろうとこうも迅速に事を運べるものなのかと…………。


 お嬢様の行き先はまったく分からず、どのようにして屋敷から連れ出しかも未だに謎だ。


 そして捜査を開始して3日間、何の手がかりも見つからず、リッチモンド家の当主が痺れを切らした頃にお嬢様がこれまたふらっと一人で屋敷に帰ってきた。


 今までどうしていたのか聞きだすとどうも北側の廃工場に囚われていたと言っていた。


 犯人は見たのか聞いて見ると3人組の男達だったと言うではないか。


 これは黒鷲とは全く別な者の仕業だということがその時点で分かったのだ。


 全ての捜査が後手にまわりとても気持ち悪かった。


 でどうやって逃れたのかを聞くと曖昧にしか答えなかった。


 犯人の隙をつき、一人で無我夢中に逃げてきたと言っていたが果たして本当に一人で逃げ切れるものなのか。


 一人で外に出たことも無いようなお嬢様にできるのか考えたがどう考えてもできない結論しかでなかった。では誰がお嬢様を手引きし、逃したのかまったく謎が多すぎる。


「確かに変なお嬢様っすね。誘拐されてやっぱり気が触れたんでしょうか?」


 ロナウ警部補の部下が眉を寄せながら言った。


「まさか……あのお嬢様がそんな気弱に見えるか」


「確かに気弱には見えなかったすね。逆に恐ろしかったっす」


「そうだろう。お嬢様にはまだ何かありそうだな」


「どうしてそう思うんっすか?」


「さあな。勘かな」


「勘ですか」


「まあ、気にするな。引き続き見張りを頼む」


「へいっす」


 私は見張り場所から離れ、署に戻ろうとした。


 そこへ向かい側から一人の男の子が私に近づいてきた。


「おじさん!コレあげる」


「ん?何だこれは……」


 私は男の子が差し出した茶色の封筒を受け取った。


 気になり、中身を見てみると分厚い用紙が何枚も入っていた。


 よく内容を読んで見た。


「な!なんだこれは!これが本当なら私の手には負えないぞ!坊や。この封筒はどうしたんだい?」


 私はなるべく優しく男の子に聞いた。


「この封筒?さっきお爺さんにもらったの。おじさんに渡してくれて。ついでにお小遣いももらったよ。えへへ」


「そのお爺さんはどんな人だった?」


「うん~とね。お髭はやした優しいそうなおじいさんだったよ」


「なるほど……もっと何か特徴的な格好とか顔をしてなかったかい?」


「う…………わかんない」


「そうかい。ありがとう。もういいよ」


「じゃあね。おじさん」


そう言うと男の子は足早にその場を離れていった。


「いったい・・・誰なんだ。この資料を渡したのは。誰かの手のひらの上で転がされているような気がしてならないが、この資料の内容を調べて見る価値はありそうだな」


私は急ぎ署に戻り、資料の内容の裏づけを急いだ。

更新がかなり遅れましたがなんとかアップできました。


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