人生が明るくなりました。
「でね、この漫画ってさ。」
「うんうん。」
「あのシーンがさ。」
「わかるよ!」
佐和子と和真は毎晩電話を楽しみにいている。
和真とはマッチングアプリで知り合い、二つ町を超えた距離に住んでいる。
佐和子には恋愛に対して少し歪んだ面を持っていた。
初めての彼氏はとんでもないモラハラ男、数年後本気で好きになれた彼氏は実は妻子持ち。
男なんて信じられない。女性器に夢中で、飽きたらポイ。マッチングアプリで数名会ったり付き合ったりしたことがあるが、誰も彼も不誠実な男だらけだった。
しかし和真は違った。
約3週間毎日電話をすることで、お互いの価値観を理解し佐和子が始めた趣味も自然と取り入れ共通の趣味として楽しんでいた。
「佐和子ちゃんてさ、本当にストイックだよね。」
「…ええ、そうかな?」
「プランク1000秒は、とんでもないと思う(笑)」
「あはは、調子が良かっただけだよ、毎日すると死んじゃう(笑)」
いつの間にか優しい時間がこころのこりを解してくれた。
この人なら、価値観を理解し認めてくれる人なら、本気の愛を注ぎたい。本気で思い出したのは電話がルーティンとなった頃だった。
あなたって優しいねと言えば佐和子ちゃんが優しいからだよと返す。
まだ会ったこともないのに、2人は惹かれあっていった。
自己鍛錬のために始めた筋トレも、初めて会った時にガッカリされないように食事管理までしだした。
佐和子は「これ」と決めたらずっとやる女だ。
和真はそこをふんだんに褒めてくれる。
ささやかな愛情が、確かにそこにある。
「ねぇ、そろそろ会ってみない?」
佐和子からデートの約束をした。
その日が、今日だ。
緊張感もあるし嫌われるのももちろん怖い。
でもそれよりも楽しもう。
運命の人かは未来が勝手に決めること。
目の前の幸せに感謝して、ルーティンをこなす。
時間になったら念入りに化粧をしよう。
服はワンピースに、バックも決めてある。
佐和子はふと、思い返す。
こんなに人を好きになったのって初めてかも。
今までは自分らしさを見失っていた。
例え相手が太っていようが禿げていようが、そんなことお構い無し。
この瞬間が、恋する乙女になっている、それでいいのだ。
7/25。
2人は夕刻に出会った。
カラオケ店へいき、共通の好きな曲が隣の部屋から大音量で響き渡る。
佐和子は負けず嫌いだ。同じくその曲を入れ、渾身の力で歌い上げる。
人数で勝負するより、1体1の方がシンプルさ、違うかい?
程なくして和真に「ねぇ和真くんから言い出す?わたしからキメちゃってもいいけど」といたずらに笑う。
次の瞬間、和真は躊躇いもなく言い放った。
「俺と付き合ってください」
答えはもちろん、YESだ。
付き合って数日経って佐和子のこころは鬱で支配された。
それも献身的に支えてくれる。
今日はこう告げてきた。
「いずれは同棲して貯金して結婚したいともおもっている。」
山あり谷ありの人生ではある。
でも確かな愛情もそこにはある。
幸せだから鬱がなくなるとは限らないし、そんなこころは簡単にできていない。
それでも、人生が明るくなりました。




