ガキ大将とチヌ釣り
やがて時は流れて行く。兄と飯盒炊飯で一日釣ったり、食べたり、泳いだりの夏は、池のフナ釣り、ハエ釣り、モロコ釣りへと、変化しつつ、時にはチヌ釣り、又一時熱狂的に弟とのめり込んだレース鳩競翔へと・・
ゆったりとしながら、或いは時にのめり込みエスカレートしながら、超えて行く月日と言う山。決して忘れた訳では無いが、チヌ釣りの感動は置き去りの日が続くのだった。
私に転機が訪れたのは、地元に就職していたアルミサッシ会社を退職し、大阪の写植学校へ就職してからの事だった。
転職し、友人も居ない大阪への単身での旅立ち。体重の激減。後の無い背水の陣を布いての決心は、岡山から来た森下君、小山君との出会いと、話が弾み渥美半島の伊良湖崎、日出の門でのチヌ釣り旅行から、急激に転換する。
『来たよ!』
森下君の嬉々とした声で始まった、このチヌ釣りは、忘れかけていた私の脳裏から、一つの言葉を引き出した。
『釣りと出会い』ありふれたこんなフレーズの言葉が、原点でもある私のチヌ釣りモットーである。
この釣りがもたらしてくれたものは、大きかった。次々と釣り仲間が私の前に登場する。昼休みに毎日通った喫茶店のおとぼけマスターさん、森下君、浜野さん、中山君…出会いを与えてくれた皆さんです。チヌ釣りは、私に出会いを与えてくれました。どの顔も釣りをする顔は、童顔そのもの。決して釣果でない人との繋がり、そして、節目でもある転機には私には釣りがありました。そして、優しかった祖父、まあちゃん、トシ坊、兄、皆の思い出が大阪での友人達との出会いを与えてくれたのです。
これが、私にとって切っても切り離せないチヌ釣りであり、出会いなのです。