35.
アイテム作りから10日後、お義兄様が貴族院にきてくれた。
私が一時帰宅するには面倒な手続きが必要だそうで、わざわざ忙しいのに、お義兄様から会いにきてくれることになったのだ。
カバンの中に、先日作った薬と守護の腕輪を入れて、貴族院の面接室に向かった。
外を見れば、木々が色づき、秋もだいぶ深まってきていた。
もう随分と時間が経ったのに、1月に入学したのがついこの間のことのように思えて、何だが不思議な気持ちだ。
指定された第二応接室に入ると、お義兄様が笑って出迎えてくれた。
お義兄様にギュッと抱きついてお互い挨拶をしてから、向かい合ってソファに座った。
「元気そうだね。体調は崩してないか?」
「大丈夫です。こう見えて、体調を崩したことがないので!」
「それは何よりだけど、無理はしないように。」
「はい。」
「さて、話したいことがあると手紙に書いていたけど、何かあったのか?」
「はい。以前、お義兄様が話してくれた病についてです。」
お義兄様としては予想外だったのか、軽く目を見開いていた。
「聞こう。」
「はい。まず、病の状態と原因についてです。あれは病というよりは、むしろ毒に近いかもしれません。」
まず、あの病の状態と原因について。
あの病に罹った人は、体内で霊力と気力が、過剰に反発し合っていた。
本来、霊力と気力が過剰に反発することなどない。
気力というのは、人間が持ち得る力のこと。
霊力は霊脈由来の力で、0か100か。
受け入れることができるか、全く受け入れないかのどちらかだ。
全く受け入れない場合、体内に霊力は入らない。
ちなみにそれが、精霊共鳴者や精霊術師と、それ以外の人間の違いでもある。
精霊共鳴者は、生まれながらにして霊力を受け入れる器がある者。
後天的に、限定的な精霊共鳴者になった精霊術師は、契約した精霊によって霊力を受け入れるようにされた者だ。
つまり、霊力と気力が反発し合うという結果にはなり得ない。
ただ、受け入れる時に、一気に受け入れてしまうと「酔う」という現象が起こる。
それでも、時間が経てば治る程度のものだ。
では何故、反発し合ったのか。
それは、霊力が変質していたせいだ。
変質した霊力が気力を攻撃して、お互い反発し合うことに繋がったのだ。
しかもこの変質した霊力は、魔物の持つ霊力、いわゆる魔力と呼ばれるものだ。
人間の中に存在する霊力が魔力に変質するなんて、本来ならありえないことだ。
そんなことが普通に起こったら、人間が魔物になってしまう。




