5.
今日は皆んな、朝から慌ただしかったけれど、昼になってから、余計に忙しそう。
奥様も今朝、お客様が来ると言っていたし、そのせいだろうか。
私は何も聞いていない。
知らせてくれる人もいない。
だから気にせず、いつも通り仕事をしていたんだけど……
「え、ちょっ……何?」
侍女たちがいきなりやって来て、私の腕を掴んだ。
てっきり、いつもの嫌がらせが何かだと思ったけど、どうも違うみたいだった。
連れて行かれた先は、浴室だった。
服を剥ぎ取られ、ゴシゴシと全身洗われた。
私は訳もわからず、ただ混乱して固まっていることしかできなかった。
身体を拭かれ、着た事のないドレスを着せられて、何故か応接室に連れて行かれた。
ドレスなんて、一生着ることがないと思っていた。
きっとこのドレスは、お嬢様のものだろう。
私のために作ってくれるはずがない。
同じ年のはずなのに、ドレスがブカブカだ。
常に食事が足りてない身体と、健康的な身体を比べてはいけない。
「もう、シャルフィーネ、遅いわよ。身体が弱いからって、お客様を待たせてはいけないじゃない。」
背筋に悪寒が走った。
今まで聞いたことのない、気持ち悪い声。
優しく話しているつもりなんだろうが、いつもの怒鳴り声や罵倒する声よりも気持ちが悪い。
「も、申し訳ございません。」
「いやいや、身体が弱いと聞いていたのでね。大丈夫だよ。」
応接室には、嫡男を除いたアルバン子爵家一家と、見知らぬご老人がいた。
黒地に、銀と金で月と太陽と若葉が描かれているマントを着ている。
以前見かけたことはあるけど、何のマークかは知らない。
おそらく、何処かの組織だと思うけど。
私は、ご当主様に促されるまま、お嬢様の隣に座った。
お嬢様の視線が突き刺さる。
早くこの時間が終わってくれればいい。
緊張で、手汗が滲む。
「ワシが今日来たのは、共鳴判定をするためじゃ。知っていると思うが、5歳から12歳までの子どもには、共鳴判定を受けることになっている。なのでワシが判定するために来た、と言うことじゃ。」
「共鳴判定!すっごく楽しみにしていましたわ!」
「リリアンナ、あなたならきっと精霊共鳴者になれるわ!」
「ああ、可愛いリリアンナだからな!」
私を置いてけぼりに、3人で盛り上がっている。
5歳から12歳の子どもが共鳴判定を受けるなんて、一度も聞いていない。
今日だって、聞かされずに連れてこられた。
きっと私は、期待されていない。
期待されているのは、お嬢様だけだ。
私は一人、遠い目をしていた。




