はじまり
「だめだ」
教授が言う。俺が取っていたこの授業の教授が。何を隠そう、俺はこの授業の単位を落としてしまったのだ。それでこの教授に直談判しに来たのだ、「どうか単位をください」と。だが教授はこう言った。
問題は、この授業がただの授業ではなく、卒業に必要な、いわゆる「必修科目」であること。それを落とすということ、それは俺のような学生にとって、留年を意味する。だから普通の学生は落とさないように必死で授業に出て、単位を取る。だが俺は落としてしまった。
「こんなことならちゃんと授業に出ていれば・・・くそう・・」
教授への説得に失敗した俺は、しぶしぶ下宿へと帰ることにした・・・。さて、これからどうしよう。まずは両親にこのことを言わなくては・・。
その日の夜。
「ごめん、俺留年した」
両親に電話して、俺は留年したことを伝えた。これに対する両親の受け答えといったら・・とても厳しいものだった。
「なんだと!留年?ふざけるな!!そんな息子にやる仕送りなどないわ!もう二度と帰ってくるな!この親不孝息子がっ!」
こうして両親は俺を見放した。学費や生活費を両親から仕送りしてもらっていた俺は、その財源を失うこととなった。こうなったとき、他の学生なら何とかして学費を稼ぐなり奨学金をもらうなりして学生生活を続けようとするのだろうけれど、生憎、俺にはそんな気はなかった。留年したことで他の学生に嘲笑されながら学生生活を続けなければならないし、こうなったら大学生なんてやめてやる!
翌日。
俺は大学の事務課に行き、退学届けを提出した。こうなった以上、男に二言はない。後悔などしていない。俺は自由を手に入れた。
俺、安藤ユキオ。21歳にして、人生初のニートとなりました。あぁ、これからどうやって食っていこう。とりあえず、生活費だけでも稼がないとな・・。明日早速ハローワークにでも行くか・・・。
だが、翌日も翌々日も俺はなかなか仕事を探そうとしなかった。理由は簡単だ。面倒くさかったからだ。とりあえず、今月分の家賃はもう納めてあるわけだから、今月いっぱいはこの自由を謳歌しよう・・。留年したことで、心も傷ついたし、俺には今、休養が必要なんだ・・。
そんなこんなでしばらくの間、俺は下宿の家でのんびり過ごしていた。