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プロローグ
記憶とは不思議なもので、つい先ほどまで覚えていたことを忘れてしまったり、はたまた随分と昔のことを鮮明に思い出すことができたり、実に朧げである。
それらは形がなく、目には見えない。しかし、確かに存在する。それは私たち自身が記憶という存在を認め、頭に留めることができるからこそ断言できることだ。
それならば、思い出せない記憶。失ってしまった思い出は、存在しないということと同意義である。
確かに存在したそれは、生物の頭からなくなれば、本当に消え失せてしまうのだろうか。失った記憶はどこに行くのだろうか。
すべての記憶を留めていられれば、それに越したことはないかもしれない。しかし、生きていれば忘れたい記憶は数多できてしまうものだ。それらを失うことに何の躊躇いもないだろう。
それでは、もしその記憶の中に大切なことも含まれていたら?
その失った記憶の在処を見つけられたとして、果たしてそれらを受け入れることができるだろうか。