33.
私は現王妃陛下を深く眠らせた。
途中で起きてこられると、困るからだ。
その後、横たわる第三王子殿下に近づいて、額に手をかざす。
これは……
霊力と気力が、過剰に反発し合っている……?
変質した霊力が気力を攻撃して、お互い反発し合ってるんだ!!
しかも、この変質した霊力は……
第三王子殿下の体内を調べて、この病の原因についていくつかわかった。
そして治療法も。
さすがに経路まではわからないけど、それを調べるのは私の仕事ではない。
本職の人に頑張ってもらおう。
私は、霊力の変質した部分を解いて正常に戻し、反発し合う霊力と気力を落ち着かせた。
第三王子殿下の様子を伺うと、顔色が赤みを帯びてきた。
良かった。
もう、大丈夫。
やりたいことが終わったので、気分が良くなった。
夜はまだ長い。
いい気分のまま、夜の散歩を続けようと思う。
「……フィー……ル……?」
天蓋から出ようとした私を呼び止めたのは、第三王子殿下だった。
振り返ると、目を開けた第三王子殿下と目があった。
ベッドから身体を起こそうとしたので、手伝って背もたれにもたれさせる。
「お久しぶりです、第三王子殿下?」
「やめてよ、その呼び方。クリスでいいってば。」
「ごめん、ごめん。ところでクリス、身体は大丈夫?」
「え、あ、うん。平気、だと思う。」
手をニギニギしながら、第三王子殿下……クリスが答える。
「もしかして、フィールが治してくれたの?」
「うん。だって、心配だったからね。早く元気になって、またお喋りしたかったし。」
「そっか……ありがとう、フィール。」
「どういたしまして。今日はこれで帰るよ。体調不良の原因は治したけど、まだ体力は戻ってないから、ちゃんと休んでね。」
「うん。わかった。またね、フィール。」
「じゃあ、また。クリス。」
私はクリスに手を振って、そのままふわりと浮かび上がった。
「こんな苦しみから助けられたら、ますます好きになってしまうよ、フィール。」
――――――
フィールはいつも通りの軽快さで去っていった。
僕はその姿が見えなくなるまで、目を離さなかった。
「……クリス?」
名を呼ばれ、傍らに目を移すと、母上が目を丸くしていた。
「ご心配をおかけしました、母上。もう、大丈夫です。」
「あぁ、良かった。良かったわ、クリス!!」
僕をめいいっぱい力を込めて抱きしめながら、母上は涙を溢した。
僕はそんな母上を抱きしめ返して……冷めた目で虚空を見つめるのだった。
…………とんだ茶番だな。




