踏切の出会い
ここは美濃市の外れ越美南線の単線の踏切。
多いときでも1時間に2本しか列車は通過しない。
毎日夕方、私はこの踏切を通る。
最近、気になることがある。
その近くを通ると、決まって若い奥様らしき女性が、踏切の向こうからやって来る。
彼女を先導しているのは、焦げ茶色の中型犬だ。
この日も、踏切近くまで犬と彼女は坂を上って来た。
私は山側から下っていた。
(このままだと丁度踏切で出会う)
私は踏切で一時停止した。
犬と彼女も反対側で一度立ち止まった。
そして彼女は、私より先に踏切を渡ろうと犬より前に出た。
この時、どうした事か、犬が踏切の直前で座り込んでしまった。
慌てた彼女。
懸命に犬を引っ張った。
犬は背筋を伸ばし、足を踏ん張り、がんとして動かない。
私は停車したまま、はらはらしながら見守っている。
彼女は益々慌てた。何十秒経っただろうか。
ついに犬は彼女に引きずられ
観念したかのように、のそのそと踏切を渡った。
すれ違いざま、開け放たれた車の窓越しに、彼女と私の目が合った。
そして、二人とも、声を出して笑った。