7.
応接室に戻ると、3人はまだはしゃいでいた。
「お見送りして来ました。」
念の為に報告をと思い、声をかける。
すると、さっきまでの空気が一変。
「あらあら、お義姉様。やっぱり役立たずでしたね!」
「本当に、そう。この穀潰しが!」
「申し訳ございません。」
「ふんっ!空気が汚れるわ!とっとと去りなさい!」
「かしこまりました。失礼いたします。」
私もこんな空気の中、好き好んでいたくない。
さっさと退散するに限る。
私が部屋を出た後、扉の向こうからは、また賑やかな声が聞こえていた。
今夜はきっとお祝いだろう。
お祝いとなれば、残されるご飯も多いし、美味しいはず。
私は意識を逸らし、着替えた部屋に再び戻り、今度は一人で着替えるのだった。
そのあとは特別なことなどなく、いつも通りの日課をこなした。
ただ、日課はいつも通りだったけど、嫌がらせはいつも通りではなかった。
共鳴判定の結果が、早速使用人の間で話題になっていたからだ。
彼らは自分たちのお嬢様を讃え、わざわざ私に嫌味と嫌がらせをしに来た。
普段から悪い空気が、さらに悪くなって、澱んでいるように感じた。
何処かの本で読んだことがある。
集団同調、だっただろうか。
大多数の悪い雰囲気に流されて、普段は関係ない人も、嫌な空気を纏っている。
身体が妙に重い。
悪意を浴びるのはなれているけど、さすがに連日こうだと疲れる。
皆んな、暇なんだろうか?
イライラするなら、掃除でもしてスッキリすればいいのに。
私に八つ当たりして、ストレスを解消しないでほしい。
私は普段から人目につかないように動いているのだが、これからは、普段以上に人目を気にしようと思う。
――――――
「おーい、ロベルト!」
昼休憩で図書館に向かっている最中、後ろから呼び止められた。
振り返った先にいたのは、あまり仲のよくないクラスメイト。
「聞いたぞ!お前の妹、精霊共鳴者だったんだって?羨ましいなぁ!」
「ああ、そうみたいだな。」
「何だよそれ!興味ないのか?」
「仲がいいわけではないからな。」
「まぁ、貴族の家ってそんなもんか。なぁ、紹介してくれよ!」
「気になるなら、当主宛に手紙を出したらどうだ?」
「ケチだなぁ。もういいよ、じゃあな!」
声をかけて来たのは、そっちだろうに。
騒がしいのは嫌いだ。
全ての人間が、私の契約精霊みたいに穏やかならよかったのに。
『ロベルト。』
「どうした?」
私の契約精霊は、こうして私の名を呼び、じっと見つめることがある。
何かを訴えているのだと思うが、何が言いたいのかわからない。
聞いても答えがない。
今日もまた、答えがなかった。
気にはなるものの、答えてくれるまで待つことにする。
その判断が後に、大きな影響を与えるなんて知る由もなかった。




