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灰色の駅

 私はスーツケースを一つだけ持って電車を待っていた。

 いつからここにいたのか分からない。


 汚染されたような空は黄ばんでおり、薄い雲が少しあるだけ。

 周りは灰色の建物ばかりで生気を感じない。

 だが駅のホームは人でごった返している。


 みんな大荷物でいそいそしており、こちらのホームから向こう側のホームに移ったり、何かと忙しい。


 私は状況を把握すべく、比較的静かそうな一人の男に話しかけた。


「すみません、この駅に到着する電車はどこに向かうのでしょうか」


 そう聞くと、男は「常識」と書かれた本を取り出して、眺めはじめた。

 そして私を無視してどこかに行ってしまった。


 仕方なく、今度はニコニコしている女性に話しかけてみた。


「すみません、この駅に到着する電車はどこに向かうのでしょうか」


 すると、それまでニコニコしていた女性は急に不機嫌そうな顔をしてどこかに行ってしまった。


 何だろう、この駅に来たばかりのせいか、どの人とも隔たりを感じる。

 仕方なく私は人混みから離れた所に腰を下ろした。

 

 とりあえず自動販売機でジュースを買おうか。

 全て灰色のラベルが貼られた中から適当に選んでボタンを押す。 

 出てきたジュースには「健康」とだけ書かれていた。

 

 

 そもそも私は何故電車を待っているのだろう。

 電車に乗ればどこに行くのだろうか。

 

 私はジュースを飲み終えると「自己投資」と書かれたゴミ箱に捨てた。 

 

 

 もう何時間待っただろう。私は早く電車に乗りたいだけなのに。

 それにこんなに人が多くて、果たして乗れるだろうか。乗り遅れないだろうか。


 ふと上を向くとホームに吊り下げられた看板が目に映った。

 

 そこにはただ「明日」と書いてあるだけだった。 

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