37.
お義兄様も私に用事があると聞いて、緩めた気をもう一度引き締め直した。
何の話だろう?
また厄介事だと嫌だなぁ……
嫌な気持ちになりながらも、表情には出さないように気をつける。
「それで、どのようなお話ですか?」
「あー……本当は、言おうか言うまいか迷っていたんだが……一応、家族のことだから、知らせておこうと思ってな。」
「もしかして、どなたかを妊娠させてしまった……とか?」
「違う!!!なんてことを言うんだ!?」
「では、ご結婚したい良い方ができたとか……?」
「それも違う!そうではなくて!」
私の家族と言えば、今はお義兄様だけなのだが。
「妹……リリアンナのことだ。」
……ああ!
私の家族ではなくて、お義兄様の家族の話だったのか。
びっくりした。
それならそうと、早く言ってくれれば良いのに。
「お嬢様が、どうかしたのですか?」
「シャルフィーネを虐めていた妹の話なんか聞きたくないと思うが……」
「いえ、問題ありません。」
私はもう過去のことだから、どうでもいい。
いつまでも過去のことを気にしていたら、幸せが逃げてしまうから。
むしろ、お義兄様の方が話しづらそうに見える。
「そうか。……妹が修道院に入った話をしただろう?実はな……その、修道院が…………焼け落ちたんだ。」
「……つまり?」
「……死んだ。全焼で、遺体の損傷が激しかったが、人数が合っていると言うことで、おそらく亡くなっただろう、と。そう、言われた。」
お義兄様にとっては、ショックが大きいのだろう。
何たって、たった一人の血のつながった妹だ。
色々やらかしたとは言え、妹であることには違いない。
私は……なんだろう……?
実感が湧かないのもそうだが、どんな感情も全く浮かんでこない。
喜びも、悲しみも、何もない。
私には……人間の感情が、あるのだろうか?
それとも、半端者だから、感情すら中途半端なんだろうか?
わからない。
私は私自身のことが、わからない。
室内がしぃーんと静まり返る。
お互い下を向いたままなので、向かいに座る人の表情が、感情が、全く読めなかった。
この空気を壊したのは、お義兄様の深いため息。
「じゃあ、そう言うことだから……」
立ち上がるお義兄様に合わせて、私もソファから腰を上げた。
「薬と腕輪、ありがとう。使わせてもらうよ。」
「いえ、お義兄様も、お気をつけて。」
「ああ。お互いにな。それじゃあ。」
お義兄様は、大丈夫だろうか?
私の心配することではないかもしれないが。
お義兄様の背を見つめて、そう思った。




