死亡通知書
私の携帯にある日知らないメールが届いた。
迷惑メールかもしれないとも思ったが、よくわからなかったので、そのままにしておいた。しかし、ずっと放置していても気になってしまいメールをクリックしてしまった。
開くとそこにのっていたのは死亡通知書。
誰のだろうと思っていたら私自身の名前が書かれていた。ビックリした。
誰のいたずらなんだろうと初めは相手にしていなかった。
しかし、立て続けに事故が起きるともう偶然では片付けられなかった。電車を待っていた時などは背後から突き飛ばされたり、車が正面から真っ直ぐに走って突っ込んで来ようとしたり…。偶然にしては出来すぎている。
誰かが私を殺そうとしている。
それがどれほど怖いことか……。
恐怖小説よりもっと怖い。それにこの死亡通知書。贈り主がわからない。
もういたずらでは片付けられない。
背筋が凍る程だった。
そもそも贈り主の名が【死神のメール】なんてふざけている。そんなのあるわけがない。
友達にも相談したが、そんな話聞いた事あったっけ?って感じで真剣に聞いてくれない。
ただ、一人だけは信じてくれた。
彼だけは。
どこかで聞いたことがあるような気がすると言っていたっけ…。
でも調べてみると言ってくれた。
ちょっと嬉しいかも。
パソコンで見てみたらしくヒットしたのは一件のみ。それも内容は酷かった。
書いた本人ではないが実際体験したのは友人だったらしい。らしい?ってどういうこと?と聞くと「亡くなったと書いてある。」と言われた。
「亡くなったの?何で?」
「わかんないな。そこまでは書いてないし…。どうする?直接やり取りすることもできるけど?」
「うん、するする。だってこのままじゃ参っちゃうもの。」
私は彼にお願いし、付き添ってもらうことにしたが、まずは書いた本人とやり取りができるかどうかからはじまる。それが出来ないと無理だからだ。しかし、簡単に了解を取ることができ、会う事になった。
いざ会うとなると意外と近い場所に住んでいたようだ。隣の県だった。
待ち合わせ場所はお互いの中間地点とし、目印になるものを持って会う事にした。
「はじめまして。北沢あかねと言います。こっちは連れの加藤祐志。今日はあっていただいてすみませんでした。」そう言いながらぺこりと頭を下げる。
「はじめまして。仲代武といいます。参考になるかはわかりませんがよろしく。」
3人はファーストフードの店に入って飲み物を注文した。
そして本題に入る。
「あた、私の携帯に入ってたんだけど、…。」そう言って私は携帯の画面を開いて仲代さんに見せた。
彼はじっと黙って見ていたが、次第に顔がクシャクシャになっていく。
「僕の友達と一緒だ。文面もほぼ一緒。間違いない。」「あの、それでどうしたんですか?」「友達は大して気にもせずに見せびらかせてから消したよ。一応僕が写真に撮っておいたんだけどね。」そう言って見せてくれたのは私がもらったメールとほぼ同じだった。
「その友達はそれからどうなったんですか?」「それがね、ありもしないものが見えるとかなんとか言って周りを混乱させてたっけ。ほら、思春期によくあるものかなぁ〜と。でも、あいつは男だし、度胸もあるから大丈夫だとばかり思ってたんだ…。でさー、お祓いなんかにもついてったんだぜ。俺もそれにはチョービビったけどな。」
それはそうだ。見えないものが見えるとなれば話題性抜群だからね。
でもね、そいつはそれ以上は何もアクションを起こさなくなってね。みんなに溶け込むことができたんだ。
「大勢…溶け込む…??」
「ああ、注目の的になりたくないって言ってたからな。あいつ。だからずっと一人で抱え込んで…。」
「結局どうなったんですか?」
「あいつ、授業中に突然奇声を発してね。授業どころではなくなっちゃったもんだから先生怒っちゃって…でも、様子がおかしいのはすぐ分かったから先生も対応に困っちゃってね。他の先生を呼んでみんなであいつを取り押さえたんだ。でも、大の大人がよってたかって3人でだぜ。みんな固まって見てたよ。ひきつってる奴もいたな。口から泡吹いてたから救急車呼んで騒ぎになった。」
「なんで…。そんなことになっちゃったんでしょうか?誰かのいたずらとか?」
「悪戯であんなになっちまうんだったら悪意ある犯罪だよ。あいつ、そのまま学校に来なくなって…で、自宅で自殺したんだ。首吊ってね。床が汚物で汚れてたよ。そう聞いたんだ。」
「そうなんだ、じゃあ、私も死んじゃうのかな…。」「それを防ぐために来たんだろ!しっかりしろ!」
「そう…だね。私がしっかりしなきゃ。駄目、なんだよね。」わたしは半分泣きそうだった。
「そうだよ。あいつのためにも君は助けないといけないな。俺も手伝うよ。」
「ありがとう。でも、どうしたらいいんだろう…。不定期にメールが来るし。」
「そうなのか?」「うん、言ってなかったっけ?」「聞いてねーよ。ったくそんな大事なことなんで黙って…。」「ごめ〜ん。言ったとばかり思ってた。」「これからはちゃんと言えよ。」「うん、分かった。」
とにかく問題のメールが来るというのでそれを保存しておき後でみんなで見るということになった。それがどんなに怖い事なのか誰も気づいていなかった。
それから翌日の昼過ぎに問題のメールが来た。それは今回画像付きだった。
画像の内容は私が科学の実験中誤ってやけどを負うというものだった。それも顔に。
額のそばがアップにされ髪が焦げてる様子がわかる。その時の私の顔はわからない。近すぎるのだ。ピンボケしている。
私は怖くなった。
実際に明日実験がある。だけど今まで一度も休まずきたから授業は出たい。だけどあの前髪…。気になる〜。
早速私は2人に連絡し、落ち合うことになった。いつものファーストフード店に行くと店員に顔を覚えられてるので軽く挨拶をする。
そして、2人の元に。
2人は一緒に携帯を眺めていたが、ボソボソと話をして画面の画像を消した。
「あっ、なんで消すのよ。決定的な写真なのに。何かあったら使ってね〜。」などとふざけたことを言っていた。
仲代さんが話し始め、祐志と私は静かに話を聞く。
「…ということかもしれないんだけど。どう思う?」「どう思うってったってそうだなぁ〜何だろう。よくわかんないや。」
「そうは言ってもな。このままにはしとけないぞ。」
「分かってる。で、どうする?」
「授業を休むという手はある。が、それは嫌なんだろ?」「う、うん。」「だったら俺の班に来たらいい。」「でも、席変えるのは無理じゃない?ほら、番号順だし…。」「大丈夫だって、なんとでもなる。」
「そうだよ。今はそうするしかない。」「う、うん。分かった。で、私は授業受けてもいいんだよね。」「お前が出たいって言うから出られるように俺が監視するしかないだろ。」「監視ね。分かった。うん、いいよ。あとはなんとかなるかなぁ〜。」
「なんとかするって。お前に危害が加わらないように守ってやるって言ってるんだよ。」
「あり、がとう。」
「なんだよ、そのあり、がとうってのは…ったくいいけどさ。」
祐志はそう言いながらも周りを気にしていた。まるで何かを探しているような…。
「どうしたの?祐志。」
「何でもないよ。じゃあ学校行くか。」
「う、うん。」
私は祐志にそう言いながらも仲代さんは笑って送り出してくれた。
彼等にまかせとけば大丈夫って気がしてきた。
私は足取り軽く学校に着いた。
下駄箱は別々なのでいったん離れて靴を入れる。祐志はサッサと履き替え待っていた。その姿を見ていた人達が冷やかしたりしたが祐志は全く相手にしていなかった。そして私がそばまで行くと黙って歩いて付いてきた。
今日は化学の実験がある。
火を使う授業だ。
一時間目にある。
だからそのまま教室を移動して待っていないといけない。
必要な教材を持って理科室に移動した。
先生が来て授業が始まった。最初は先生が簡単に説明しながら進めていく。
そして説明が終わると実際にみんなで実験を始めた。
私は祐志と一緒の班になり実験には特に気をつけていた。しかし、それは突然起きた。炎が揺らめいて私の顔に触れたのだ。一瞬のことでパニクって何が起こったのかわからずにいた。
ただ、異様に何かが焦げた匂いがした。
皆がざわめいた。
私は顔がどうなっているのかわからなかった。ただ、焦げ臭いという匂いがしただけだ。
祐志も固まっていた。
私の顔を見ているが顔面蒼白だ。
「どうしたの?祐志。」
「きゅ、救急車!」
先生が慌てて職員室に連絡していた。
私は自分の顔がどうなっているのか知りたくて両手を顔につけようとした。
「触るな!!」祐志が叫んでいた。
という事は…私はだんだん怖くなってきた。自分の顔がどうなってしまったのか。
「キャ、キャー!!」
私は叫んでその場で意識を失ってしまった。
気が付いた時には救急車に乗せられていた。
目に何かが被せられているらしく開けられない。唯一口が塞がっていないので息が吸えた。
「大丈夫かい?」救急救命士にそう問いかけられ「はい。大丈夫です。」と答えた。
直ぐに救急車が病院に着き、手術室へと連れて行かれた。麻酔が打たれ次に目が覚めた時にはぐるぐるに巻かれた包帯の自分がいた。
「どうなっちゃったの?私の顔。」
でも答えてくれる人はいない。
祐志もいない。
連絡したくても携帯も今は持っていない。
その日の夕方、祐志は仲代さんを連れてやってきた。
「大丈夫か?あかね。ゴメンな?助けてやれなくて。」
「あの時はどうしようもなかったと思うよ?だって、炎が、炎が急に揺らめいて私の髪に燃え移ったんだから。あの写真みたいにね。」
「でも顔が…。」
「…どうなったの?わかんない。知りたいけど怖い。」
「そうだよな。お前、女の子だもんな。大丈夫だって。医者がなおしてくれるって。なっ、仲代さん。」
「ああ、そうだよ。気を緩めちゃダメだよ。またメールが来るかもしれない。」
「あっ、そう言えば携帯どこかに置いてきちゃったみたい。ないの。」
「お前が気を失った時拾っといたんだ。」そう言って私の携帯を手に乗せてくれた。
「ありがとう。祐志。困っちゃうとこだったよ。これで両親に電話できるよ。」
その時メールの着信音が鳴った。
誰かわかんないから祐志に見てもらうと黙り込んでしまった。
「またきたんだね。【死神メール】。」
「ああ、だが今度は俺たちがなんとかしてやるからな。何もきにするなよ。」それだけ言って内容は教えてもらえなかった。
私は一人になると考え込んでしまうたちなのでこの四人部屋はありがたかった。看護士が取っ替え引っ替えやってくるからだ。
しかし夜になると考え込んでしまう。しかも悪い方に悪い方に…。
そして窓に手をかけて飛び降りようとした時たまたま巡回に来た看護士が気付き事なきを得た。
私には全く覚えがなかった。
そもそも目が隠されてて見えないのだ。
窓までどうやって行ったのかもわからない。看護士も首を傾げていた。
個室に移そうかという話が出たが、私は嫌だと答え二度と同じことはしないと皆に話した。
翌朝早く二人がまたやってきた。
「考えたんだけどさ、お前いつからあの携帯使ってる?」「いつからって…2年前から……あっ。」「そう、携帯買い換えちまえよ。ついでに電話番号もな。」
「えー!友達とかたくさん登録してるから手続きが面倒だよ。」
「もしかしたらあの番号に届くようになってるかもしれないぜ。」「うっそ、マジ?なら母さんに頼んでみる。」
それからは簡単だった。
手続きは本人がいかないと無理というので1日外泊をもらってショップへ。
店員さんは引きつりながらも新しい携帯への手続き変更をしてくれた。
それからはメールは来なくなった。
あの番号があの世と繋がってるかもしれないなんて誰も想像もしていなかった。
顔の怪我はちょっと跡が残ると言われたけど命が助かっただけでもよしとする。
このことがきっかけで私は祐志と付き合い始めた。仲代さんは友人の一人となった。
あの番号はもともと亡くなった仲代さんの友人が使っていた番号だとわかったのは後になってから。
じゃあ、今もどこかであの番号が使われてるかも……。
その番号は……。




